「音楽業界への道標」第8回 こだまさおりさんインタビュー
作詞家 こだまさおりさんインタビュー
音楽業界への道標、第8回目となる今回はアニソン好きなら知らない人はいないというほど有名な、作詞家のこだまさおりさん(@codamasaori)にお話を伺ってきました。凄まじい曲数の歌詞を手がけているにも関わらず、どの作品にもとてつもない”愛情”を感じるこだまさおりさんの歌詞。一体どのように作品と向き合っているのか、そしてこれから作詞家を目指す方へのメッセージ等々今回も濃ゆい内容となっているので是非ご一読ください!
作詞家までの道のり
ーーーこだまさんはどのような経緯で作詞家になったのでしょうか?
こだまさおり(以下、こだま:)元々はシンガーソングライターとしてデビューしたのがきっかけで音楽業界へ入りました。その後徐々に作詞家としての活動を始めて…といった流れですね。
ーーーということは、元々はシンガーソングライターを目指していたのでしょうか?
こだま:オーディションで自分で作った曲を歌ったら曲のほうも評価していただいて。そのままデビューしたのですが、特に自分で作ることにこだわりがあったわけではなくて「歌いたい曲を歌いたい」という気持ちでした。
ーーーこだまさんは専門学校などは通われていたのでしょうか?
こだま:いえ、特にそういった学校は行っていないです。ただ小さい頃ピアノを習っていたこともあって、子供の頃から遊びで曲作りなどはしていました。ですからすごく自然な形で身近に音楽があったように思います。
ーーーこだまさんはどういったきっかけで作詞家として活動を始めたのでしょうか?
こだま:元々自分の曲で歌詞は書いていましたが、「提供する」というのはデビューした後からですね。同じ事務所で、「新人アーティストの曲の歌詞を書いてみないか」というお話をいただいたのがきっかけです。
ーーーそれが初提供だったんですね。
こだま:お仕事として誰かに作詞させていただいたのはそれが初めてです。「自分とは違う人のために歌詞を書く」ということがとても新鮮で、今まで使ったことの無い言葉が沢山溢れてきて、何かがパーっと開いた感覚がありました。
ーーーそこから少しづつ作詞のお仕事を手がけていったんですね。これまでにどのくらい書いてこられたのでしょうか?
こだま:どれくらいだろう…。(笑)JASRACに登録されているのは1000曲超えましたね。バージョン違いとかカウントするともっとあると思います。
ーーー凄まじい数ですね…。中でもこだまさんはアニソンを数多く手がけている印象です。
こだま:元々は友人の作曲家がコンペで提出している曲の仮歌詞を書いていたんです。それで「この作詞してる人って誰?」っていう風に興味を持ってもらい、そこから徐々にアニメ関連のお仕事をいただくようになりました。
ーーー地道な努力を重ねていったんですね。
こだま:そうですね。色んなジャンルの歌詞を1曲1曲書かせていただいていく中で少しずつお仕事が増えていきました。
ーーーコンペなどに参加していた頃は、シンガーとしての活動も行っていたのでしょうか?
こだま:いえ、していなかったです。「作詞家になる」と決めていましたので。
ーーーガラッと気持ちを切り替えたんですね。
こだま:初めて歌詞を提供した時に、「これかもしれない」っていう思いがあって、すごく自分の中でしっくりきたんです。
アニソンへの思い
ーーー僕はよくアニソンを好んで聴くのですが、作品毎に全く違った世界観の歌詞を書いていて毎回驚きます。
こだま:やっぱり作品に寄り添うことが大前提なので自然とそうなりますね。まずは原作やシナリオを読んで、その後まだ歌詞の入っていない曲を聴いて…という流れの中で、ピッタリくる言葉というのは大体決まってきます。私が「こうしてやろう!」と思うのではなく、ごく自然な流れで書いていますね。
アニメ「ブレンドS」オープニングテーマ ぼなぺてぃーと♡S/ブレンド・A
ーーー主題歌は勿論ですがキャラクターソングの歌詞でも、その作品やキャラクターに対する愛というか、リスペクトをとても感じます。
こだま:ありがとうございます。アニメ化するほどの作品ということは、やはりいろんな所に感動するポイントがありますから、そこを見つけて掘り下げていくようにしています。
またアニソンの歌詞に関しては、正解はありませんが「間違い」はあると思っていて。作品の世界観に合わない言葉や「このキャラ絶対こんなこと言わないよね」っていうセリフを入れないように、ファンや原作者の方が喜んでくださるような歌詞にすることを第一に考えています。
ーーー1曲につきどのくらい時間をかけて書いているのでしょうか?
こだま:作品によってまちまちですね。シナリオがまだ無い場合もあるので、その時は監督やプロデューサーの方の意見を汲み取りながら書いたりと色んなケースがあります。
ーーー多くの歌詞を手がけていく中で行き詰まることはありますか?
こだま:悩まないって決めてるんです。曲や作品が先にあるので、それに寄り添って考えていく中で自然と答えが出てきます。
ーーーこだまさんは多彩な言葉で作品の世界観を表現していますが、どのようにボキャブラリーを増やしているのでしょうか?
こだま:小さい頃から本は好きでしたね。普段は「言葉を吸収しよう」と意識しているわけではなくて、フラットに作品を楽しみながら読んでいるように思います。仕事の場合は多少スイッチ入っているかな…。でも、まずは楽しく読ませていただいていますね。
ーーーちなみに好きな作家さんはいますか?
こだま:うーんたくさんいますけど…。私が主な楽曲の作詞を担当した「氷菓」という作品があるのですが、原作者の米澤穂信先生の小説は元々好きで読んでいたので、主題歌のお話が来た時はすごく嬉しかったです。
アニメ「氷菓」オープニングテーマ 優しさの理由/ChouCho
ーーー普段作詞をする際、例えばサビから順番に書いて…等々自分の中でルールを決めたりはされていますか?
こだま:特にそういったものはないですね。よく聞かれるのですが、曲のタイトルを決めるタイミングもバラバラです。
ーーーあまり自分の中に縛りを設けないようにしているということでしょうか。
こだま:そうですね。書く場所や道具にこだわっていた時期もあったのですが、そんなことを言っていられないという理由もあり(笑)、今ではそういった環境はあまり気にしていません。いつでも書けるようにしています。
ーーー本当に道具も場所も問わず、なんですね。
こだま:道具や場所が無いことを言い訳にしたくないんです。
ーーースケジュール管理はどうされていますか?
こだま:そこは本当にアナログで、紙とペンでやっています。「これが終わったら丸をつけて、これの締切は何日までで…」といった感じです。
これから作詞家を目指す方に向けて
ーーー作詞家の方々は、そもそもどのような道を辿って登りつめていくのでしょうか?
こだま:私の場合は昔からノートに詩を書いていて…といった風ではなく「歌を作りたい」という思いからでしたが、人によって違うので難しいですね。もちろん元々作詞家志望だった方もいらっしゃいますし、曲も書くし歌詞も書くという方も多いです。
仮歌シンガーの方が歌詞も手がけていてそれをきっかけに、というパターンもありますね。
ーーーやはりマルチに色々と出来た方が有利ということなんでしょうか。
こだま:その方が多くの人と出会えますし、自分を知ってもらえるきっかけは増えると思います。
ーーー作詞家を目指すにあたり、普段から心がけておいたほうがいいことはありますか?
こだま:とにかくたくさん書いて、たくさん完成させてみるのがいいのではないでしょうか。作りかけのものばかりあってもしょうがないので、途中で「違うかな?」と思ってもまずは一度完成させてみるのがオススメです。
ーーー作曲家の白戸佑輔さんも、以前のインタビューで同じことを仰っていました。
こだま:私は仕事でやっているので途中で投げ出すことは勿論ありませんが、そうやってたくさん書いていく中で技術的なことだけじゃなく基礎体力があがった気がしますね。やっぱり「継続が大切」という言葉は本当だなと思います。
ーーー続ける努力と、続ける場所を探す努力が必要なんですね。
こだま:作詞は歌ってくれる方がいてはじめて成り立つものなので。自分が活動出来る場所を模索しながら経験を積んでいけるといいですよね。
ーーーありがとうございました。
記事作成者
取材・執筆:momo (田之上護/Tanoue Mamoru)
1995年生まれ。Digital Performerユーザー。音楽学校を卒業後作曲家として福岡から上京。
2017年8月ツキクラ「STARDUST」に作・編曲で参加し作家デビュー。
「心に刺さる歌」をモットーに、作詞作曲・編曲からレコーディングまで全てをこなすマルチプレーヤー。
アートユニット「Shiro」の作編曲担当としても活動中。
TwitterID :@momo_tanoue
「Shiro」 Website : https://www.shiro.space/
「Shiro」 TwitterID :@shiro_unit