×
目次

著作権の全体像 音楽著作権

Author: sleepfreaks

こんにちは。高木啓成です。
みなさん、ブラックフライデーは何か買いましたか??

僕は、KOMPLETE 9など気になるのがいろいろあったのですが、
今年は新しい機材は見送って、今までの機材をもっと使い込むことにしました。

さて、何度か説明しましたが、大事なことなのでもう一度言います。

著作物を作ると、(職務著作にならない限りは)その著作物を作った人が著作者になり、
「著作権」と「著作者人格権」が認められるわけです。

そこで、これから、著作者の権利である
「著作権」と「著作権人格権」について、詳しく見ていきましょう。

著作権法のコアな部分なので、気合いを入れて説明します!

著作者の権利(「著作権」と「著作者人格権」)

まず、「著作権」とは、
著作者の権利のうち、著作者の財産としての利益を保護するための権利のことです。

著作物は、場合によっては大きなお金を生み出す重要な財産になります。
ですので、しっかりと財産として保護しようという権利です。

そして、重要なのですが、「著作権」は、ひとつの権利ではなく

複製権や演奏権などのいくつかの権利をまとめた総称です。

複製権や演奏権などのひとつひとつの権利を、「支分権」と呼びます。

この連載では、音楽に関わる主な支分権である
「複製権」、「演奏権」、「公衆送信権」、「譲渡権」、「貸与権」、「編曲権」を解説します。

「著作権」は、著作者人格権と区別するため、「著作者財産権」とも呼ばれたりします。

ちなみに、今説明した「著作権」を「狭義の著作権」と呼び、
「著作権」と「著作者人格権」を合わせて、「広義の著作権」と呼ぶこともありますが、
「狭義」とか「広義」というのは紛らわしいので、この連載では使わないようにします。

図1


次に、「著作者人格権」とは、
著作者の権利のうち、著作者の人格面、精神面を保護するための権利のことです。

著作物は、著作者が自分の精神や感情を表現したものなので、
著作物の扱われ方によっては、著作者は大きな精神的なダメージを受けてしまいます。

ですので、著作者が精神的ダメージを受けないように保護しようという権利です。

著作者人格権も、ひとつの権利ではなく、
3つの権利(「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」)から成り立っています。
(でも、著作者人格権の場合は、それぞれの権利を「支分権」という言い方はしません。)

図2

まとめると、下の図のようになります。
この図は、著作者の権利を体系的に理解するために、とても重要です。

次回から、それぞれの権利について詳しく見ていきますが、
いつでもこの図に戻って、「今、どこを勉強しているのか」ということを意識しておくと、
体系的に理解できると思います。

図3

2 著作権と著作者人格権の対比

「著作権」は、財産権ですので、所有権と同じように、
他の人に対して、譲渡(※)することもできます。

著作者が亡くなった場合、著作権は、相続人に相続されます。

ですので、「著作者ではない人が著作権をもつ」という場合があるわけです。
むしろ、音楽ビジネスの世界では、著作者でない人が著作権をもっていることが当たり前になっています
(著作権をもっている人のことを「著作権者」と呼びます)。

これに対して、「著作者人格権」は、
著作者の精神的な権利ですので、著作者自身しかもつことができません。

ですので、譲渡することはできず、著作者が亡くなっても相続人に相続されません。
このことを「一身専属権」と呼んだりします。

ですので、法律上、
著作者以外の人が著作者人格権をもつことはあり得ません。

※「譲渡」というと、タダで物をあげることのように感じますが、
法律上、「譲渡」というのは、「権利を移転する」という意味なので、
有料(有償)の場合も、「譲渡」です。

たとえば、僕が楽器屋さんからソフトシンセを買った場合、
法律的には「楽器屋さんが僕にソフトシンセの所有権を譲渡して、
僕がその対価としてお金を支払った」という構成になります。

図4

たとえば、僕が「りんねのね」という楽曲の作詞・作曲したとします。
これにより、僕は「りんねのね」の著作者として、著作権と著作者人格権をもちますね。

そして、僕が「りんねのね」の著作権を㈱sleepfreaksに譲渡したとします。

この場合、㈱sleepfreaksは、「りんねのね」の著作権をもっているので、著作権者です。

僕は、「りんねのね」の著作権を失っていますが、
変わらず「りんねのね」の著作者ですし、著作者人格権をもっている、ということになります。

㈱Sleepfreaksは、著作権の譲渡を受けたからといって、
「りんねのね」の著作者になるわけではないし、
著作者人格権をもつこともない、ということに注意してください。

図5

3 今回のまとめ

今回は、ちょっと長くなりましたが、著作者の権利という、著作権法のコアなところを解説しました。

「著作者の権利」のまとめの図はとても重要なので、
今後、解説が進んでからも、ときどき戻ってきて参照してもらえればと思います。

次回から数回に亘り、
著作権の支分権と著作者人格権の3つの権利を、ひとつひとつ見ていくことにします。

著者の紹介

高木啓成 写真
高木啓成
DTMで作曲活動中。
ロックバンド「幾何学少年」(現在、休止中)のリーダー、ドラマー。
弁護士として、エンターテインメント関係の法務、
中小規模の会社や個人の法律問題を扱う。

TwitterID : @hirock_n
Soundcloud : soundcloud.com/hirock_n

アクシアム法律事務所 : https://axiomlawoffice.com