ナチュラル・マイナーダイアトニックコードのディグリーネーム(3和音)/音楽理論講座
ナチュラル・マイナーダイアトニックコードの活用に向けて
今回は、メジャーの際の流れと同様に、ナチュラル・マイナーのダイアトニックコードをローマ数字(ディグリーネーム)に置き換える方法を学んでいきましょう。
実は、ナチュラル・マイナーダイアトニックには”非常に間違えやすいポイント/span>”があります。
その点も併せて、解説していきます。
本講座を進めていくに置いて、ダイアトニックコードのディグリーネームの置き換えについて未読の方や忘れてしまった方は、21~26回あたりを参照し、ディグリーネームに置き換える利点のイメージを固めておきましょう。
解説に使用する表は、下記URLよりダウンロード可能です。
学習にお役立ていただければ幸いです。
https://sleepfreaks-dtm.com/wordpress/music/Natural_Minor_Diatonic_Triad.zip
ダイアトニックコードの法則性に注目する
ここまで各キーでの、ナチュラル・マイナーのダイアトニックコードの作り方を学んできましたが、改めて各キーのナチュラル・マイナーのダイアトニックコード(三和音)の一覧表を見てみましょう。
メジャーと同様に、これらを全て暗記するのは大変です。
しかし、前回〜前々回で触れた通り、どんなキーで作り上げても”スケールに沿って左から出来上がるコードの性質は同じ“という点がポイントです。
このように、いずれも
マイナー、ディミニッシュ(三和音)、メジャー、マイナー、マイナー、メジャー、メジャー
の並びになっていることがお分かりいただけると思います。
ナチュラル・マイナーダイアトニックの落とし穴
冒頭でも記載しましたが、ナチュラル・マイナースケールのディグリーネームを考える際に、間違えて覚えやすいポイントがあります。
メジャースケールの知識をそのまま応用して、ナチュラル・マイナースケールのコードの並びを、以下のように表記してしまいがちです。
ナチュラル・マイナーという前提がない場合、この表記だけではメジャーなのかナチュラル・マイナーなのか正確に判断できません。
例えば、このローマ数字表記のままAから始めるスケールを作ると、次のようになってしまいます。
ご覧のように、C♯、F♯、G♯という音が含まれていますが、これらは本来のAナチュラル・マイナースケールには存在しない音です。
実は、これらの音を含むスケールはAメジャーです。
これは、メジャースケールの知識をそのまま適用してしまったために起こりました。
ここで、スケールに数字を振ったときのことを思い出してください。
メジャー・スケールが
- 1 2 3 4 5 6 7 (8)
であるのに対し、ナチュラル・マイナーは
- 1 2 ♭3 4 5 ♭6 ♭7 (8)
でした。
Aを主音(トニック)として考えた場合、上記の違いにより、3(III)はC#ではなくC、6(VI)はF#ではなくF、7(VII)はG#ではなくGとなります。
これにより、Aナチュラル・マイナースケールは白鍵だけで構成されることになります。
より理解しやすくするために、Cを主音として考えてみましょう。
メジャースケールの場合と同じ手順で進めます。
まず、Cメジャースケールを見てみましょう
Cメジャースケールは
- C D E F G A B (C)
- 1 2 3 4 5 6 7 (8)
Cナチュラル・マイナースケールは
- C D E♭ F G A♭ B♭ (C)
- 1 2 ♭3 4 5 ♭6 ♭7 (8)
となります。
ディグリーネームは以下のとおりです。
このように、ナチュラル・マイナースケールとメジャースケールの違いを正確に表現するには、フラット(♭)記号を使用します。
一部の教材では♭記号を省略した簡略表記を使用していることもありますが、当講座では、他のスケールやダイアトニックコードとの違いを明確にし、後々のテクニックの理解につなげるために、「♭」記号をつけて表記していきます。
ナチュラル・マイナーダイアトニックコードのディグリーネーム(三和音)
ここからダイアトニックコードを作りましょう。
手順は前回〜前々回に掲載した通りです。
併せて、ローマ数字の隣に各コードの性質を付記していきます。
ディグリーネームの記述法は、メジャーの横に「△」をつけたり、マイナーは小文字(「ⅲ」等)で示すなど、様々な表記法があります。本講座では上記の記述で統一します。
ナチュラル・マイナースケールのダイアトニックコードを作る方法は、メジャースケールと基本的に同じで、スケールの各音をローマ数字の箇所に当てはめていくだけです。
ナチュラル・マイナースケールがわからなくても、メジャースケールが理解できていれば、メジャースケールの3/6/7を半音下げる(♭させる)ことで、ナチュラル・マイナースケールが完成します。
それぞれの名称は以下のとおりです。
- Im =ワン・マイナー
- IIdim = トゥー・ディミニッシュ(三和音)
- ♭III= フラット・スリー・メジャー
- IVm = フォー・マイナー
- V m= ファイブ・マイナー
- ♭VI = フラット・シックス・メジャー
- ♭VII = フラット・セブン・メジャー
最後に、ローマ数字表記ありのナチュラル・マイナーダイアトニックコード(三和音)一覧表を載せておきます。
ぜひ、ご利用ください(リンク先を保存で大きいファイルを取得できます)。
・三和音
https://sleepfreaks-dtm.com/wordpress/music/Major_Diatonic_Triad.zip
・四和音
https://sleepfreaks-dtm.com/wordpress/music/Major_Diatonic_Tetrad.zip
まとめ
今回の学習ポイントをまとめると下記の通りです。
- ナチュラル・マイナースケールはメジャースケールの3、6、7音を半音下げて作成し、ダイアトニックコードの性質の並びは全てのキーで同一
- ナチュラル・マイナースケールのダイアトニックコードは Im、IIdim、♭III、IVm、Vm、♭VI、♭VII で構成され、メジャースケールとは異なる並びになる
- ナチュラル・マイナースケールのディグリーネームを正確に表現するには、♭III、♭VI、♭VII のようにフラット記号を使用する
- メジャースケールの知識をそのまま適用すると、ナチュラル・マイナースケールのコード進行を誤って解釈する可能性があるため注意が必要
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。