ドラゴンクエスト「おおぞらをとぶ」4. ベースラインに着目する
ベースラインに着目する
前回、「おおぞらをとぶ」の冒頭4小節のコード進行を確認しました。
今回は、コード進行のベースラインに着目してみましょう。
解説対象楽曲
解説動画
1. 楽曲の構成について
2. キー(調性)について
3. コード進行について
4. ベースラインに着目する(当記事となります)
5. 裏コードについて
6. ベースライン・クリシェ
7. ペダルポイント
8. ピカルディ終止
分数コードに着目する
冒頭から2つめのコード「Em」が「Em/G」という分数コード(onコード)になっていることに着目してメロディーとベースのラインだけを取り出して考えてみます。
ベースのラインだけを考えれば、この曲のキー「Am」のスケールに沿って
順番に階段を降りてきています。
いわば「ベースラインクリシェ風のカウンターライン」といえるでしょうか。
本来のベースラインクリシェというのは、例えば「Am→Am/G#→Am/G」のように、
一つのコードが連続している中でベースのラインだけが変化するという意味ですが、
今回は、そもそものコードが変化しているので厳密にはベースラインクリシェとは言えませんが、
順次進行でベースが滑らかに下降しているのが、大きな特徴と言えます。
さらに特徴的なポイントとして、メロディーが一定の高さに留まっているのに対して、
カウンターラインとなるベースが、徐々に下降して行くことで、
メロディーとベースとの音程が広がっていくさまが「おおぞら」を連想させるだけの雰囲気をもっていることです。
「おおぞら」を感じた直後、メロディーが一気に大きく華麗に動き出す瞬間も、対比的にインパクトがありますね。
「カノン進行」でも使われます
これはヒット曲にもよく使用されるコード進行のひとつ「カノン進行」です。
カノン進行とは、ヨハン・パッヘルベルが作曲した「カノン」で登場するコード進行のこと。
ヒット曲で多用されてきた王道進行の1つ
【I→V→VIm→IIIm→IV→I→IV→V】キー=Cの場合【C→G→Am→Em→F→C→F→G】
これも一番低いラインが階段を下降するように
和音の構成音を変更すると「ラインクリシェ風カウンターライン」ができあがります。
「カノン進行」のバリエーションとして、多くの曲で使用されています。
試しに「おおぞらをとぶ」のメロディーに、この「カノン進行」を組み合わせてみても、意外に違和感が少ないことに気付きます。
「Cメジャー」と「Aマイナー」は、平行調という関係で、表裏一体の関係性だから成せるわけです。
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記事の担当 侘美 秀俊/Hidetoshi Takumi
武蔵野音楽大学卒業、映画/ドラマのサウンドトラック制作を中心に、数多くの音楽書を執筆。
オーケストレーションや、管弦楽器のアンサンブル作品も多い。初心者にやさしい「リズム早見表」がSNSで話題に。
北海道作曲家協会 理事/日本作曲家協議会 会員/大阪音楽大学ミュージッククリエーション専攻 特任准教授。
近年では、テレビ東京系列ドラマ「捨ててよ、安達さん。」「シジュウカラ」の音楽を担当するなど多方面で活躍中。
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