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「音楽業界への道標」 第15回 Routesさんインタビュー

VJ・映像作家 Routesさんインタビュー

Routesprofile
Routes|profile
1973年生まれ。本業の映像制作におけるストーリーテリングの感覚を取り入れたVJプレイスタイルが信条。1999年ニューヨークにて各国の映像作家と”WayWest Productions”を設立。フィルム、デジタル等フォーマットを問わず映像クリエイター・舞台演出家として活動。
国内外で監督作が上映され、フィルムとデジタルシネマの特集選「キネマトロニカ・コレクション」を主催する。
2011年末よりVJ活動開始。アニメ公式イベントやロックフェス等でプレイする他、コンサートの映像制作やドキュメンタリー、ミュージックビデオ等の制作も行っている。

音楽業界への道標、第15回目となる今回はライブハウスから幕張メッセまで、様々な会場でVJとして活躍するRoutes(ルーツ)さんにインタビューを行いました!
「映像×音楽」が盛り上がりを見せる今、音楽クリエイターとはまた一味違った視点でのお話を沢山お伺いすることが出来ましたので、ぜひご一読くださいませ。

RoutesさんとVJ

ーーお忙しい中取材をさせていただきありがとうございます。Routesさんは様々なイベントでVJを手がけていらっしゃるとのことですが、そもそもVJとはどういったものなのでしょうか?

VJとは「ビデオジョッキー」の略称で、音楽に合わせて映像を制作したり流したりする方々を指します。
イベントによって、カッチリと完成された映像を納品することもあれば、DJの流す音楽に対しその場で臨機応変に映像を制作することもあります。

ーーRoutesさんがVJに携わるようになったのには、どんなきっかけがあったのでしょうか?

元々映像制作を主軸に活動していたのですが、知り合いのバンドマンの方からアニソンクラブイベントを教えてもらったことをきっかけにVJの世界に入りました。

ーーバンドの方から、というのは面白いですね。

そういったイベントに何度か遊びに行くうちに、とあるイベントで「VJをやってみませんか」というお誘いをいただきまして。実際にやってみると、元々アニメが好きだったこともあり、映画制作とはまた違った面白さを感じました。
当時出会った先輩VJのKITUNEさんとは、今もよくコンビを組んで一緒に仕事をしています。

ーーでははじめからVJを目指していたという訳ではなかったんですね。

はい。元々は映画業界に入りたくて、1994年に渡米しコロラドフォートルイス大学に入学したんです。そこで脚本や演劇を学び、ニューヨーク・フィルム・アカデミーへ進学しました。

ーー海外で映像制作を学んだのですね。Routesさんは東京出身とのことですが、かなり勇気のいる決断だったのではないでしょうか?

そうですね。そうですね。ただ子供のときからアメリカの映画を好んで観ていて、その中でもニューヨークの作家さんが手がけたのものが特に好きだったんですよ。
実際に行ってみて、やっぱりニューヨークの街はクリエイティブな人を刺激するような空間だったので、街にいるだけで楽しかったです。

ただもし、好きな作家さんが東京の方ばかりだったら渡米することもなかったと思いますけどね。

ーー自身の”好き”を追いかけた結果ということですね。

ニューヨーク・フィルム・アカデミーでは30代40代の年上、しかも様々な国籍の方々と共に学び、ありがたいことに現地の国際映画祭で賞もいただきました。

ーーその後日本に戻り、VJとして今やライブハウスから幕張メッセまで様々な現場でご活躍されているRoutesさんですが、月にどれくらいイベントを担当されているのでしょうか?

クラブのイベントも合わせると月10本くらいでしょうか。その他の日は自宅で映像制作をしていることが多いです。
ポニーキャニオンさんやバンダイナムコアミューズメントさん、エイベックス・エンタテインメントさんなど様々なアニメ関係のイベントでお仕事をさせていただいています。

ーーRoutesさんから見て、以前と比べアニソンはどのように変わってきていますか?

アニメの枠を飛び越えたジャンルになってきていると感じていて、映像とセットで楽しめるのはもちろん、曲だけを聴くことでも新たな側面が見えたりと、色々な角度から楽しめるようになってきていると思います。
そのため映像を制作する際も、アニメ映像を繋ぎ合せたものの他に、モーショングラフィック等で「曲単体として聴いた時にどのようなイメージが沸くか」という部分に重きを置いてイメージ映像を制作する場合もあります。

内田真礼 2nd LIVE 「Smiling Spiral」ダイジェストPV

(VJ担当)

VJがやっていること・考えていること

ーーイベントでVJをするにあたり、気をつけていることなどはありますか?

「”何が””誰が”主役なのか」は常に意識しています。
自分の映画であれば話は別ですが、例えばアーティストのイベントならやっぱりその”本人”が主役じゃないですか。
映像が悪目立ちしちゃったり照明との兼ね合いが悪い場合は、当日完成された映像を手直しすることもあります。

ーーそうなんですね。ステージ映像を製作する場合はどうやって作っていくのでしょうか?

プロデューサーさんやA&Rさんなどと話し合いながら全体のイメージ・方向性を決めます。その後はお任せしてくれるケースが多いので、歌詞の内容などをふまえながら製作していきます。

ーーVJとは少し離れてしまいますが、MV製作の場合も同様にして作っていくのでしょうか?

やはりこちらも、本人も意向も含めどういった方向性にするのかを徹底的に話し合います。
映像がつくことで、良くも悪くもその音楽のイメージってある程度固まってしまうんですよ。だからより慎重になりますし、ライブ映像を使ってシンプルに伝える場合や、敢えて抽象的なイメージで映像を製作する場合など様々ですね。

先日声優の山村響さんのMVを監督させて頂きましたが、「アーティスト活動を含めた山村さんの様々な側面を表現したい」「仕事と日常の狭間を表現したい」というテーマのもとで、様々なシチュエーションを取り込んで色々工夫を凝らして作らせて頂きました。

「Love Magic ~素直になれないアタシが最高に可愛くなれる魔法~ 」 MV

ーーRoutesさんは様々なお仕事を担当されていますが、自身が思う強みはどこにあると思いますか?

おそらく、僕より映像制作が上手な方はたくさんいらっしゃると思うんです。その中でお仕事をいただくことが出来ているのは、「自分の特徴」をしっかり把握するようにしているからだと思います。
僕の場合は素材を生かしつつ、広い視野で考えながら映像を制作していく”構成力”が強みなのですが、実際のお仕事でもそういった部分を評価していただいています。
自分の得意分野をしっかり見極め、それを伸ばして武器に変えていくことで、自分の魅力をより多くの方に知っていただけるのではないでしょうか。

自分を上手く騙す

ーーRoutesさんは映画の世界からVJの世界へ転換することに、抵抗などはなかったのでしょうか?

日本の映画業界や、映像表現そのものがめまぐるしく変化し多様化していく中で、新たな表現技法としてVJという仕事に出会いました。
そのおかげで今まで考えつかなかった表現にチャレンジする機会が増えましたし、映画を勉強して培ってきたものを自分の中で上手く生かすことが出来たんです。

ーー新たな刺激というか、発見があったんですね。

第一線で活躍されている方は皆さん仰っていますが、やっぱり一番大事なのは続けることで、もっと言えば「続けられるように自分をコントロールすること」なんです。
映画で言えば撮影時にカチンコ(下画像参照)を使ったり、出来るだけいい機材を購入するなど、形から入って自分を上手く騙すことも手段の一つだと思います。
あとは、先ほどニューヨークで賞をいただいたお話をしましたが、これも”ニューヨーク”と聞くだけでなんだか凄そうに感じますよね。実際どのくらい凄いのかはさておき、やっぱりそれが自分にとっての成功体験になりますし、対外的にもインパクトがあって有効だったりするんです。

こういった”続けるため”の考え方は、映像でも音楽でも、クリエイティブな作業をする方は共通ではないでしょうか。

kachinko

ーー自分をコントロールすることは難しいですが、だからこそそれが重要なんですね。

それを上手く出来ている方が、実際に今活躍している方々なんだと思います。成功はひとつの通過点でしかないので、「どうやってそれをキープするか」に重点を置くと良いと思います。

ーーRoutesさんは長く映像製作に携わっていますが、その他に「続けるためのコツ」はありますか?

常に刺激を受けるようにしています。自分が活動をしている分野で優れているものは常にチェックするようにしていますし、映画や音楽も積極的に観たり聴いたりするようにしています。
また自分のやっていることだけでなく、幅広くいろんな分野の知識を吸収するよう心がけることも大事ですね。思わぬところでその経験が生かされることもありますから。

ーーインプットを大事にしているんですね。

僕の知り合いの映像作家の方が「年間300本以上映画を観ていないと映画を語る資格はない」と仰っていたのは納得というか、共感しましたね。
実際にその本数を観ろ!というより「そのくらいの心意気で観るようにしろ」ということだと思うのですが、やはりインプットとアウトプットを繰り返していくことが一番なんだと思います。

「表現をする」ということは「人に何かしらのインパクトを与える」ということであって、だからこそ僕らは常に、自分を驚かせてくれる何かを積極的に取り入れていくべきなのではないでしょうか。

VJをやってみたい方へ向けて

ーー本記事を読んでいる方の多くは音楽制作に携わる方ですが、もし「VJをやってみたい!」という方がいたとしたら、まず何から始めるべきでしょうか?

まずは実際のイベントに足を運んでみるのが一番だと思います。そこでDJやVJの方に話しかけてみるのがいいのではないでしょうか。
VJって人数が少なくて常に不足している場合が多いので、歓迎されると思いますよ。みんなすごく優しくしてくれるはずです。(笑)

ーー機材としては、何から揃えるのがお勧めですか?

まずはなるだけスペックの高いPCですね。映像製作はどうしても負荷がかかりやすいので…。

使用ソフトについてですが、作り込んだ映像を音にピッタリ合わせる場合はVIRTUAL DJ
映像素材をリアルタイムでミックスしていく場合はResolumeVDMXを使用している方が多いと思います。
僕はVJではGrandVJ、映像製作の場合はadobeのAfter EffectsPremiereで行なっています。

ーーありがとうございます。それでは最後に、Routesさんのこれからの目標をお伺いしてよろしいでしょうか。

「音楽×映像」っていうのがどんどん当たり前になってきているので、”2つ”を組み合わせてどこまで”1つ”のいいものにすることが出来るかを追求していきたいです。
あとはVJという職業が、もっともっと色んな方にとって身近なものになるよう活動していけたらと思っています。

ーーありがとうございました。

取材・執筆:momo (田之上護/Tanoue Mamoru)

tanoue
profile:1995年生まれ。Digital Performer・Ableton liveユーザー。音楽学校を卒業後作曲家として福岡から上京。
2017年8月ツキクラ「STARDUST」に作・編曲で参加し作家デビュー。
「心に刺さる歌」をモットーに、作詞作曲・編曲からレコーディングまで全てをこなすマルチプレーヤー。
アートユニット「Shiro」の作編曲担当としても活動中。

TwitterID : @momo_tanoue
Shiro : Youtubeチャンネル