ドラゴンクエスト「おおぞらをとぶ」8. ピカルディ終止
ドラゴンクエストⅢの「おおぞらをとぶ」は、短調の楽曲でありながら最後だけメジャーコードで終わるピカルディ終止という古典的な音楽技法を採用しています。この記事では、ハーモニックマイナーとナチュラルマイナーの使い分けやドミナントコードの変質、そして終止和音へのテンション13thの配置まで、細部にわたる理論的な仕掛けを解説しています。これらの手法を理解することで、作曲時に意識的にこうした高度な音響効果を自作に応用できるようになり、より洗練された楽曲制作が可能になります。
「おおぞらをとぶ」楽曲分析のまとめ
音楽理論講座 実践編「ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…」から「おおぞらをとぶ」の解説第8弾、最終回です。
今回は、短調の曲で、最後の和音だけは長三和音(メジャーコード)で終わらせるピカルディ終止(別名:ピカルディの3度)を解説いたします。
解説対象楽曲

解説動画
1. 楽曲の構成について
2. キー(調性)について
3. コード進行について
4. ベースラインに着目する
5. 裏コード
6. ベースライン・クリシェ
7. ペダルポイント
8. ピカルディ終止(当記事となります)
ドミナントマイナーからのピカルディ終止

44の構成は【A】→【B】590】→【B'】となっていますが、2回目の【B'】の後半の最後の終止部分のコードだけが異なっています。
一見、「IIm7→V」のツー・ファイブのようにも捉えられますが「A」が曲の終止和音となるので「Vm→I」となっています。
いずれにしても、ベースが5度下降するので、はっきりとした強進行です。
通常の終止形ですと、1)のように、ハーモニックマイナースケール(和声短音階)上のドミナント「V7→Im」で、E7→Amと考えられますが、ここでは、2)のように、マイナーの曲の最後の和音をメジャーコードで終止させています。
これは、同主調(パラレルキー)の主和音を借りてきているとも考えられ、バロック音楽で多用される「ピカルディ終止」といわれる終止形にあたります。
さらに、3)のように、ハーモニックマイナースケールのドミナントであるところの「V7」が、ナチュラルマイナースケール(自然短音階)上のドミナント、つまり「Vm7」に置き換えられています。
これによって、ドミナントの導音「G#」が次のトニックの主音「A」に導かれる、やや強制的な解決が回避されて、幾分、柔らかな、開放的で穏やかな終止感が得られています。
これも「おおぞら」感を演出している要因のひとつかもしれません。
ドミナント上のテンション13thによる、終止の示唆
前回お伝えした、1回目の後半最後のドミナント、E7(9,13)の「C#」にあたる13thのテンションですが、これは「Aマイナーのダイアトニックスケール」の音に含まれないテンションという、やや特殊な位置付けでした。
実は、ピカルディ終止、つまりマイナーからメジャーコードへと変質する特徴音(特性音)「C#」であり、この曲の終着を示唆している音と考えるのは、いささか考えすぎでしょうか…。
さて、「おおぞらをとぶ」を紐解いてきましたが、ここで紹介したこと、その仕掛けや経緯を創作時に意識したかどうか?は、作者のみぞ知るではあります。
しかし、結果として完成された曲から、捉えられた手法を見つけ出して整理し、分類、タグを付ける行為こそが、アナライズであります。
タグがあるからこそ、何れは、自作に応用できるというものなのです。
よくある質問
Q1. ピカルディ終止とは何ですか?
ピカルディ終止は、短調(マイナーキー)の楽曲を長調(メジャーコード)で終わらせる終止形です。バロック音楽で多用された古典的な技法で、短調曲に開放的で穏やかな終わり方をもたらします。
Q2. ハーモニックマイナーとナチュラルマイナーの違いは何ですか?
ハーモニックマイナーは7度が半音上がり導音を持つため、ドミナント機能が強く支配的な終止感を生みます。一方ナチュラルマイナーは自然な形で、より柔らかく穏やかな響きを特徴とします。
Q3. 音楽分析(アナライズ)を学ぶメリットは何ですか?
完成した楽曲から使用されている手法を抽出・分類することで、その技法の理論的背景を理解でき、自分の作曲活動に直接応用できる実践的なスキルが身につきます。
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記事の担当 侘美 秀俊/Hidetoshi Takumi

武蔵野音楽大学卒業、映画/ドラマのサウンドトラック制作を中心に、数多くの音楽書を執筆。
オーケストレーションや、管弦楽器のアンサンブル作品も多い。初心者にやさしい「リズム早見表」がSNSで話題に。
北海道作曲家協会 理事/日本作曲家協議会 会員/大阪音楽大学ミュージッククリエーション専攻 特任准教授。
近年では、テレビ東京系列ドラマ「捨ててよ、安達さん。」「シジュウカラ」の音楽を担当するなど多方面で活躍中。
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