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2023年AIが音楽制作でできること | AIプラグインでDTMはどこまで便利になる? 注目の最新ツールもまとめて紹介!

2023年 DTMで活用できるAIツールの紹介

近年何かと話題のAIですが、DTMプラグインでも多くの製品がリリースされ、音楽制作のアシストや作業の効率化を高めてくれるものも多くみられるようになりました。
ここでは、AIが組み込まれている製品の中で、有用と感じたものや、現時点では改善の余地があるものの革新的なコンセプトを持つものをピックアップしてご紹介していきます。

2023年AIが音楽制作でできること 注目の最新ツールもまとめて紹介!

AIを活用したトラックの視聴

今回は私宮川と、弊社講師の岡本の2名が様々な製品に触れてみて、気に入ったものを使用しながら実際に楽曲制作を行いました。
どちらもアイディア出しの段階から、可能な限りAIに頼る形でトラックを作るというコンセプトの元に出来上がったトラックです。

宮川 智希のトラック

制作の中でAIを利用したポイントは

  • ベースライン、アルペジオ、カウンターメロディの演奏内容をAIで生成
  • メロディラインをAIで生成
  • ドラムパターンのバリエーションをAIで生成
  • EQによるマスキング処理をAIで行わせる

このように演奏内容の生成を中心にAIを活用しています。

岡本 剛のトラック

制作の中でAIを利用したポイントは

  • コード進行、リズムトラックのアイディアでAIを使用
  • 途中まで作成したメロディの続きをAIで生成
  • シンセの音色をAIで生成
  • ギターで演奏したオーディオをAIで別音色に変換
  • ミキシング・マスタリングの下処理でAIを使用

フレーズの生成よりも、アイディア出しや音色の生成を中心にAIを活用しています。

MIDIフレーズを提案する製品

ここからは、宮川、岡本の両者が使用した製品をタイプ別にそれぞれご紹介していきます。

Mixed In Key – Pilot Plugin

宮川が制作したトラックの大部分を担っているインストゥルメントプラグインです。
コード、アルペジオ、ベース、メロディが生成できるインストゥルメントがそれぞれ個別に用意され、各プラグインには「Phase Plant」というシンセエンジンを採用する高品質な内蔵音源も備わっています。

各プラグインはそれぞれ生成するフレーズのキャラクターを選択可能で、ユーザーが指定したコード進行にも連動してフレーズを生成させることができることから好みのフレーズを生成しやすいという特徴があります。

同一のコード進行で各プラグインのキャラクターをランダムに変更させると、このような楽曲の下地を作ることができます。

▶️パターン1

▶️パターン2

▶️パターン3

▶️パターン4

EVAbeat – Melody Sauce2

ジャンルごとに最適なメロディラインを生成させることができるインストゥルメンとプラグインです。

「EDM」や「Trap」など具体的なジャンルの指定ができることから、この製品もまた狙ったフレーズが生成させやすいと感じました。
また、簡易的な内蔵音源が用意されており、生成したフレーズをすぐに確認でき、コード進行に沿ったメロディラインを生成できるという特徴があります。

ジャンルの指定ができることである程度期待に沿った内容が生成できる点、無制限にバリエーションパターンを素早く生成できる点で、扱いやすさにも長けています。

▶️EDMのメロディ指定し生成した結果

FIMMIGRM

アゲハスプリングスの玉井健二氏がプロデュースされている、メロディ生成が行えるWebサービスです。

今回の楽曲はボーカル曲でないことから使用していないものの、プロアレンジという生成したメロディからプロがアレンジを加えるサービスで岡本が携わっています。

ヒット曲を中心にメロディの分析と学習が行われており、より歌ものらしいメロディの生成が行える点が特徴で、メロディの雰囲気や楽曲ジャンルを指定できることから、ユーザーが狙った内容を生成させやすい点もポイントです。

フレーズ生成とプレビューは無料で行え、MIDIファイルとオーディオファイルのダウンロード時に初めて料金が発生する仕様なので、気軽に試すことができます。

▶️メロディタイプ「バラード」、ジャンル「アンビエント」でランダムに生成させた結果

Audiomodern – Playbeat 3

プリセットを含む入力済みのパターンから、AIによりリズムパターンのバリエーションを生み出すことができるドラムサンプラー&シーケンサーです。

入力したパターンから、全てのトラック・またキックやスネアなどの個別のトラック単位でバリエーションの生成が行えます。

あらかじめ用意されている、ドラムサンプルやフレーズパターンのプリセットは即戦力で、純粋なドラムインストゥルメントとしても非常に優れた製品です。

▶️元フレーズからバリエーションを生成した結果

ヒューマナイズが行える製品

ベタ打ちなどの無機質な質感を有機的に変更したい場面で使用できる製品をご紹介します。

Magenta Studio Groove

Ableton Liveでのみ使用できる「Max for Live」形式で提供される「Magenta Studio」は、様々な機能を持つ無料のAIツールです。

「Groove」では、自身が入力したドラムフレーズを分析させ実行することで、AIが学習した内容を元にパターンに置き換えてくれます。
使い方もシンプルで、適用したいクリップを選択し、生成フレーズが元からどの位大きく変化するかを指定する「Temperature」を設定し、「Generate」を押すことで生成が行われます。

人間のドラマーが演奏した内容を元に学習が行われていることから、タイミングのズレや強弱のニュアンスが加えられ、生ドラムの打ち込みをよりリアルにしたい場面での活用が期待できます。

▶️Groove使用前と使用後の比較

Audialab – Humanize

ドラムフレーズで、同音を連打した際に発生する「マシンガン」効果を軽減することができる、サンプルのランダマイズプラグインです。
読み込ませたワンショットサンプルから、ランダムにバリエーションを生成させることができ、発音させるたびにサンプルがランダムに切り替わります。

▶️Humanizeを使用したスネアの連打

現段階では開発段階のアルファ版ということもあり、動作が一部不安定な場面がありましたが、製品コンセプトは大変面白いと感じました。

音色に関連する製品

guk.ai – Sistema

AIによりシンセ音色を生成できる新しいタイプのインストゥルメントプラグインです。
各種音色タイプを選択し、中央のボタンを押す度に新しい音色が生成され、シンセのパラメーターに触れることなく楽曲にマッチ音色を探すことができます。

また、独自にプロンプトを入力し、そこから音色を生成させることもできるため、ジャンルやタイプなどのざっくりとしたワードから音色を探せる部分も魅力的です。

使用した印象として、汎用性の高い音色生成は得意ですが、その反面個性的な音色を作ることは苦手なこと。そして生成内容から細かいエディットは行えない点が非常に惜しいと感じました。

▶️「Hardcore, Bass」とプロンプトを入力し生成させた音色

 

DDSP VST

入力された単音の演奏内容を別の音色に変換できるオーディオエフェクトプラグインです。
オーディオトラックのピッチやダイナミクスのニュアンスを変えることなく、異なる音色に変更できるので、生演奏ができる方にとっては打ち込みよりも手軽にトラック制作を行える可能性を秘めています。

今回岡本が制作したデモトラックのメインメロディは元々ギターで入力したものですが、DDSPによりトランペットのサウンドに差し替えています。

▶️元のギターと変換後のサウンド

Emergent Drums 2

VST3とAUに対応したキックやスネア、パーカッションなどのドラムサンプルを生成できる、ドラムサンプラーインストゥルメントです。

キット全体のサウンドを一括で生成したり、また個別のサンプルに対して生成を行うことも可能です。

また生成させるサウンドを現在のものからどの位似ているのか、また異なるのかを調整することができる点が特徴で、似ているけど少しだけ違ったバリエーションが欲しい場面で即戦力になる製品です。

生成されたサウンドの特徴としては、生のドラムやパーカッションというよりは、シンセを使用し作成されたようなニュアンスで、エレクトロミュージック制作にマッチした製品と言えます。

▶️Emergent Drums 2のサウンド

ミキシング系ツール

Sonible – Smart EQ

EQからコンプレッサー、リバーブまで様々なAI搭載のエフェクトをリリースしているSonible社のSmartシリーズですが、その中でもSmart EQは制作の時短になりうる優れた機能を持っていると感じた製品です。

トラックのタイプを指定し、そこから適したEQカーブを自動で設定してくれるだけではなく、複数のトラックに対し適用することで、音が重なる帯域(マスキング)を自動で処理を行う点が特徴です。

グループには3つの階層が用意され、上に設置するものがサウンドが維持、もしくは前に出す処理が行われ、下に設置するトラックは後ろに下がるよう処理されます。
処理後の結果が好みに反する場面もありますが、EQ処理が苦手という方にとっては有益な製品といえます。

▶️ドラムを手前に配置しベースを後ろに感じさせるよう設定し、自動でEQ処理を施した例(バイパス→処理後)


いかがでしたでしょうか。
日々進化を遂げるAIツールですが、2023年現在の製品の品質や研究・開発されている分野について把握いただけたのではないかと思います。

人と比べると、ジャンルや個性なども含めた音楽的文脈を踏まえた処理や生成、また部分的に作成したものから完成に向けての提案やサポートを期待することは難しいと感じました。
その反面アイディアを探す場面では、自分からはなかなか出てこないものを提案してくれたりと、活用できる部分が多いのではないかと思います。

総合的にはまだまだ進化の余地を多く残しているように思いましたが、画期的なコンセプトの製品も多々ありましたので、ご要望の声がありましたら今後もAI製品を定期的に追ってご紹介していきたいと思います。