iZotope RX 9 新機能を検証!その進化の全貌は?
更なる高精度化と利便性向上
今回はついにリリースされた業界標準オーディオリペアツールの最新版、RX 9についてその強化されたポイントをお伝えしていきたいと思います。
果たしてどの程度の精度なのか、独自の検証も行いましたので、ぜひご確認ください。
進化のポイントは大きく分けて6つあります。
- 1分離精度が飛躍的に向上した「Dialogue Isolate」(Advanced)
- 2Complexモードが追加された「Ambience Match」
- 3Dynamicモードが追加された「De-hum」
- 4新機能「Restore Selection」(Advanced+Standard)
- 5Logic 内で Spectral Editor が使用可能に(Advanced+Standard)
- 6History List の閲覧数が大幅に増加(Advanced+Standard)
それでは、1つずつ見ていきましょう。
RX 9 新機能 解説動画
分離精度が飛躍的に向上した「Dialogue Isolate」
Dialogue Isolateは、騒音の中で収録された会話やセリフなどについて、騒音を消したり、量を調整する、といったことが可能なモジュールで、Advancedのみの機能となります。
使い方は非常に簡単で、Seinsitivityで抽出感度を決め、Dialogue gainとNoise gainのバランスを調整することが基本となります。Ambience preservationは、ダイアログにノイズ以外の空気感を残したい場合に使用します。
RX 9ではこの分離精度が大きく向上し、比較的大きな騒音の中でも、しっかりダイアログを抽出できるようになりました。
サンプルを用意しましたので、まず処理前を聞いてみてください。
これに対し、Sensitivityを3程度(ダイアログ寄りの設定)として、QualityをBestでレンダーしてみました。
騒音がしっかり取り覗かれていて、かつダイアログの明瞭感も保たれています。
RX 8で行ったものとも比べてみましょう。ほぼ同じ値でレンダーしたものです。
騒音はほぼ取れていますが、ダイアログのやや雑音がまとわりつく感じで、明瞭とは言い切れません。
RX 9では明らかに精度が向上していることがお分りいただけたかと思います。
Complexモードが追加された「Ambience Match」
Ambience Matchは、環境音込みで収録されたセリフなどから環境音のみを抽出し、アフレコのセリフに混ぜて違和感なく繋ぐといったことを可能にするモジュールで、Advancedのみの機能となります。
RX 9では新たにComplexモードが追加され、一定の環境音だけでなく、様々に変化する環境音にも対応できるようになりました。
こちらもサンプルを用意しましたので、一度お聞きください。
道路の騒音とともに鳥が不規則に鳴いているというシチュエーションです。
これと環境音を合わせたいサンプルがこちらです。
まずはアンビエンスを生成しましょう。
Complexモードではセリフのない箇所から環境音をサンプリングし、連続的に使用できるアンビエンスを生成します。セリフのない箇所をなるべく長めに選択して、Learnをクリックしましょう。
これでアンビエンスが生成されましたので、このまま適応したいファイルへと移り、レンダーします。
アンビエンスが付加されたノイズなしのサンプルがこちらです。
綺麗に環境音がマッチングされましたね。鳥の声も違和感がありません。
特に設定しなくても十分な結果が得られる場合が多いですが、素材によっては微調整が必要になることもあります。
- Movement:この値をらすと、動きのある要素を間引くことができます。
- Randomness:動きのランダム具合を調整します。ランダムにしすぎると不自然になることがあります。マイナスに振り切るとサンプリング元に近くなり、ループ再生のような感じになります。
- Gain:アンビエンスの音量を調整します。
Dynamicモードが追加された「De-hum」
De-Humは以前の動画でも取り上げましたが、その名の通りハムノイズを取り除いてくれるモジュールです。
これまでは上記記事で紹介したStaticモードだけでしたが、今回Dynamicモードが追加されました。
ノッチフィルタが16個から最大1024個に増え、ゲインもインプットに応じて自動的に変化するなど、倍音が多いハムノイズでも音声への影響を最小限に留めながら処理できるようになっています。
サンプルで試してみましょう。
このように非常に強烈なハムノイズが入っています。
まずは従来のStaticモードで処理してみました。
ノイズもまだ残り気味で、音声への影響も大きいですね。
ではDynamicモードで処理してみます。ノイズの部分でLearnし、Bands(ノッチフィルターの数)を最大の1024、Filter Qを最も幅広の100としてみました。
ノイズが大幅に軽減され、音声も非常にクリアです。Staticモードとは歴然の差ですね。
新機能「Restore Selection」
全対的に処理を行った音源に対して、選択した部分だけアンドゥできるという便利な機能です。
例えば、De-Essなどの処理で、一部だけ効きすぎて聞き取りずらくなった箇所があったとします。
その場合、その箇所の復活したい周波数帯域のみを選択します。
この状態で、右下のヒストリーの、戻りたい履歴、この場合Initial Stateの右の方にカーソルを持っていくと、このようなマークが出ます。
こちらをクリックすることで、選択部分のみをその履歴に戻す事ができます。
Logic 内で Spectral Editor が使用可能に
Logic内でARAとしてSpectral Editorが使用できるようになりました。
LogicのARAを使用する際は、インサートの一番上である事が条件です。
Editorを探すと、(ARA)と付いたものがありますので、選択します。
これでARAとしてSpectral Editorが適用されましたので、処理を行いたいリージョンを選択して再生します。
Spectral Editorでは、修正したいノイズ部分を選択して、消したり弱めたり、といった事ができます。
リージョン全体でなく、ピンポイントで直したい場合に非常に便利です。
History List の閲覧数が大幅に増加
これまでは5ステップまででしたが、最大30ステップまで戻れるようになりました。
先述のRestore Selectionと合わせて、使い勝手が大きく向上しましたね。
以上がRX 9のパワーアップしたポイントとなります。
加えて、CubaseでRX Connectを使用する際にクラッシュするバグや、日本語ファイル名保存によりクラッシュするバグが修復されたとのことです。
ますます痒いところに手が届く、そして手放せないツールになりましたね。
オーディオリペアの最先端を味わえるRX 9、ご興味を持たれた方はぜひ一度お試しください。
業界標準!オーディオリペアツールの最新版【iZotope RX 9】新機能解説!
果たしてどの程度の精度が向上したのか、独自の検証も行いましたので、ぜひご確認ください。
なお、RX 9については、追ってDTMセール情報(@DTM_SALE )でも取り上げます。
詳細:https://t.co/TMuCSXrDsL#DTM #DAW pic.twitter.com/A2gypR8POY
— SLEEP FREAKS (@SLEEPFREAKS_DTM) November 29, 2021