進化を遂げた業界標準のノイズ除去ソフト「iZotope RX 8」新機能解説

Author: sleepfreaks

革新的な機能をさらに追加

rx8_top

今回は待望のメジャーアップデートとなった、iZotope社のオーディオリペアツール「RX 8」について、その主な新機能や改良点についてお伝えしていきたいと思います。
今回取り上げるのは、以下の項目です。

  1. 1圧縮された音源を明瞭化する「Spectral Recovery」
  2. 2ギターのノイズに特化した「Guitar De-noise」
  3. 3テープのワウ・フラッターを修復する「Wow & Flutter」
  4. 4一瞬でラウドネスを調整できる「Loudness Control」
  5. 5強化されたMusic Rebalance

それでは、一つ一つ確認していきましょう。

iZotope RX 8 新機能 動画

  1. 1RX7の基本概要
  2. 2ブレスや各種ノイズの処理
  3. 3各種ノイズ、リバーブ、クリップ除去
  4. 4iZotope RX 8 新機能解説



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Spectral Recovery

Spectral Recoveryは、圧縮などによって帯域が制限された素材に対して、本来存在するべき高域の情報を付け加える、つまり高音質化するという驚きの機能です。
例えば、SkypeやZoomなどを通して収録された音声は高域がカットされて音質が悪いですが、そういったものもある程度使える音声にしてしまうことができます。

spectral_recovery1

こちらのサンプルをお聞きください。

いかにも圧縮された音声ですね。
スペクトログラムも高域がバッサリ抜け落ちています。

before

これに対してSpectral Recoveryを適用していきます。
まずはLearnボタンを押しましょう。プロファイリングが行われ、カットオフ周波数とスムージング量が自動でセットされます。

learn

一度レンダーしてみましょう。するとこのように、高域が合成されたのが見てわかると思います。

after

再生してみると…

明らかに高音質に聞こえますね。
パラメーターについても理解しておきましょう。

  • Spectral Patching:チェックを入れておくと、カットオフ周波数以下にスペクトログラム上の穴がある場合、それを埋めてくれます。
  • Amount:カットオフ周波数より上にどのくらいのエネルギーを付け足すか、またカットオフ周波数より下の穴埋めをどの程度行うか、その強さを決定します。
  • Cutoff:元素材に収録されている音声の周波数の上限を決定します。この値より上に高域成分が合成され、下に存在する穴を埋めてくれます。Learnボタンで自動調整されますので、あまりいじらなくてもいいでしょう。
  • Vowel/Sibilant Balance:合成された部分について母音と子音どちらに重点を置くかを決定します。
  • Smoothing:元素材の音と合成された音の境目をスムースにします。こちらもLearnボタンで自動調整されます。

基本はあまりパラメーターをいじらなくてもいい感じに仕上がりますが、不自然さを感じる場合などには、色々と試して最適な状態を模索してみてください。

Guitar De-noise

Guitar De-noiseでは、ギター演奏時に発生する3種類のノイズをコントロールする事ができます。

guitar de-noise

Amp

Ampは、ギターアンプのハムノイズを除去してくれます。

サンプルを聞いてみましょう。

がっつりとアンプノイズが乗っていますね。これを取り除くには、まずノイズだけの部分を選択し、ampセクションのLearnボタンをクリックします。

learn

これでノイズのプロファイリングができました。

そのままプレビューしてみましょう。

かなりのレベルでノイズが除去され、かつ演奏部分のへの影響が非常に少ないですね。
パラメーターは以下の2つです。

amp

  • Sensitivity:ノイズ削減の感度を調整します。このサンプルのように、ノイズの音量振れ幅が少ないものの場合、感度を低めにした方が演奏部分への影響が少なくなります。
  • Resolution:アンプのノイズから最大でどれだけの数の倍音を取り除くかを設定します。多くの場合128で十分ですが、もし問題があれば上げてみてもいいでしょう。
Squeak

Squeakは、ギターの弦の擦れる音を低減してくれます。

まずはサンプルをお聴きください。

このようなキュイっという音ですね。
以下のパラメーターを調整しながら、低減していきます。

squeak

  • Sensitivity:弦の擦れ音をどの程度拾うかの感度を決めます。ギターの必要な高音が失われない程度に上げておくといいでしょう。
  • Reduction:検知した擦れ音をどの程度低減するかを決めます。好みに応じて調整してください。
  • Duration:対応する擦れ音の長さを選択します。Shortは200msまで、Longは1000msまで対応します。プラグインではLongの方がレイテインシーが大きくなります。

結果はこの通りです。

非常に高精度に抑えてくれていますね。

Pick

Pickではギターのピッキングのアタック音が楽曲の中で目立ちすぎる場合に抑え込むことが出来ます。

こちらもまずサンプルを聴いてみましょう。

このようにアタック音が強く出過ぎた場合ですね。
以下のパラメーターを調整しながら、低減していきます。

pick

  • Sensitivity:信号の中からどの程度ピッキングの音を検出するかを決定します。あまり大きくしすぎると音色に影響が出るので注意しましょう。
  • Reduction:検出されたピッキング音をどの程度減衰させるかを設定します。こちらも適度な量を探りながら調整しましょう。
  • Attack:コンプレッサーのアタックタイムと同じで、減衰の起きるタイミングを設定します。デフォルトで特に問題ないと思いますが、微調整したい場合は動かしてみてもいいでしょう。

適用した結果こうなりました。

程よい抑え具合になりましたね。非常に自然です。

Wow & Flutter

Wow & Flutterは、レコードやテープのような録音媒体で起こる、音質劣化によるピッチの揺らぎを修正します。

wow_flutter

WowとFlutterそれぞれのモードがあり、Wowは0〜5Hzの比較的ゆっくりしたピッチの変化に、Flutterは8〜40Hzの、Wowよりも速いピッチ変化に対応します。
パラメーターは以下の通りです。

  • Wow rate(Wowのみ):揺れの早さに合わせて、Fast, Medium, Slowの選択が可能です。最初は基準がわかりにくいと思いますので、色々と試しながら決めるといいでしょう。
  • Sensitivity:どの程度の強度でWowまたはFlutterを修正するかを決めます。概ねデフォルトの5で上手くいく場合が多いですが、足りなければ上げてみましょう。もし、サウンドの中にビブラードのような音楽的に必要な揺れがあり、それに悪影響が出る場合は、下げて調整します。
  • Center global pitch:チェックを入れると、指定した特定のピッチを中心にオーディオ全体のピッチを修正します。修正を行おうとしている楽曲のチューニングを指定したい場合は、使用してみてください。

サンプルを用意しましたので、効果を確認してみましょう。

まずは現状を聞いてみてください。

かなりピッチが揺れていますね。スペクトログラムもこのように波打っています。

wow_spectro

今回はWowのFast、Sensitivityは5で行ってみます。

結果はこうなりました。

ほぼピッチの揺れがなくなりましたね。スペクトログラムの波打ちも平らになりました。

wow_spectro2

Loudness Control

Loudness Controlでは、様々な規格に則ったラウドネス基準値や、自分で設定したラウドネス値に素材が適合するよう、瞬時に変換してくれます。

loudness

Loudness Controlモジュールを起動すると、即座に計測が始まり、プログラム全体の現状のラウドネス値を表示します。特定部分を選択すると、その範囲のみを計測対象として数値が更新されます。

右下の▶︎をクリックするとヒストリープロットが表示され、マウスオーバーすると、その時点での測定値を参照することができます。また、ウインドウ右下をドラッグすることで、リサイズすることも可能です。

history_prot

プリセットには、世界各国の様々な規格が用意されており、選択するとTragetのパラメーターに反映されます。

presets

True Peakの上限値や、Integrated Loudness、規格によっては存在するShort TermやMomentaryの上限値も設定することが可能です。Toleranceでは、ターゲットからのズレをどの程度許容するかを設定します。Program Loudness Gateのオンオフでは、無音部分や極端に音量が小さい部分等をIntegrated Loudnessの計算から除外するかどうかを設定します。多くのラウドネス基準ではこのゲーティングを使用していますが、必要に応じてオフにすることも可能です。

基準値を決定しRenderすれば、一瞬でターゲットに適合させることができます。

進化したMusic Rebalance

Music Rebalanceについては以前ご紹介しましたが、トラックダウン済みの2MIXの中からボーカル、ベース、打楽器、その他の楽器を分離して、個別に抜き出したり、消したり、音量バランスを変えたり、といったことができる機能です。
RX 8では、更なる膨大なデータを機械学習する事により、ソース分離のアルゴリズムが飛躍的に向上しました。
さらにソロボタンや、4つのステム別に書き出すSeparate機能なども追加され、利便性が向上しています。

rebalance

サンプルで試してみましょう。

こちらが元素材です。

ボーカルを最小値ににし、Quality=Bestでレンダーしてみました。

他の楽器への影響がほとんど感じられないですね。驚きの精度です。
なお、精度向上に伴いCPU負荷も大きくなっているようです。お使いの環境によって、プレビュー時はQualityを落とすなどの対応を行ってください。


以上、RX 8の新機能や改良点について、主なものをピックアップしてご紹介しました。
様々なシーンで活躍しそうな、強力な進化を遂げていますね。
ご興味を持たれた方は、ぜひお試しいただければと思います。




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記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru

Sleepfreaks DTM講師 大鶴 暢彦
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