ドラゴンクエスト「おおぞらをとぶ」6. ベースライン・クリシェ
「おおぞらをとぶ」楽曲の後半4小節を分析する
音楽理論講座 実践編「ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…」から「おおぞらをとぶ」の解説第6弾です。
前回までは、「おおぞらをとぶ」の冒頭4小節についてでしたが、
今回からは、後半4小節を中心に解説いたします。
解説対象楽曲
解説動画
1. 楽曲の構成について
2. キー(調性)について
3. コード進行について
4. ベースラインに着目する
5. 裏コード
6. ベースライン・クリシェ(当記事となります)
7. ペダルポイント
8. ピカルディ終止
後半は正銘の「ベースライン・クリシェ」
後半の4小節の最初2小節のコード進行を見てみます。ひとまず、伴奏をシンプルなコードにして、構成音を忠実にコード表記してみました。
ここで最も着目すべきポイントは、半音で下降する「ベースライン」です。
この半音下降するラインは「クリシェ」といいますが、トップノート(和音の一番上のライン)に移行してコード表記を考えると、このようになりま
す。
このクリシェのラインがベースにきていると考えると、このようなコードネームの表記も考えられます。(譜例中の黒い玉は、コードのルートにあたる音で、ベース音との兼ね合いで省略していると考えられます。)
2小節間を、前半と後半で比較してみる
前半の4小節の冒頭ベースラインと、後半の4小節目の冒頭ベースラインを比較すると、
前半がダイアトニックスケールで下降している(ベースラインクリシェ風)であるのに対して、
後半はクロマティックスケールで下降しています。
このあたりの対比というのは、十分に意図されたようにも感じられます。
さらに、クロマティックで下降するピッチは、Aマイナースケールの「ナチュラルマイナー」と「ハーモニックマイナー&メロディックマイナー」で、常に変化して揺れ動く音ですので、ここでもクラシカルでメロディアスな雰囲気が魅力となっています。
メロディーとハーモニーの関係性でも、前半後半は、おおよそ対照的です。
前半4小節の冒頭のメロディーは、コードトーン(コードの構成音)によるものが主体となっていますが、後半4小節のメロディーは、Amコードに対して、9thのテンションノートが支配するメロディーになっています。
ここでも、前半はスッキリとした決然たる響きを感じるのに対して、後半はテンションの虚ろな響きが中心となり、ニュアンスの対比を感じ取ることもできそうです。
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記事の担当 侘美 秀俊/Hidetoshi Takumi
武蔵野音楽大学卒業、映画/ドラマのサウンドトラック制作を中心に、数多くの音楽書を執筆。
オーケストレーションや、管弦楽器のアンサンブル作品も多い。初心者にやさしい「リズム早見表」がSNSで話題に。
北海道作曲家協会 理事/日本作曲家協議会 会員/大阪音楽大学ミュージッククリエーション専攻 特任准教授。
近年では、テレビ東京系列ドラマ「捨ててよ、安達さん。」「シジュウカラ」の音楽を担当するなど多方面で活躍中。
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