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いきものがかり「ありがとう」コードアナライズ_4 ツー・ファイブ

「ツー・ファイブ」と「セカンダリー・ドミナント」について

いきものがかりの「ありがとう」のコードアナライズ第4弾です。
今回は、「ツー・ファイブ」と「セカンダリー・ドミナント」について解説いたします。

解説対象楽曲

jasrac 2

解説動画

1_キーの判別方法
2_コード進行
3_ノン・ダイアトニックコードについて
4_ツー・ファイブ(当記事となります)
5_ピボット・コード
6_ダブルドミナントとサブドミナントマイナー
7_分数コード(オン・コード)について

ツー・ファイブについて

いきものがかり_コード_ツーファイブ

Gm7とC7は、どちらもノン・ダイアトニックコード(借り物コード)です。
C7はドミナントコードですから、セカンダリー・ドミナントの可能性を考えてみます。

CM7_C7の違い

ここで、注意すべきは「CM7」と「C7」
構成音がたったひとつ違うだけですが、明らかに役割が別物であることです。
Cメジャーキーの場合、
「CM7」ダイアトニックコードですが、
「C7」ノン・ダイアトニックコード(借り物コード)で、セカンダリー・ドミナントです。

では、C7がドミナントになるキーはなんでしょうか?

FメジャーキーのC7_役割

ここでは、C7はFメジャーキーの「V(ドミナント)」であることがわかります。
さらに、C7の直前にあるGm7も、Fメジャーキーの「II(サブドミナント)」です。

Fメジャーキー_ツーファイブ

II(サブドミナント)のコードからV(ドミナント)のコードの連結は、
ジャズやポピュラーでは頻繁に見られ、これは特に「ツー・ファイブ」と呼ばれています。
多く用いられる要因のひとつは、サブドミナントからドミナントへの進行の中でも、
ベースの進行が4度上行(5度下行)にあたる「強進行」をもっているためです。

ダイアトニックコードのII-Vはもちろん、
このようにセカンダリー・ドミナントでもII-Vを使うことができ、
「リレイテッド・ツー・ファイブ」とも呼ばれます。

「リレイテッド・ツー・ファイブ」についての、より詳しい解説は、
リハーモナイズ講座の方にありますので、そちらも参照ください。

https://sleepfreaks-dtm.com/wordpress/music-theory/2-5/

ベースのリピーティングに着目しよう

セカンダリー・ドミナント_例Gm7_C7_F

Gm7→C7からFというのが、一般的なセカンダリー・ドミナントの進行先なのですが、
ここでは、Fは省略されて、Bm7(♭5)に繋がっています。

Fを省略した意図には、いろいろと推測できますが、
そのひとつとしてベースラインに着目してみます。

いきものがかり_ありがとう_ベース進行

冒頭の4つのコードのベース音は「4度上行(あるいは5度下行)」の強進行をともなった、
力強い進行であることは、前回紹介しました。

いきものがかり_ありがとう_セカンダリー・ドミナント_コード進行-2

セカンダリー・ドミナントにあたるC7からのベース音の進行もみてください。
実は、ここもコードのタイプは違っていますが、全く同じベース音になっているのです。
あえて「F」のコードを経由しないことで、ベース音のリピートが出来上がっています。
繰り返すことによって印象を強める工夫かもしれません。

記事の担当 侘美 秀俊/Hidetoshi Takumi

武蔵野音楽大学卒業、映画/ドラマのサウンドトラック制作を中心に、数多くの音楽書を執筆。
オーケストレーションや、管弦楽器のアンサンブル作品も多い。初心者にやさしい「リズム早見表」がSNSで話題に。

北海道作曲家協会 理事/日本作曲家協議会 会員/大阪音楽大学ミュージッククリエーション専攻 特任准教授。

近年では、テレビ東京系列ドラマ「捨ててよ、安達さん。」「シジュウカラ」の音楽を担当するなど多方面で活躍中。

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