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アイディアでサウンドの可能性を切り開く!サンプラーと音声加工を用いたサウンドテクニック

身の回りのものを使った音作りの方法を解説

今回は身の回りのものを使った音作りのテクニックを解説します。
DAWに付属/市販の音源を使用しなくても、様々な手法やアイディアでオリジナルのサウンドが作れてしまいます。

音楽制作は音が綺麗だから正義ということは決してありません。
頭の中にあるサウンドイメージをしっかり形できるか?ということがオリジナリティや、世界観の表現に不可欠となります。

ここでは皆様に【音を作る可能性と面白さ】を感じていただけたら幸いです。

デモ楽曲について

ペットボトルと輪ゴムのみを音源として使用したトラックです。

▶️トウキョウ・シャンディ・ランデヴ カバー

ペットボトルからドラムのサウンドを作る

今回音源として用意するのはペットボトルを叩き、それをマイクで録音したサウンド

そして輪ゴムを弾いた音をマイクで録音したサウンド

この2つの音のみを使用します。

キックのサウンド

キックには打楽器的な性質を持ったペットボトルのサンプルを用います。


元音のスペクトラムを確認すると、ピークが187Hzであることが分かります。

キックは40Hz、高い場合でも80Hz付近にピークが存在するものです。


この特徴に近づけるため、オーディオサンプルのピッチを下げて周波数のピークをキックらしいポジションへ移動させます。


Ableton Liveの場合、任意のサンプルを選択後にクリップビュー内に表示される【Pitch】の値を下げます。


あとは図の通り、EQで低音やアタック感を補強、元サンプルに含まれる不要な低域のカットを行うとキックらしい力強い音に仕上げることが出来ます。

▶️元の音とEQ処理後の音

音の長さもキックのニュアンスでは重要な役割を持っています。


DAWのフェード機能でサウンドが早く減衰するよう設定して曲調にマッチするタイトなサウンドに仕上げています。

スネアのサウンド

スネアもキックと同様にペットボトルのサンプルを使用します。

スネアは構造上

  • スネア本体の太鼓(打面)の音
  • スナッピーのザラついた音

これら2つのサウンドが混ざりあって聞こえています。
スネア本体の太鼓の音はペットボトルと近しい特徴を持っていることから、ここではスナッピーの音を再現することを考えます。

まずは歪みを加えます。

Soundtoysの「Decapitator」というテープ/プリアンプ/真空管と様々な歪み成分を付加できる、定番のサチュレーションプラグインを使用します。
この他のプラグインでも代用できますが、Decapitatorは非常に扱いやすく、サウンドメイクの幅が広いためお勧めしたい製品です。

真空管タイプのディストーションで強めに歪ませ、高域を強調するために8【Low Cut】で低域の成分を減らしました。
【Tone】は最大値にしてブライトな歪みにします。

このままでは太鼓成分が聞こえなくなってしまうので、【Mix】を50%にして、スナッピーを模した歪みと半々で聴こえるように設定します。

▶️元の音と歪みを加えた後の音


最後はコンプレッサーやリバーブなど、スネアのミキシングで用いられるエフェクトで処理を行えば完成です。

 

ハイハットのサウンド

ハイハットもペットボトルのサウンドから作っていきましょう。
この楽器は金属で、高域中心で構成されている点が特徴です。

ここでもDecapitatorを使って歪みから高域を付加します。
スネアと設定は似ていますが、Mixを100%に設定して歪み成分のみを使用している点がポイントです。

元サンプルのアタック感が損なわれないように歪みのタイプをプリアンプタイプの【N】に設定しています。

EQで不要な低域〜中域をカットすればハイハットの完成です。

▶️元の音と、エフェクト処理後の音

輪ゴムからシンセプラックを作る

シンセサイザーには【Pluck】と呼ばれる定番のサウンドがあります。
これはギターや箏などの弦を弾くタイプの楽器に似たサウンドです。

輪ゴムを弾いた音は、Pluckサウンドと同じ特徴を持っているため最適な素材と判断しました。

▶️輪ゴムを弾いた音をマイクで録音したサウンド

サンプラーの設定

これまでのリズム楽器とは異なり、コード(和音)の演奏を表現したいと考えています。
当然、想定したピッチで演奏される必要があります。

ここで活躍するのが【サンプラー】です。
オーディオ素材に音の高さを与え、鍵盤に割り当てることができるデバイスです。

多くのDAWにはこのサンプラーが標準で付属しており、Ableton Liveにも【Sampler】というデバイスが備わっています。
オーディオ素材をドラッグ&ドロップして簡単にインポートでき、すぐに演奏が行えます。

ただし、サンプラーでピッチ情報を持った演奏を行う場合は、MIDIノートの高さと実際に鳴る音高を合わせる必要があります。

今回のようにピッチがわからない素材は、チューナープラグインを使用してピッチ分析を行うと良いでしょう。

エフェクトの設定

サウンドに対して更にシンセサイザーらしい特徴を持たせます。


使用するのはサンプルレート・ビットレートの解像度を落とし、音に歪みを加えるローファイプラグインです。
その後にリバーブで楽曲に馴染むよう空間的な広がりと奥行きを演出しました。

▶️エフェクト有無の比較

輪ゴムを弾いた音が楽器的な要素を多く含んでいることから、シンプルにエフェクト処理を行うだけでもすぐに楽曲に取り入れることができます。

サンプラーで音声を加工しベースを作る

最後はベースサウンドです。
ベースも複雑なピッチ変化を持ったフレーズを演奏するため、サンプラーを使用します。
まずはペットボトルのサンプルを読み込みます。

ここではサンプラーの【ループ機能】を使用します。

ループ機能はインポートしたサンプルの中で、特定の区間のみを繰り返し演奏させることができます。
元素材よリも音を長く伸ばしたい場合に使用すると効果的です。

音を長く伸ばす以外には、短いスパンの波形を抽出してサウンドを生み出す手法もあります。
1周期の波形は時間的な変化を持たないことから、より電子音に近い印象となり、シンセサイザーのようなサウンドが得られます。

音の長さを自在にコントロールできるため、シンセサイザーのように活用できるデバイスとも言えます。
ここでもエフェクトを使用し、意図したサウンドに近づけていきます。

サウンドの決め手となっているのはDecapitatorによる歪みと、ベース全体のサウンドをタイトに締め上げる【OTT】というマルチバンドコンプレッサーです。
得意にOTTは近年のEDM系に代表的されるエフェクトで、使用者が多い人気のフリープラグインです。

▶️エフェクト有無の比較

エフェクトがない状態でもベースらしいサウンドといえますが、これらのエフェクトでより広い帯域をカバーしている印象的なサウンドに変化しているのがお分かりいただけるかと思います。



いかがでしたでしょうか?

身の回りのサウンドを利用してサウンドをデザインする方法をご紹介しました。
自分自身でサンプルを使用すると、他にはないオリジナルのサウンドを作ることができます。
楽曲にスパイスが欲しい場面などで活用が期待できますので、是非あなただけのサウンドを作ってみてください!