ボーカルレコーディング虎の巻2 ステップアップ編
レコーディング機材をステップアップし、使いこなす
前回の記事では、ボーカルレコーディング時に最低限必要なものと、
録音時に注意すべき点について解説しました。
レコーディングを始めて当面は、基本のセットで十分かと思いますが、
ある程度上達してくると、機材をステップアップしたくなると思います。
今回は、最初のステップアップとしてどのような機材を選べばよいか、
またそれらをどう使いこなしていくかについて、取り上げていきたいと思います。
外部マイクプリアンプの導入
マイクプリアンプ(通称マイクプリ)とは、マイクから入ってくる音声信号を増幅し、
適正なレベルで録音できるよう調整するための機材です。
ほとんどのオーディオインターフェースには内蔵されていますので、
なければ録音できない、というものではありません。
(GAINやSENSというツマミで録音音量を調整する部分がプリアンプです)
ただ、オーディオインターフェースの価格帯によってはプリアンプ部が弱いため、
外部機材を導入して強化できる可能性があります。
また、プリアンプにはそれぞれキャラクターがあるので、外部プリアンプを導入すれば、
録音ソースや狙いたい音質に合わせて選択できるようになります。
宅録環境にオススメのマイクプリ
マイクプリは価格帯が非常に幅広く、下は1万円以下から、上は数十万円というものもあります。
最初の導入からいきなり数十万というのは勇気がいると思いますので、
ここでは宅録に丁度よいコストパフォーマンスの機材をご紹介します。
複数のチャンネルを同時に録音することが少ない宅録環境では、
本製品のような1chでクオリティを高めているものを選択するとよいでしょう。
音質は非常にクリアかつ明るい印象です。視認性の高いメーターも重宝します。ISA ONEと同様、1chタイプのマイクプリです。
「NEVE」といえば高価なビンテージ機材として有名ですが、PRE-73はそれに近い音質を
低価格で実現しようというコンセプトで作られています。
ISA ONEよりもやや強い個性や、中低域にパンチが欲しい方にお勧めします。
マイクプリの接続方法
マイクプリは、マイクとオーディインターフェースの間に接続します。
- ゲインはマイクプリ側で調整し、オーディオインターフェース側は上げないようにします
- ファンタム電源(+48V)もマイクプリから供給します。
マイクのバリエーションを増やす
マイクプリの次にトライしていただきたいのは、マイクの追加です。
こちらも声質や曲調に合わせて選択できるようになるとステップアップに繋がります。
マイクも非常に種類が多く、選ぶのが難しいところですが、
もし現状お持ちでなければ真空管タイプのマイク導入をお勧めします。
太く温かみのある音が特徴で、特に弱くなりがちな低音域の魅力を引き出してくれます。
といっても用途が限られるわけではなく、自然でリアリティのあるサウンドです。
最近では安価でクオリティの高い機種も揃ってきましたので、一部をご紹介しておきます。
コストパフォーマンスの高さで定番の地位を築いたRODE社の製品です。シンプルな単一指向性で、真空管らしいリッチなサウンドを十分に表現してくれます。
こちらでは動画で試聴もできます。オーストリアの伝統ある企業、AKG社の製品です。
性能は折り紙つきなのはもちろん、指向性の切り替えも可能といった幅広いカバー力が魅力です。
こちらでは動画で試聴もできます。
真空管マイクの注意点
真空管マイクには、上図のような専用の電源ユニットが付属します。
電源供給はそちらから行いますので、オーディオインターフェース/マイクプリともに、
ファンタム電源(+48V)をオンにしないで下さい。
また、真空管は温まるまで性能が十分に発揮されません。
電源を入れてから10〜30分程度待ち、温度が安定してから使用してください。
(マイク本体を触って確認します)
機材追加後のチェックポイント
- 1. マイクの指向性チェック
- 2. ローカットを活用する
マイクの指向性には「単一指向性(カーディオイド)」「無指向性」「双指向性」の3つがあります。
上の図の中央がマイク位置と思ってください。周囲の曲線はそこから録音できる方向を示しています。
製品の種類としては、単一指向性のみのものと、3つを切り替え可能なものに分かれます。
もし切り替え可能の製品を購入した場合、ボーカルは単一指向性で録音して下さい。
環境ノイズを拾いにくく、力強い音を録れます。
(段階的に調整できるものは、好みの音になるよう若干調整してみても良いでしょう)
マイクやマイクプリアンプ自体に、ローカット(ハイパスフィルター)機能がついているものがあります。
不要な低音ノイズについては、音を録る入り口の近くでカットしてしまった方が
S/N比が良くなりますので、積極的に活用してください。
上の図のようなマークや文字が本体にあれば、ローカット可能です。
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記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru
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