セカンダリー・ドミナント③/音楽理論講座
ダブルドミナント ドッペルドミナント
前回は「V→I」という解決の動きを、他のメジャー・ダイアトニックコードにもつけることでセカンダリードミナントを確認していきました。
その中で、5番目のコード・7番目のコードに他にない違和感を感じたその原因について、今回は解説していきます。
前回のおさらいとして、「7番目のコードの動きはまれにセカンダリードミナントとして説明されることもありますが、m7b5やdimは解決先のIとしては不安定すぎるため、基本的にVIIdimやVIIm7b5にセカンダリードミナントはないと考えることが多い」という内容でした。
Key=Cメジャーで実際に聴いてみましょう。
V7/V
続いて5番目のコードも確認してみましょう。
Gへ移った際には解決感を得られましたが、ブルースなどに馴染みがない方はG7へ移った際に違和感を感じるかもしれないというものでした。
もう一度聴いてみましょう。
このコードはⅡ7から強進行して、主音(トニック)のダイアトニックコードのドミナントコードⅤ7に進行します。
つまり、そのキーのドミナントコードに進行するセカンダリードミナントコードということになります。
そのため、機能と役割も若干異なってきます。
今回は、この5番目の箇所を掘り下げていきます。
ダブル・ドッペルドミナントについて
5番目の箇所は、特別に名前がついています。
その名前は、ダブル・ドミナント、ドッペルドミナント(ドッペルドミナンテ)などが一般的です。
「ダブル」は英語で、「ドッペル」はドイツ語で、「二重の」という意味になります。
セカンダリードミナントは、部分転調して次のコードに解決する役割を果たしていました。
一例として、部分転調で一瞬Key=Fメジャーになる場合があります。
V7/IV
ボイシングを整えて確認してみましょう。
このII7(V7/V)→Ⅴ7の進行はトライトーンが平行に半音下行して、Ⅴ7のトライトーンへ繋がるという特徴があります。
4和音同士の場合は、どちらもドミナント・セブンス・コードですので、トライトーンが連続で出てくるということですね。
上記はKey=Cのダブルドミナント部分だけですが、ルートを強進行にしドミナント・セブンスコードを滑らかに繋げてみます。
そうするとコードが、D7→G7→C7→F7→Bb7→Eb7→Ab7→C#7→F#7→B7→E7→A7→またD7→G7→…といったようになります。
この並びに何か心当たりはありませんか。
そう、これは5度圏の並びです。
各キーのドミナント・コードが並んでるイメージでもいいですね。
上記を利用すれば、さまざまなキーに転調し、最終的に落ち着くことができそうです。
実際にやってみましょう。
元のキーはCですが…
E♭メジャーに落ち着きましたね。
もちろん、ハーモニックマイナーやメロディックマイナーの知識があれば、
E♭マイナーにも落ち着くことができますね。
まとめ
今回の学習ポイントをまとめると下記の通りです。
- ダブルドミナント(ドッペルドミナント)は、キーのドミナントコードに進行するセカンダリードミナントコード
- ダブルドミナントの特徴として、トライトーンが平行に半音下行してV7のトライトーンへ繋がる
- ダブルドミナントを含む進行は5度圏の並びに沿っており、これを利用して様々なキーへの転調が可能
- ダブルドミナントの使用により、楽曲に新たな緊張感や方向性を加え、より豊かな和声進行を作り出せる
- ハーモニックマイナーやメロディックマイナーの知識を組み合わせることで、マイナーキーへの転調も可能
次回は、これまでの内容と今回の内容を合わせて、実際に使用したり、定番の進行に取り入れたりしてみましょう。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。