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アボイド・ノート(回避音/前編)/音楽理論講座

メロディー作りの際に意識したい「アボイド・ノート」

今回は少し趣向を変えて、メロディー作りやメロディーへのコード付け、コードの置き換えなどの際に便利な知識となる「Avoid note =アボイド・ノート(回避音)」を学んでいきましょう。

まずはこちらのサンプルをお聴きください。

コードとメロディーがうまく調和していないように感じられますね。
この状態は一般的に、「音がぶつかっている」と表現されます。

「アボイド・ノート」は、「ナチュラル・テンション」「アヴェイラブル・ノート・スケール」「ペアレントスケール」といった概念と同時に説明されることが多いですが、ここでは”音がぶつかっている状態を避けるための実践”に焦点を当てます。

譜面とピアノロールで見ていきましょう。
KeyはCメジャーです。

  • メロディー

メロディーは確かにCメジャースケールの音で構成されていますね。

  • コード

コードもCメジャーのダイアトニックコードで構成されています。

それでも響きが悪いということは、メロディーとコードの相性が適切ではない可能性があるということですね。


アボイド・ノートを判断する方法

まず、Key=Cメジャーのダイアトニックコードを作成し、完成したら各コードの右側にCメジャースケールの音を並べてみましょう。
例えば、Cmaj7(ドミソシ)の隣に、Cメジャースケールの音(ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ)を配置します。
例では4和音を使用していますが、3和音でも同じ結果が得られますので、どちらでも構いません。

なお、ダイアトニックコードについて詳しく知りたい場合は、下記の記事をご参照ください。

コードとスケールを見比べて、各コードの構成音に対して”半音上”に位置するスケール音を確認していきます。
例えば、Cmaj7(ドミソシ)の場合は「ファ」が半音上の音です。

青丸で囲んだノートは、各コードに対して半音上に位置する音で、アボイド・ノートです。
各コードを鳴らしながら該当するアボイド・ノートを弾くと、音がぶつかっている状態を確認できます。

もう少し専門的に言うと、「コードと不協和な音」または「本来のコード機能を損なう可能性がある音」がアボイド・ノートです。

※IIm7(レファラド)については特別なケースがあるため、次回の講座で詳しく解説します。

いくつか例を聴いてみましょう。

  • Cmaj7に対してF

  • Am7に対してF

  • Emに対してCとF

やはり、響きが少し合っていないように感じますね。

アボイド・ノートをコードの最低音(ベース音)に使用すると別のコードとして認識されます。
 確認する際は、コード内またはコードより上で鳴らしましょう。
(この点についても、後の回で詳しく解説します)

コードとアボイド・ノートとの関係は、他のキーでも変わりません。
例えばDメジャーキーの場合も、Cメジャーキーのダイアトニック・コードを並行移動させることで、対応するアボイド・ノートを見つけることができます。

  • Dmaj7に対してG

他のコードや他のキーについても、実際に音を出して確認してみてください。

コードとメロディーが綺麗に響かない場合は、アボイド・ノート(コードトーンの半音上の音)を使っていないか確認してみましょう。

なお、アボイド・ノートは「絶対に使ってはいけない音」ではありません。
長く伸ばしたり、目立つ音として使用しなければ問題ありません。

特に、メロディーの流れの中で短く鳴る場合や、弱拍や裏拍上で使用される場合は、影響が少ない傾向にあります。
使い方次第では問題ありませんので、明確に音が合っていないように感じる場合やコード置き換えを行う際のチェックポイントとして活用してください。

次回は、IIm7のアボイド・ノートの考え方や、アボイド・ノートとどう付き合っていけば良いのかについて、詳しくみていきましょう。


記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh

伊藤 和馬

18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。

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