主要三和音とその機能(ファンクション)①/音楽理論講座
コードの機能を理解して展開を作る
今回は、これまで学んできたメジャー・ダイアトニックコードを、どのように使えば”展開”が作れるのか、”ストーリー性”がある楽曲になるのかについて、さらに重要な知識に踏み込んでいきます。
まずはサンプルとして、以下の音源をお聴きください。
特定のキーのメジャーダイアトニックコードを何も考えずに並べてみましたが、なんだか落ち着かない感じがしますね。
これは、ダイアトニックコードの各コードに、”機能”=ファンクション(Function)があるためです。
機能を考慮せずにただ並べただけでは、同じところをぐるぐる回っているように聞こえたり、「起承転結」が不明瞭で聞きにくい展開になってしまうのです。
主要三和音の存在
今回は第一歩として、一番重要な3つのコード=主要三和音 (Primary chords)を押さえておきましょう。
まずは前回学んだ各スケールディグリーネームを思い出して下さい。
今回も簡単なKey=Cをサンプルとします。
この中に、
- Tonic(トニック)
- Subdominant(サブドミナント)
- Dominant(ドミナント)
という言葉が出てきましたね。
実はこの3つの言葉が、コード進行において非常に重要な意味を持ってきます。
そのことを念頭に置きながら先に進んでください。
次に、Cメジャースケールに音を積み重ね、Cメジャーのダイアトニックコードを作りましょう。
方法がわからない方は、過去の記事をご参照ください。
- 3和音
- 4和音
ここでも、「Tonic」「Subdominant」「Dominant」上に出来たコードに注目して下さい。
これらを、主要三和音(Primary chords)と呼びます。
また、これら3つには以下の機能(ファンクション)があり、それぞれの頭文字で略記されます。
名前はそのままですね。
- Tonic=トニック(コード) = T
- Subdominant =サブドミナント(コード)= SD(単に「S」と書くこともあります)
- Dominant = ドミナント(コード) = D
他のコードでもこれらのファンクションに近い機能を持つことがありますが、主要三和音(I、IV、V)の重要性は特に高いです。
その意味では、「真のT・SD・D」と呼んでもいいかもしれません。
詳細については次回以降で取り上げますが、今回はひとまず、主要三和音は、スケール上のI・IV・Vをルートとするコード(3和音、4和音)だけという事を押さえておきましょう。
キーによって変わるコードのファンクション
最後に、初心者の方がよく間違うポイントを挙げておきます。
それは、ファンクションはコードそのものにあるのではなく、コードが各キーのどの位置にあるか(スケールディグリーの数字)によって決まるということです。
前回と同じ画像で、「C」という音に注目してみましょう。
Cメジャースケールでは「C」は左から1番目です。
そこから作り上げたダイアトニック・コードを図で確認してみましょう。
「C」は一番左の「I」ですね。
つまり、トニック(主音)上に出来上がるのでトニック(コード)となります。
次に、Gメジャースケールでも見てみましょう。
Gメジャースケールでは「C」は4番目に位置します。
そこから作り上げたダイアトニック・コードはどうなっているでしょうか。
「C」は「IV」に位置するため、Gメジャースケールでの「C」はサブドミナント(コード)となります。
このように、同じコードであっても、キーによってそのコードのファンクションが変わるということですね。
まとめ
今回の記事のポイントは下記の通りです。
- ダイアトニックコードにはそれぞれ「機能(ファンクション)」があり、順序を考えずに並べると展開が見えにくくなる
- 主要三和音(トニック、サブドミナント、ドミナント)はコード進行において特に重要な役割を果たす
- 主要三和音は、スケール上のI、IV、Vをルートとするコード(3和音、4和音)である
- ファンクションはコード自体の特性ではなく、そのコードが特定のキーにおいてどの位置にあるか(スケールディグリー)によって決まる
今回はここまでとします。
少し予備知識的な内容が続いていますが、次回は実際に音で確認しながら、それぞれのファンクションの意味を掘り下げていきます。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。