ツーファイブ(II-V)と強進行/音楽理論講座
アボイド・ノートと共に学んでおきたい「ツー・ファイブ」
今回は、頻繁に使用される有名なコード進行である「ツー・ファイブ(II-V)」 について学んでおきましょう。
この内容は、コード進行のバリエーションを増やす上でも重要です。
また、IIm7のアボイド・ノートを理解するためにも必要な知識となるため、ここで押さえておきましょう。
IV (IVmaj7) の代理コードとなりうるIIm (IIm7)
これまで、メジャーダイアトニックコードの主要三和音のみで形成されたケーデンスを紹介してきましたが、楽曲で使用されるのはこれらのコードだけではありません。
第28回の講座で、「他のコードで主要三和音に近い機能を持つことができる」とお伝えしました。
主要三和音は他のコードで代用が可能です。
このような代用可能なコードを「代理コード」と呼びます。
代理コード全般については、今後の講座で実践的な使用方法とともに紹介していきますが、今回はサブドミナント(SD)である「IV (IVmaj7)」の代理コードとして「IIm(IIm7)」を使用するケースを取り上げます。
第31回で登場した、T→SD→D→Tのケーデンスをサンプルとします。
安定から次の展開があり、そして緊張感の後に、 戻って安心感を得るという代表的なケーデンスでしたね。
ここで、SDであるFをDm7に置き換えて聴いてみましょう。
全体の雰囲気はさほど変わっていないように思えますが、コードが変わっているため、Fの時とはまた一味違った感じが出ています。
これが「代理」と呼ばれる所以です。
ぜひ、他のケーデンスでも試してみてください。
この代理コードを使った流れを、ローマ数字表記で表すと以下のようになります。
青色で繋がっている部分が、メジャーキーの「ツー・ファイブ(II-V)」と呼ばれる進行です。
ツー・ファイブの重要性を裏付ける「強進行」
ではなぜこの流れが特別に「ツー・ファイブ」と呼ばれるのでしょうか?
別のサンプルを聴き比べてみましょう。
- Key=Cメジャー:IVmaj7→V7→I(Fmaj7→G7→C)
- Key=Cメジャー:IIm7→V7→I(Dm7→G7→C)
どちらもクライマックスに向かうような印象を受けますが、ルート音(根音)に注目して聴いてみると、後者の方がコード進行が力強いと感じられた方もいらっしゃると思います。
ここで、ルート音の動きに注目してみましょう。
これらのルートのインターバルは第6回の五度圏の際に出てきた左回りの流れです。
この左回りのインターバルは、P4th上(半音5つ分上)またはP5th下(半音7つ分下)という関係でした。
このように、コードのルート音がP4th上(半音5つ分上)またはP5th下(半音7つ分下)に進行することを「強進行」と言います。
古典的なコード進行で、多くのコード進行の中でも自然に進行しやすく、強い結びつきやストーリー性を得やすいという特徴があります。
以下の例は全て強進行で構成したものです。
- Em7→Am7→Dm7→G7→C
非常にわかりやすく自然な進行に感じますね。
こうして考えると、G7からCの流れも強進行です。
そのため、Dm7→G7→C(IIm7→V7→I)の流れは「II-V-I(ツー・ファイヴ・ワン)」とも呼ばれます。
このように、サブドミナントの代理コード”IIm(IIm7)”を用いて強進行を導入するツー・ファイブは、様々な楽曲で頻繁に使用されています。
もちろん、IV→Vの流れも良く使用されますので、楽曲を分析する際にはそれぞれの違いを感じ取ってみてください。
次回は今回の内容を踏まえ、アボイド・ノートの続きを解説していきますので、しっかり押さえておいて下さい。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。