ミックスが上手くなるTIPS Neutron+Waves シグネチャーシリーズで速攻ドラムミックス
基本処理+αで「使える音」をあっという間に
今回のTIPSは、Wavesのシグネチャーシリーズの活用法ということで、中でもドラムに特化したプラグインに焦点を当てていきたいと思います。
トラックの基本的な処理としては、イコライザーやコンプレッサーなどが挙げられますが、それらだけをやっても何となく思い描いたサウンドにならない、ということはないでしょうか?
もちろん基本処理はしっかりとやっておく必要があるのですが、それにプラスして、トップエンジニアの秘密のエッセンスを加えることができるのが、シグネチャーシリーズの特徴です。
Neutron+Wavesシグネチャーシリーズ 動画
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・iZotope Neutron 3 Standard
・Signature Series Bass and Drums
Neutronによる基礎処理
今回は、基本処理としてiZotopeのNeutron 3を使用していきたいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、Mix Assistant機能により、AIがある程度自動的にEQやコンプなどの基本処理を行ってくれるという画期的なミックスツールです。
初心者の方にとっては心強い指針になってくれますし、上級者の方にとっては圧倒的な時短ツールとして非常に有用ですね。
まずは、何も処理を行っていない、素のサンプルをお聞きください。
これにNeutron 3を使用して、どのように変わるか検証してみましょう。
簡単にMix Assistantの使い方をお見せしておきます。
適用したいトラックにNeutron 3をインサートします。そして、中央上のMix Assistantボタンをクリックします。
Track EnhanceとBalanceを選択する画面となりますが、今回はEQやコンプなどのトラック処理を行いたいので、Track Enhanceを選択します。
Instrumentで適用する楽器の種別を選択します。そしてStyleで処理の方向性、Intensityでその強さを選択します。
再生待機状態となりますので、再生します。Assistantによる分析、処理が開始され、終了すると、下にAcceptボタンが表示されます。結果がOKならクリックして終了です。
Mix AssistantのTrack Enhanceを全トラックに行い、若干の微調整を加えてみました。
明瞭感、迫力ともに増していますね。ここまでほぼ自動で出来てしまうのもすごいことです。
CLA Drumsによるキック処理
さてここから、ドラムにWavesのシグネチャーシリーズを適用して、更にロックらしい色気を出していきましょう。
まずはキックから。ひとまずクリス・ロード・アルジ氏のシグネチャーモデル、CLA Drumsをインサートしています。シグネチャーシリーズは特にプリセットが秀逸ですから、プリセットからマッチするものを探してみましょう。
今回の曲では、Rock1がマッチするように思いました。少々大げさですが、この位大胆な設定もアリという学びにもなります。
各パラメーターについても見てみましょう。
- ①MODE:ドラムの中でもどのパーツに適用するのかを選択します。
- ②INPUT SENS:このランプが黄色に点灯するくらいがプリセットで想定されている音量だと考えてください。もし緑だったら若干上げて、赤だったら下げましょう。極端な音量変化を伴った場合、OUTPUTで調整します。もちろんこれは目安ですから、わざと外して独自の音作りをしてもOKです。
- ③COLOR:イコライザーやコンプレッサー、リバーブ、ゲートなどでドラムのキャラクターに色付けを行います。
今回はほんの少しTREBLEを抑え、BASSを上げるといい感じになりました。
ミックス全体の中でのサウンドを確認してみましょう。
▶︎CLA Drums Rock 1プリセットを微調整したもの
JJP Drumsによるキック処理
キックでもう一つ試してみましょう。
ジャック・ジョセフ・プイグ氏のシグネチャーモデル、JJP Drumsです。
こちらのプリセットは非常に個性豊かなサウンドが取り揃えられています。
王道のロックやポップだけでなく、エレクトロやダンス系にもマッチしそうです。特にアタックを利かせてがっつりゲートをかけた「TEDDY MOOG 808」あたりは、不思議なくらいに生感が消えています。とにかく前に出したいメタル系などにも良さそうですね。
今回の曲にはKU KICKをチョイスし、パラメーターで微調整を行いたいと思います。
- ①MODE:ドラムの中でもどのパーツに適用するのかを選択します。
- ②SENS:CLAと同様、インプットの音量を適切に調整します。
- ③MAIN SECTION:ゲート、コンプ、EQの調整を行います。
- ④CENTER SECTION:トランジェントやリバーブなどでドラムのキャラクターに色付けを行います。
ソースの影響か、少しブーミーに感じたため、SUBやAttitudeなどを調整しました。
SENSは黄色から赤くらいを狙ってみました。
ミックス全体の中でのサウンドを確認してみましょう。
▶︎JJP Drums KU KICK プリセットを微調整したもの
Maserati DRMによるスネア処理
続いてスネアに移ります。
今度はトニー・マセラティ氏のシグネチャーモデル、Maserati DRMを使用してみます。
こちらもパーツごとに豊富なプリセットがありますので、スネアのプリセットを試してみましょう。
正攻法的なアプローチから、ひねりの効いたサウンドまで様々ですね。特にSnare Like 909や80s Snare Drumあたりは、原型を留めないくらい変わっていますが、中々通常のプラグインの組み合わせでは思いつかないアイデアですね。
さて今回のチョイスとしては、オーソドックスなYN Snare Drum 2を使おうと思いますが、少しパラメーターも微調整してみましょう。
- ①TYPE:ドラムの中でもどのパーツに適用するのかを選択します。
- ②SENSITIVIY:CLA、JJPと同様、インプットの音量を適切に調整します。
- ③THUMP/SNAP/TREBLE:THUMPで低域、SNAPでトランジェント、TREBLEで高域を調整します。
SNAPとTREBLEを若干上げ、SENSとOUTPUTを調整して仕上げました。
ミックス全体の中でのサウンドを確認してみましょう。
▶︎Maserati DRM YN Snare Drum 2 プリセットを微調整したもの
Eddie Kramer Drum Channelによるスネア処理
スネアに対してももう一つ、試してみます。
以前の動画でもご紹介した、エディ・クレイマー氏のシグネチャーモデル、Eddie Kramer Drum Channelです。
こちらはシグネチャーシリーズの中でも最もシンプルで、プリセットはなく、パーツを選択したらまずモデルとなるセッティングが施されます。ここから、各パラメーターを微調整する感じです。
- ①CONTROLS:ドラムの中でもどのパーツに適用するのかを選択します。
- ②SENSITIVIY:CLA、JJP、Maseratiと同様、インプットの音量を適切に調整します。
- ③COMPRESS/GATE/EQ:その名の通りコンプやEQなどで音質を調整します。
- ④FX:エフェクトの効き具合を調整します。
ややエフェクトの効きをおさえつつも、しっかりコンプを利かせてパンチを出してみました。
ミックス全体の中でのサウンドを確認してみましょう。
▶︎Edie Kramer Drum Channel SNRを微調整したもの
ドラム全体処理後との比較
キックにはJJP Drum、スネアにはMaserati DRM、ハイハットにはEddie Cramer Drum Channel、タムとルームにはCLA Drums、オーバヘッドにはMaserati DRMを適用し、プリセットから微調整して仕上げました。
これらシグネチャーシリーズのプラグインをバイパスした状態と、改めて比べてみましょう。
▶︎シグネチャーシリーズ適用前
▶︎シグネチャーシリーズ適用後
いかがでしょうか?
Neutronの基本処理に対して、Waves シグネチャーシリーズでもう一歩踏み込んだ色付けが出来ましたね。見事に補完し合う関係だと思います。
何度も言っていますが、このコンビネーションの最大のメリットはスピードです。動画では説明しながらなのでゆっくりに見えますが、実際に黙って作業するとあっという間に出来てしまいます。
ああでもないこうでもないと迷路に迷い込むことがほとんどありません。必要なのは、こういう音が欲しい、という明確なイメージだけです。それさえあれば、プリセット選びも、微調整もスムーズに進むでしょう。
強いて言うなら、これらを使う前にミックスの基礎知識は持っておいたほうがいいかもしれません。パラメーターの意味がわかると、何が起きているか、どこを調整すべきか、よりスピーディーに判断できると思います。
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・Signature Series Bass and Drums
ミックスが上手くなるTIPS#10
iZotope Neutron 3 + Waves シグネチャーシリーズで速攻ドラムミックスこのコンビネーションの最大のメリットはスピード。
必要なのは「こういう音が欲しい」という明確なイメージだけです。🎥YouTube:https://t.co/kN02DgmP4M
📝記事:https://t.co/hRb0Xro1DP pic.twitter.com/ZLqV9QRwCx
— SLEEP FREAKS (@SLEEPFREAKS_DTM) April 25, 2020