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「音楽業界への道標」第11回 前迫潤哉さんインタビュー

音楽業界への道標、第11回目となる今回はシンガーソングライターの前迫潤哉(まえさこ じゅんや)さんにお話を伺ってきました。トップライナーとして、様々な作曲家とコーライトし数々の名曲を生み出してきた前迫さん。先日ミリオンを突破した欅坂46の「ガラスを割れ!」は聴いたことがある方も多いと思います。
今回も色々と貴重なお話しが聞けましたのでぜひご一読ください!

前迫潤哉|profile

junya-maesako
鹿児島出身。
教員養成の大学を卒業するも、シンガーへの夢に挑戦したいという気持ちから上京。
曲作りをするときはそのアーティストの気持ちになりきって作ることを心がけている。
歌声の評価も高く、今井 了介氏主催の全国規模のボーカルオーディションではグランプリを受賞。テレビ朝日「ピラミッドダービー」では森山直太朗のさくら独唱を本人になりきり見事スタジオゲストを騙してみせた。

ーーではまず、現在前迫さんが担当されている仕事内容からお伺いしてよろしいでしょうか?

現在はトップライナーとして、様々な作曲家とタッグを組みメロディーを作ることが多いです。また作詞もしますし、元々シンガーということもあって、アーティストの仮歌やボーカルディレクションを担当することも増えてきました。

ーー作曲に関してはいわゆるコーライトによって制作することが大半ということですが、前迫さんの代表曲とも言える欅坂46の6th Single「ガラスを割れ!」も共作だったのでしょうか?

はい。Yasutaka.Ishioさんと共同制作させていただきました。

ーーコーライトでは様々な制作方法がありますが、前迫さんの場合はどういった順序で曲を作っていくのでしょうか?

「ガラスを割れ!」を例に挙げると、まずIshioさんがある程度完成させたトラックを持ってきてくれたので、そこにメロディーをつけていきます。あとはイメージを擦り合わせつつ、ブラッシュアップしながら完成まで持っていくという流れですね。

もちろん人によってはコードから一緒に考えるケースもありますし、相手がやりやすい方法になるべく合わせるようにしています。


(欅坂46「ガラスを割れ!」MV。前迫さんとIshioさんの共作。)

共同制作をする上で大切なこと

ーー前迫さんは今まで何人くらいの方とコーライトしてきたのでしょうか?

正確な人数は分かりませんが、30~40人くらいでしょうか。今は10人前後の作曲家やトラックメーカーと共同制作しています。

ーー沢山の方と制作をする上で、前迫さんが特に気を付けていることはありますか?

なるべく同じイメージ、方向性を同じにして、ゴール地点を明確にするようにしています。「誰にどんなアプローチで制作するのか」という、考え方を同じにすることはとても大事ですね。そういった意味合いで、僕の場合は文字だけでなく直接電話でやりとりすることが多いです。
よく「コーライトは同じメンバーでしない方がいい」という意見も見かけますが、僕はそんなことはないと思っていて。
何度も同じ人と制作することでよりシンクロ率が上がり、「コード的にはこっちだけど、メロディーの流れとしてはこっちに行きたい…」みたいなズレを無くしていくことで息の長い曲が生まれるんじゃないかなと思っています。

ーー初対面だとなかなかお互いのことも分からないことも多いですよね。

もちろん最初からシンクロすることもあるので一概には言えませんけどね。お互いをリスペクトし合える関係であれば、修正をお願いしたい時もスムーズだと思うんです。「こういう意図があってこうしてほしい」「じゃあこういうのはどうだろう」と言い合える関係だと良いですね。

ーー逆に前迫さんが「こんな人と一緒に制作したい」と思う条件はなんでしょうか?

技術的な面で言えば、やっぱり出音がいいトラックを作れる方だと嬉しいですね。メロディーを考える時はその作品の中に潜って制作していくので、ミックスが整っていたり完成系がある程度見える状態だと世界観に入り込みやすいです。

ーーー前迫さんが考える、コーライトをする上で最も大事なことはなんでしょうか?

労力を1/2にするのではなく、各々が汗をかいて100%の力で頑張る。これが最終的に2倍の以上の力を生むことがコーライトの醍醐味だと思います。手を抜くためや、自分に足りない部分を任せちゃおうっていう意識で取り組んでいると、やっぱりいい曲は生まれないと思うので。

あとはディレクター目線というか、第三者的な目線を持つことも必要ですね。曲にのめり込んでしまうと頭でっかちになってしまい、ついつい正解が分からなくなってしまいます。だから一歩引いて、「本当にこれでいいのかな」と冷静に考えられる人がいるとより良い作品が生まれるのではないでしょうか。

ソングライターへの道のり

ーー前迫さんはいつから音楽業界を目指していたのでしょうか?

中学生の頃ケミストリーの楽曲を歌ってカセットに録音し、それを流しながら自分でハモったりして遊んでいたのですが、その頃からシンガーとして音楽業界に入りたいなと思っていました。
ただ地方に住んでいたこともあり、「音楽業界=オーディションで優勝する」以外の方法を知らなかったんです。
だからシンガーになれたらいいなと思いつつ、「小学校の教師になる」という現実的な夢も持っていました。

ーー僕も地方出身なのでお気持ちはよく分かります。音楽業界への道はとてつもなく狭く感じますよね。

特に高校の受験シーズンとかになると、夢か現実かを選択しなくちゃいけなくなりますよね。僕の場合は教師の夢を選択し、鹿児島を出て山梨の大学へ進学しました。

ーーでは一旦教師への道を進み始めたんですね。

そうですね。ただ大学に入ってからもカラオケ大会に出場する程度でしたが、歌はずっと続けていました。

それで大学3年の頃、たまたま後輩にトラックメーカーがいて、「自分のトラックのサビにメロディーと歌詞をつけてほしい」っていう依頼があったんです。それが作曲を始めたきっかけですね。

ーートラックメーカーとの出会いは運命を感じますね。

まだコーライトという言葉が日本に無かった時代から始めていたということですからね。(笑)
その彼と何曲か作っていき、大学3年生の後期には「上京して本格的に音楽活動をしたい」と思うようになっていました。
大学卒業後は東京でアルバイトをしつつ、mixiなどでライブイベントを見つけては出演する…という日々でした。

ーー皆通る道ではありますが、やっぱりアルバイトと音楽活動を両立するのは大変ですよね。

シンガーとして3年くらい活動していたのですが、このままじゃダメだと思って。バイトも全部辞めて、1ヶ月集中して10曲作り、フリーアルバムをリリースしました。その頃から自分の中でいい流れが出来たんです。
曲もコンスタンスに作りつつ、ボーカルオーディションでグランプリを獲ることが出来たり。

そんな頃に、知り合いのトラックメーカーから仮歌の依頼が来て、メロディーも僕がつけることになったんです。
そしたらその曲を、トラックメーカーの方が所属していた事務所の社長が気に入ってくれて。そこから本格的に作曲家としての活動が始まりました。

制作で心がけていること

ーー前迫さんはメロディーを作る際「その世界に潜る」と仰っていましたが、行き詰ったときの対策などはありますか?

色々とやり方はありますが、時間がある時は1日寝かせるのが効果的ですね。一旦別のプロジェクトを動かして、次の日に取り組むことでフレッシュに考えることができます。
あとは「一度ぶっ壊してみる」のも大事ですね。自分の中でこだわりをあまり持たないようにしています。
自分の思うカッコいいと、提供先のアーティストやディレクターの考えるカッコいいは必ずしも同じではありませんから。

ーークリエーターならではの考え方ですよね。

職業作曲家はカメレオンになれるほうがいいと思っています。その点では僕は結構向いているのかもしれません。モノマネとか得意ですし。(笑)

ーー先ほども仰っていた、一歩引いて考えることがこだわりを捨てる第一歩かもしれませんね。

理論に縛られず、もっと感覚的に音楽を捉えると分かりやすいかもしれません。”色”や”感情”で例えてみたりとか。リスナーは「ここのコード進行最高!」っていう風ではなく「なんかグッとくる」みたいに、感覚で音楽を聴いている方がほとんどですから。


(Flower「瞳の奥の銀河(ミルキーウェイ)」MV。前迫さん・RUSH EYEさん・Hitoshi Harukawaさんの共作。)

バイトを”仕事”と呼ばないこと。

ーー今や音楽業界の第一線で活躍する前迫さんですが、この世界で最も必要とされるスキルはなんでしょうか?

コミュニケーション能力等の人間力ですね。これはコーライトでも言えることですし、どの業界でも共通だと思います。
音楽業界って、実は普通の会社以上に会社っぽいというか。礼儀や言葉遣い、連絡が早いとか締切をちゃんと守るとか、そういった信頼関係の上に成り立っている仕事ですからね。
僕は大学で心理学を勉強したことや、東京で沢山のアルバイトをする中で経験したことが意外に役立つことが多いです。

ーー音楽的な技術はもちろんとして、色々と社会経験をすることが意外と重要なんですね。

そういった意味では上京してよかったと思っています。地方よりいろんな種類の仕事がありますし、沢山の方と出会えますからね。

ーーアルバイトと掛け持ちで音楽活動が苦しいと感じる方も多いと思います。乗り越えるコツはなんでしょうか?

アルバイトを”仕事”と呼び始めたら危険信号です。「次の日仕事があるからもう寝よう」とか、「仕事が休みだからのんびりしよう」とか思っちゃうじゃないですか。
でもアルバイトって、あくまで音楽活動をするためにやっている”手段”のはずですよね?だからどんなに稼げていなくとも、音楽が主軸でありそれが”仕事”なんです。
自分の中でそう言い聞かせることはとても大事ですね。

ーーこれから音楽業界を目指す方へ向けて、どんな活動が有効的だと思いますか?

今はSNSも普及しているのでやり方は様々だと思います。その上で、まずは小さな場所でもいいから活動する場所を確保することですね。
例えアリーナ級のアーティストを目指していても、一つ一つ石段を積み上げて登っていくしかないですよね。ライブハウスでもYouTubeでもいいから、まずは行動してみる。どうせ完璧なんていつまで経っても辿りつけないから、今の自分でできる事を精一杯やって人に見せることが大事だと思います。思うだけでは実現しないですから。

あとは先ほども話しましたが、いろんな社会経験をした方がいいと思います。自分の知らない世界へと踏み出せば、意外と音楽に役立つことも多いです。
僕は色んな仕事や活動をしていることで、「なにがしたいのか分からない」と言われることがあります。
でも僕の原点は、「人を感動させたい」という理由だけで、全ての行動はそれに基づくものなんですよ。

例え周りから理解されなかったとしても、自分の中にある1本の軸さえブレずに行動していけば、きっとチャンスは巡ってくるはずですよ。

ーーありがとうございました。

前迫潤哉公式HPはこちら

記事作成者

tanoue
取材・執筆:momo (田之上護/Tanoue Mamoru)

1995年生まれ。Digital Performer・Ableton liveユーザー。音楽学校を卒業後作曲家として福岡から上京。
2017年8月ツキクラ「STARDUST」に作・編曲で参加し作家デビュー。
「心に刺さる歌」をモットーに、作詞作曲・編曲からレコーディングまで全てをこなすマルチプレーヤー。
アートユニット「Shiro」の作編曲担当としても活動中。

TwitterID : @momo_tanoue
Shiro : Youtubeチャンネル