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職務著作 音楽著作権

こんにちは。高木啓成です。

前回は、「著作物」について詳しく見たあと、
その派生である「二次的著作物」、「共同著作物」と「結合著作物」について説明しました。

今回は、「著作物を作った人が著作者になる」という原則の例外規定である、
「職務著作」という制度について説明します。

1職務著作とは?

前回、「著作物」を作れば、作った人が「著作者」になり、
その人に「著作権」と「著作者人格権」が認められる、ということを説明しました。

基本的にはそのとおりなのですが、ひとつだけ注意すべき例外規定があります。
それが「職務著作」という制度です。

典型的なのは、新聞記者と新聞社です。

新聞の記事は、それぞれの新聞記者が書いていますが、
その著作者は新聞社になっていることがほとんどです。

音楽で言えば、ゲーム会社の従業員が、業務として、ゲーム音楽を作った場合が典型例です。
ゲーム音楽を作った従業員がそのゲーム音楽の著作者になるのではなく、
ゲーム会社が著作者になる
場合があります。

これを、「職務著作」といいます。

図1


今、いろんな音楽制作会社があり、DTMで作曲をやっているみなさんも、
音楽制作会社に所属して楽曲制作することもあると思います。

逆に、音楽制作会社を設立した方から、
職務著作に関する相談を受けることも多いので、ちょっと丁寧に説明します。

※なお、「映画の著作物」の場合も、「著作者が誰か」、
「著作権者が誰か」という点に特別な規定がありますが、
この講座は、主に音楽について説明しているので、この部分は省略します。

2 職務著作になる場合とは?

どういう場合に「職務著作」になるかというと、

  • 1_法人その他使用者(「法人等」)の発意に基づくこと
  • つまり、株式会社など、雇用主の企画として著作物が作られることが、1つめの要件です。
    「使用者」とは、雇用主のことです。会社だけでなく、その他の団体も個人事業者も含みますが、
    ここでは、とりあえず、会社という前提にしておきます。

  • 2_法人等の業務に従事する者であること
  • つまり、その著作物の実際の作成者が、会社の従業員や役員として、
    その会社の業務に従事している
    ことが、2つめの要件です。

  • 3_職務上作成する著作物であること
  • つまり、その著作物が、その会社の業務として作成されたことが、3つめの要件です。

  • 4_その法人等の名義で著作物を公表する場合であること
  • つまり、その著作物が、その会社の名義で公表されたこと
    (または、その会社名義で公表される予定であること)が、最後の要件です。

これらのすべての要件を満たす場合、「職務著作」となります(15条)。

ちょっと抽象的なので、具体的に説明します。

たとえば、僕が、株式会社sleepfreaksに勤務しているとします。

このとき、僕が、

  • 1_sleepfreaksの企画のもと
  • 2_sleepfreaksの従業員として(または役員として)
  • 3_sleepfreaksの業務として音楽を制作して
  • 4_その音楽がsleepfreaks名義で公表された場合(または、sleepfreaks名義で公表予定の場合)

「職務著作」としてsleepfreaksが著作者になる、というわけです。

図2

他方、僕が、sleepfreaksの従業員ではなく、
外部の作曲家として外注を受けた場合は、「職務著作」にはなりません。

「2」の要件が欠けるからです。この場合、著作者は僕です。

また、僕がsleepfreaksの従業員だったとしても、休日に、業務とは関係なく、
趣味の楽曲を作った場合も、「職務著作」にはなりません。
「1」と「3」の要件が欠けるからです。

この場合も、著作者は僕です。

また、僕が、作家事務所に所属して楽曲を作った場合は、作家事務所は、
一般的には、事務所名義で著作物を公表することを予定していないので、「職務著作」にはなりません。
「4」の要件が欠けるからです。
(ただ、作家事務所の運営の形態によっては、職務著作になる可能性がありますので、要注意です)

3 職務著作に該当する場合

職務著作に該当する場合、著作物を作った人ではなく、
雇用主が著作者になり、著作権と著作者人格権をもつことになります。

僕が作ったゲーム音楽なのに、sleepfreaksが著作者になり、
sleepfreaksが著作権と著作者人格権をもつことになってしまうわけです。

ただし、職務著作の4つの要件を満たし、職務著作に該当する場合であっても、
就業規則や労働契約書などで、「著作者は、会社ではなく、
その著作物を作成した従業員とする」と決めることもできます。

職務著作になるかどうかは微妙な場合も多々ありますので、トラブルのもとです。

ですので、所属する会社・団体との間で、前もって、
その会社の業務として制作する著作物についての扱いを決めておくことをおすすめします。

図3

4 今回のまとめ

今回は、職務著作について、丁寧に見てみました。
会社に所属したり、個人事業主と雇用関係を結んで、
音楽制作を行うことになった場合は注意すべきだ
ということを覚えていただければと思います。

次回から、著作者の権利の具体的な内容に入っていきます。

著者の紹介

高木啓成 写真
高木啓成
DTMで作曲活動中。
ロックバンド「幾何学少年」(現在、休止中)のリーダー、ドラマー。
弁護士として、エンターテインメント関係の法務、
中小規模の会社や個人の法律問題を扱う。

TwitterID : @hirock_n
Soundcloud : soundcloud.com/hirock_n

アクシアム法律事務所 : https://axiomlawoffice.com