ケーデンスと色々な動き(マイナー編)/音楽理論講座
マイナーにおけるケーデンス
前回までで、各マイナー・キーにおけるトニック (Tonic)、サブドミナント (Subdominant)、ドミナント (Dominant) コードとそのファンクション(機能)について理解が深まったかと思います。
これらはそれぞれトニック・マイナー、サブドミナント・マイナー、ドミナント・マイナーとも呼ばれます。
第51回では、ナチュラルマイナーにリーディング・トーンを追加することで出来上がる、V・V7の特徴にも注目しました。
全てトニック、サブドミナント、ドミナント上に出来上がるコードですので、T, SD(S), Dのみで表記する場合もありますが、今回はわかりやすく以下の画像のように表記しましょう。
ドミナントの上に出来上がったリーディング・トーンとトライトーンは、不安定感や緊張感を持ち、トニック (Tm) に戻りたいと強く感じさせるコードです。これをメジャーキー同様にDと表記します。
今回は、マイナーにおいても、コード進行でストーリー性を出すために最低限必要な動き=ケーデンス=「コード進行の最小単位」に当てはめて確認していきます。
第31回と見比べながら、メジャー同様に基本の3つのコード進行を見ていきましょう。比べやすいように、パラレルマイナーキー (Cマイナー) で確認します。
T→D→T
- Tm→Dm→Tm / Im→Vm→Im, Cm→Gm→Cm
- Im→Vm7→Im / Cm→Gm7→Cm
Tm→D→Tm
- Im→V→Im / Cm→G→Cm
- Im→V7→Im / Cm→G7→Cm
- Im→Vm7→Im / Cm→Gm7→Cm | Im→V7→Im / Cm→G7→Cm
続けてみると、サウンドの違いがわかりやすいですね。
2回目の方が力強く、そして緊張から解き放たれた印象を受けます。
Iの箇所を4和音にしても試してみてください。
T→SD→T
- Tm→SDm→Tm / Cm→Fm→Cm
こちらのケーデンスは、緩やかに着地するのが特徴です。
マイナー・キーであるため、悲しい感情や切ない気持ちを持ちながらも、軽くスキップして着地したような印象を受けますね。
この特徴を、ぜひ4和音でも試してみてください。
T→SD→D→T
- Tm→SDm→Dm→Tm / Cm→Fm7→Gm7→Cm
T→SD→D→T
- Tm→SDm→D→Tm / Cm→Fm7→G7→Cm
非常にスムーズな流れで、安定から次の展開があり、そして緊張感(特にD)があり、戻って安心感を得るという、代表的なケーデンスです。
ここまでが、基本の3種類ですが、もちろん、第31回の最後で出てきたD→SD(Dm、D→Tm)の流れも、今では普通に聞くこともできますね。
- 例(Tm→Dm→SDm→Tm)Cm→Gm7→Fm7→Cm
メジャーと同様に、マイナーのケーデンスを見てきましたが、これでまた曲を作る際の引き出しを増やすことができました。
ここまで学んだことを踏まえ、引き続き楽曲の分析を行ってみてください。さらに様々な発見があるはずです。
まとめ
今回の学習ポイントをまとめると下記の通りです。
- ナチュラルマイナーのVIIを半音上げてリーディング・トーンにすることで、トニックへの導きが強化される
- リーディング・トーンを含むスケールでダイアトニックコードを作成すると、5番目のコード(ドミナント)がVまたはV7になる
- 新たなスケールのドミナントコード(VまたはV7)は、メジャーのドミナントと同様に機能する
- ナチュラルマイナーのケーデンス(Vm→Im)は緊張感が少なく、リーディング・トーンを含むケーデンス(V→Im)は緊張感と解放感が強い
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。