30.主要三和音とその機能(ファンクション)③/音楽理論講座
D(ドミナント)のファンクション実践
前回で、各メジャーキーの真の意味でのTonic(トニック)、Subdominant(サブドミナント)を使用し、それぞれのファンクションを確認しました。
今回は、残るDominant(ドミナント)のコード(メジャーkeyの場合V,V7)を使用して、コード進行をよりドラマチックにしてみましょう。
✳︎ドミナントコードの機能は、トライトーンを持つV7のみと考えることもあります。
この講座では、ドミナント(VとV7)をドミナントコードとし、VよりもV7の方がより強いドミナントとして考えていきます。
まずはドミナントの位置とディグリーネームを確認しておきましょう。
赤丸で囲んだものがドミナントです。
ドミナントコード(D)は、メジャーダイアトニックコードの中で非常に不安定で緊張感があるコードです。
そのため安定感のある「T(トニック)」コードに戻ろうとする力が強いです。
この不安定から安定への流れが、「終始感」を生み出します(特にIに戻った場合)。
「不安定さや緊張感」という言葉で、トライトーンを思い出された方も多いでしょう。
V7はトライトーンを含むため、VよりもV7の方が安定のトニックへ戻る力が強いと言えます。
ドミナントには「支配的な」という意味があり、これはVやV7がトニックに解決する強い力を持つためです。
「V,V7 → I,Imaj7」の動きがあると、その楽曲のキーが明確になるという側面もあります。
T・SD・Dによる進行づくり
では、実際に聴いていきましょう。
前回のT→SDのサンプルに続けて、D→Tの流れを繋げていきます。
今回もKey=Cメジャーで進めます。
VとV7のサウンドの違いにも注目して下さい。
- I→IV→V→I(C→F→G→C)
- I→IV→V7→I(C→F→G7→C)
- Imaj7→IVmaj7→V→I(Cmaj7→Fmaj7→G→C)
- Imaj7→IVmaj7→V7→I(Cmaj7→Fmaj7→G7→C)
いかがでしょうか?
不安定なドミナントが入ることでIのトニックへの着地がよりしっかりと感じられ、V7を使うとその傾向がさらに強くなることを感じていただけたかと思います。
ご自身の作曲でも雰囲気に合わせて「ここは強い不安定感を出して、Iへの解決感を強めよう」など、いろいろ試してみると良いでしょう。
VとV7の違いをより意識してみる
前回、TからSDを連続させる流れを聞いていただきましたが、今回はDを連続させてみましょう。
途中でVからV7に変化させるので、そこにも注目してください。
- T→SD→D:V→D:V7(T→C→F→G→G7→C)
- ピアノのみバージョン
Vはそこそこの不安定感ですが、V7でより緊張感が高まり、早く落ち着きたくなります。
これは、VにはなくV7にはあるトライトーンが大きく影響しているためです。
そして、これだけ延ばすと、Iのトニックに戻った時の安定感が、前回のSDとは明らかに異なることがわかりますね。
まとめ
最後に、おさらいも含めて、T・SD・Dの特性をまとめておきます。
- T=Tonic(トニック)
そのキーの中心的存在で、強い安定感を持ち、曲の最初や最後のコードとしてよく用いられます。
- SD=Subdominant(サブドミナント)
TとDの中間的な性格のコードで、進行に彩りや発展を与えるコードです。
TからSDに進むと展開が生まれ、浮遊感が感じられます。
Dの前に使うと、Tでの解決感がよりスムーズになります。
- D=Dominant(ドミナント)
Tonic(トニック)に戻ろうとする力が非常に強いコードです。
DからTに戻ることで、「終始感」を得ることができます(特にIに戻った場合)。
VよりV7の方が、不安定さや緊張感、戻ろうとする力が強いです。
次回は、T・SD・Dのいろいろな動き方、そしてケーデンス(カデンツ)=終止形について学んでいきましょう。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。