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【UADプラグイン特集】ヴィンテージ機材の王様 Neve 1073 Preamp & EQ Collection

あまりにも有名なNeveの代表的チャンネルストリップ

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UADの秀逸なプラグインをご紹介していくシリーズ、第7回目となる今回は、「Neve Preamp & EQ Collection」を取り上げます。
Neve 1073といえば、数々のエミュレータープラグインが各社から発売されていて、DTMerの皆さんにとっても耳馴染みのある存在ではないでしょうか?
その実機の価格を調べて見ると、リイシューやレプリカモデルでも数十万、オリジナルのヴィンテージともなれば100万円近い価格で販売されています。
なぜNeve 1073はこれほどまでに多くのエンジニアに愛され、今もなお人気が衰えないのでしょうか?
今回はその秘密に迫りながら、UAD Neve 1073 Preamp & EQ Collectionのサウンドもレビューしていきたいと思います。

製品リンク:Neve 1073 Preamp & EQ Collection

なお、UADプラグインは専用のDSPアクセラレーター(あるいはオーディオインターフェイスApolloシリーズ)で動作します。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

Neve 1073の歴史と特徴

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Neve は1961年に創始者ルパート・ニーヴによって設立されました。当初より、レコーディング・スタジオや放送局スタジオ向けにミキシング・コンソールやそのモジュール類などを設計/生産していましたが、1970年にウェッセックス・スタジオからのオーダーに合わせてNeve#1073 H/A-EQが設計され、それが現在までヴィンテージ機材の王様として君臨するNeve 1073 モジュールの起源となりました。
トランジスタを主要部品に使ったディスクリート構成で、クラスAアンプを搭載。その音質を決定づけているのは実はトランス(変圧器)で、もともとトランスの設計技師であったニーヴ氏自身が設計&発注したトランスが使われているとのこと。

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サウンド・キャラクターについては、よく「シルキー」と称されるのですが、これは非常に存在感のある高域でありながら滑らかで耳心地がよいという特徴を指しています。ボーカルを通せばしっかりと楽曲の主役に仕上げてくれるでしょう。一方で、リッチな中低域にも定評があり、キックやベースなどに太さや温かみを加えたい場合にも重宝されています。

もちろんNeve 1073は数々のヒット曲のレコーディングに使用され、一時代を築きましたが、なぜ時代の流れの中で過去の遺物にならなかったのでしょうか?
それは、レコーディングスタジオのマルチトラックレコーダーがテープメディアからDAWに移行しはじめた1990年代後半以降、改めてマイクプリアンプやコンプレッサーなどのアウトボードのニーズが高まり、 1073をはじめ名機の価値も再認識されたからです。DAW時代のそつのない、ある意味で「つまらない」サウンドに対する反動とも言えるでしょう。
Neve 1073のモジュールは生産数が限られていたために、発売当時の数倍もの高値で取引されるようになりました。また状態の個体差も激しく入手リスクも高かったため、世界中のプロオーディオメーカーはこぞってこの名機のレプリカ製品を開発・販売しました。

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もちろんその後、Neve 1073をモデルとしたエミュレータープラグインも数多く発売されることになるわけです。

UADのNeve 1073 Preamp & EQ Collectionは、希少な1970年代のオリジナル・ヴィンテージ・ハードウェアを、最新の技術でモデリングしたプラグインです。プリアンプとEQサーキット内の10箇所にも及ぶクリッピングポイントをすべてキャプチャーしたとのことで、数あるモデリングプラグインの中でも他の追随を許さない精巧さを誇っています。

Neve 1073 Preamp & EQ Collectionの主要パラメーター

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  • ①インプット
    インプットセレクトとゲイン調整を行います。「MIC.」「LINE」と書かれてあるラベルをクリックすることで、インプットのタイプを洗濯します。MIC入力とした場合時計回りに60dBのレンジで、LINE入力とすると反時計回りに30dBのレンジで調整可能で、いずれも5dBステップです。通常、Apollo インターフェースのプリアンプにインサートしてマイク録音する場合はMICを選択し、それ以外はLINEを選択します。主にここで1073独特のカラーリングが行われますが、インプットレベルを上げると同時に音量も上がりますので、LevelフェーダーやOutputノブで調整します。
  • ②ハイシェルフ
    12kHzに固定されたシェルビングEQです。時計回りでブースト、反時計回りでカットすることができます。このハイブーストで得られる艶も、1073サウンドの特徴と言えます。
  • ③ミッドレンジ・バンド
    二重の同軸ノブによってコントロールを行うパラメトリックEQです。外側のノブで周波数またはオフを選択し 、選択した帯域に対して内側のノブでゲインを調整します。
  • ④ロー・バンド
    オフまたは4つの周波数を選択可能な、シェルビングEQです。外側のノブで周波数またはオフを選択し 、選択した帯域に対して内側のノブでゲインを調整します。
  • ⑤ハイパス
    4つの固定周波数を選択することでハイパスフィルターを適用します。オフを選択した場合無効となります。
  • ⑥レベルフェーダー
    オリジナルのNeveコンソール・フェーダーをモデリングした、レベルフェーダーです。Inputとの兼ね合いでレベル調整を行う際に使用しますが、こちらでも若干の音質変化が発生します。
  • ⑦アウトプット
    シグナルのキャラクターに影響を与えることなくプラグインのシグ ナル・レベルを調整することができます。サウンドに強いカラーリングを与えたい場合、InputもLevelも高めに設定し、このOutputを下げることで適度な音量を保つことができます。

使用ケース1:ボーカルへの適用

まずはNeve 1073の醍醐味を味わえるボーカルへの適用例です。
楽曲の顔となりますので、しっかりとした存在感を狙いました。

▶︎適用前

▶︎適用後

聴いた瞬間にパッと華やかになった感じがしますね。EQ効果ももちろんありますが、やはりプリアンプによる倍音付加効果によりNeve 1073独特のシルキーな高域が生まれているように感じます。
設定はこのような感じです。

vocal

インプットtはLineで-10の位置とし、心地よい程度の倍音付加を狙っています。同時に音量が上がりますので、レベルフェーダーで下げておきます(こうすることで、パイバスとの比較もやりやすくなります)。この辺りの数値はソースのレベルにもよりますので、耳でしっかり確認しながら決めていきましょう。
こちらもNeveサウンドの鍵であるハイシェルフは5dB程度ブーストましたが、多めに上げても嫌な感じにならず、滑らかに高域が伸びてきます。
ミッドレンジeは音抜けを狙って3.2kHzを4dB程度ブースト。一旦ブーストしてから、帯域を切り替えて探ってみると決めやすいです。
ローは220Hzで若干ブーストし、力強さと温かみを与えています。

使用ケース2:キックへの適用

続いてはキックへの適用例です。
楽曲の土台となるどっしりした低域、かつ適度に抜ける中高域を狙ってみました。

▶︎適用前

▶︎適用後

単に重いだけでなく、太さが足された感じがしますね。かつもっちりとした心地よい粘りも感じます。やはりこちらも、単にEQによるブースト効果だけでは得られない、Neve 1073ならではの音質だと思います。
設定はこのような感じです。

kick

インプットは明らかな歪みが生まれない程度とし、Lineで-10の位置に落ち着きました。歪むと中高域に不自然な倍音が発生しますので、それを狙う場合を除いては、避けたほうがいいでしょう。
この時点で適度な張りと太さが出てきますが、ローで60Hzを若干ブーストし、重心をシフトさせます。EQカーブの特性でしょうか、ここで指定周波数より上の太さがさらに強調されるように感じました。
ミッドレンジでは7.2kHzをやや多めにブーストしています。プリアンプを通したことによって生まれたもっちり感が強調され、かつオケに埋もれない存在感を醸成しています。

使用ケース3:スネアへの適用

最後にスネアのケースもご紹介しておきましょう。
プリアンプで若干のドライブ感を加え、ブライトな印象を狙いました。

▶︎適用前

▶︎適用後

これぞアナログという感じの、カラッとした明るさが加わりましたね。しかし輪郭がぼやけることはなく、ソースのパンチがキープされています。
設定はこのような感じです。

snare

インプットは、上げるほどにざっくりとしたロックなサウンドになっていきますが、行きすぎるとオーバードライブで潰れた印象になります。もちろんそれを狙うジャンルならハマると思いますが、今回は-5の位置で十分でした。
EQによる補正は若干で、ハイシェルフで少し明るさを強め、ミッドレンジでは胴鳴りの帯域を狙って 太さとパンチ向上を狙っています。


最後に参考として、ミックス全体で上記3トラックへの適用前後を比べてみてください。

▶︎ボーカル、キック、スネアへの適用前

▶︎ボーカル、キック、スネアへの適用後



以上、今回はNeve Preamp & EQ Collectionついて、オリジナル機材の歴史とともにご紹介しました。
これほど有名な機材なので、使ってみると「あっ、あの音に近づいた」という感動があります。それだけ多数のヒット曲で使われ、私たちの耳に馴染んでいる音なのでしょう。
良し悪しには主観もあるかもしれませんが、やはり多くのエンジニアが選んでいるということで、一つの正解のサウンドと言ってもいいのではないでしょうか?
UADで、憧れのNeveをぜひ手軽に楽しんでみてください。

製品リンク:Neve 1073 Preamp & EQ Collection

記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru

Sleepfreaks DTM講師 大鶴 暢彦
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