セカンダリー・ドミナント①/音楽理論講座
ノンダイアトニックコードを含んだコード進行について
これまで学んできた知識をフル活用し、ノンダイアトニックコードを含んだ、コード進行を分析してみましょう。
楽曲は、これまでの解説でも使用してきた「Fly Me to the Moon (In Other Words)」を用いて進めていきます。
ここで、コードを確認してみましょう。
コードはこのようなサウンドです。
これをピアノロールで確認すると下記となります。
では、このピアノロールへディグリーネームを書き込んでましょう。
上記のコードから、ノンダイアトニックコードの箇所を探してみましょう。
今回は、Key=Cメジャーで解析しています。
この囲み以外の部分となりますね。
C7,E7,A7が、ノンダイアトニックコードとなります。
では、あえてこれらコードをダイアトニックコードに置き換えて聞いてみましょう。
上記画像の四角で囲んだ箇所を
- C7→Cmaj7
- E7→Em7
- A7→Am7
へ変更しました。
このような形となります。
実際に聞いて見ましょう。
- 変更前のコード進行
- ダイアトニックに置き換えたコード進行
いかがでしょうか?
雰囲気がガラリと変わりましたね。
やはり変更前のノンダイアトニックコードの方が、より力強くC7,E7,A7の箇所から次のコードへの期待感がある印象を受けます。
ここで前回の内容を思い出してみましょう。
まずはKey=Cメジャーのダイアトニックコードのみの進行です。
これに対して「IIIm→III」「IIm→II」へ変更してアレンジを加えてみました。
下記となります。
“同じメロディー”ですが、印象が違いますね。
VからIm(III→VIm)の流れは、レラティブキー(この場合Aマイナー)のリーディングトーンが加わったスケールから生まれたものです。
前回の最後に確認した(D→G)II→Vの箇所はKey=GメジャーのV→Iでした。
これらを頭に入れた状態で、改めて「Fly Me to the Moon (In Other Words)」のコード進行にある「C7,E7,A7」とそこから繋がる”次のコード”も含めて確認してみましょう。
- C7→Fmaj7は、Key=FのV7→Imaj7
- E7→Am7は、Key=AマイナーのV7→Im7
- A7→Dm7は、Key=DマイナーのV7→Im7
と見ることができます。
前回の3和音バージョンから、4和音バージョンになっただけです。
トライトーンが含まれているため、より強い緊張感と解決したい力が強い点が特徴です。
部分転調について
現在学んでいる内容は、”部分的” ”一時的”に異なるキーに転調する=”部分転調”というテクニックの1つと言えます。
一時転調とも呼ばれています。
上記の流れ「C7→Fmaj7 = KeyFのV7→Imaj7」は
Key=CメジャーorAマイナーの中に一瞬Key=Fの流れが強く現れたイメージですね。
まとめ
今回の学習ポイントをまとめると下記の通りです。
- ノンダイアトニックコードの使用により、楽曲に力強さや次のコードへの期待感を生み出せる
- 多くのノンダイアトニックコードは、別のキーにおけるV7→Iの関係として理解できる
- コード進行におけるV7の使用は、トライトーンを含むため強い緊張感と解決感を生む
- 部分転調(一時転調)は、楽曲内で一時的に異なるキーの要素を取り入れる手法
次回はこれまでの復習も含め、さらに深く掘り下げていきます。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。