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音名の相対表記(Scale degree names)/音楽理論講座

楽曲にストーリー性を持たせるための準備

前回の最後のサンプルでは、王道進行を3回繰り返した後に特定の仕掛けを施すことで、楽曲が一段落し、終わりを感じさせることができることを示しました。

今回からは、このような「楽曲のストーリー性」をコードで表現するための知識を、一つずつ取り上げていきます。

具体的には、数回に分けて、今の段階で使えるコード (3,4和音のメジャー・ダイアトニックコード)
を”どのように使えば良いのか”
に焦点を当てていきます。
引き続き、楽曲分析などの練習を行いながら身につけていただければ、より効果的です。

ここで混乱を避けるために、今まで出てきたいくつかの用語も復習しておきましょう。

以降はスケールディグリーの理解が重要となるため、ここで改めて見ていきましょう。

Cメジャースケールは「C D E F G A B (C)」で、スケールディグリーは【1 2 3 4 5 6 7 (8)】です。

例として(ナチュラル)マイナースケールは、対応するメジャースケールの第3音と、第6音、第7音が半音下がります。
スケールディグリーは、【1 2 b3 4 5 b6 b7 (8)】です。
よって、C(ナチュラル)マイナースケールは「C D Eb F G Ab Bb (C)」になります。

この方法で、中近東の音楽でよく使われる「アラビックスケール」も見てみましょう。
このスケールは、対応するメジャースケールの第2音と第6音が半音下がることで特徴づけられます。
スケールディグリーは、【1 b2 3 4 5 b6 7 (8)】です。
よって、Cアラビックスケールは「C Db E F G Ab B (C)」になります。

この方法を理解し、しっかりと覚えておきましょう。


スケールディグリーネームとそれぞれの役割

ここからは、音名の相対表記(スケールディグリーネーム)=(Scale degree names)を確認していきます。
少し複雑に感じるかもしれませんが、重要なポイントを押さえれば理解が深まります。
これまで学んできた知識も活かせますので、一緒に頑張りましょう。

まずは、五度圏の図をご覧いただきながら、各メジャーキーとそのスケールをイメージしてください。

次に、各キーにおける「C」の音に注目してみましょう。

Cメジャースケールでは、左から1番目に位置します。

Gメジャースケールでは、Cは4番目の音です。

Fメジャースケールでは、Cは5番目の音です。

この位置の違いのように、同じ「C」でもキーによって役割が異なります。
その役割を理解するために、スケールディグリーネームが必要です。

Cメジャースケールを例に、それぞれの役割を確認していきましょう。

  • 「I」 Tonic(トニック)= 主音(しゅおん)
    スケール(音階)の最初の音で、移動ドにおいてメジャーキーでは「ド」の音です。
    スケールの中で最も安定した音と言われており、調性のある音楽では、この音に戻りたいという力が働きます。
  • 「II」 Supertonic(スーパートニック) = 上主音(じょうしゅおん)
    トニックの上にある音です。
  • 「III」 Mediant(ミーディアントまたはメディアント) = 中音(ちゅうおん)
    トニックとドミナントの中間に位置する音です。
  • 「IV」 Subdominant(サブドミナント) = 下属音(かぞくおん)
    トニックからP4th上の音です。下で考えると、P5th下の音です。
  • 「V」 Dominant(ドミナント) = 属音(ぞくおん)
    トニックからP5th上の音です。下で考えると、P4th下の音です。
    トニックに対して重要な位置付けとされています。
  • 「VI」 Submediant(サブメディアント) = 下中音(かちゅうおん)
    トニックとサブドミナントの中間に位置する音です。
  • 「VII」 Leading Tone(リーディング・トーン) = 導音(どうおん)
    トニックの半音下の音です。トニックに導く力を持っています。

以上からわかるように、「C」という音は、Key=Cならトニック、key=Fならドミナント、Key=Gならサブドミナントという位置付けになります。

まとめ

今回の記事のポイントは下記の通りです。

  • スケールディグリーネームは、各音の役割を理解するために重要で、異なるキーにおける同じ音の役割を明確にする
  • 「I」トニックはスケールの最初の音で、最も安定した音として調性の中心となり、曲の終わりに戻りたいという力が働く
  • 「V」ドミナントはトニックに対して重要な位置付けとされている
  • 「VII」リーディング・トーンはトニックに導く力を持つ
  • 同じ「C」の音でも、Key=Cではトニック、Key=Fではドミナント、Key=Gではサブドミナントの役割を持つ

次回はここから更にコードの役割へと発展させていきます。
「このキーなら何番目の音だから…」といった風に、すぐにスケールディグリーとリンクできるようにしておきましょう。


記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh

伊藤 和馬

18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。

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