ディグリーネームを活用する(後編)/音楽理論講座
キー変更にディグリーネームを活用する
前回に引き続き、ディグリーネームの活用方法を学んでいきます。
本項を理解するためには、前回、前々回の内容を理解しておく必要があります。
未読の方は、まず下記のページをご覧ください。
今回はまず、キーの変更についてです。
ディグリーネームを使うと、非常に簡単にキーを変更することができます。
例えば、前回のカノン進行(Key=Dメジャー)を使用し、曲を作りましたが歌い手にキーを下げてくれと言われたとしましょう。
キーの説明の際にも、カラオケの例がありましたね。
もしキーの指定が「-2」だった場合は、キーはCになります。
補足として、シンセのピッチなどでもよく見る表記ですが、+1で半音上、-1で半音下となります。
+12で1オクターブ上、-12で1オクターブ下、+7でP5th上です。
今回はキーですので、スケールの最初の音とともに、残りの音も相対的に移動するイメージです。
前回で既に、ディグリーネームによる解析は済んでいます。
あとはこれに、Cメジャースケールの音を当てはめるだけです。
上記を踏まえ、Key=Cでのカノン進行は以下の音源/譜面/ピアノロールのような形となります。
ほとんどのDAWではキーの変更はボタン一つで簡単に行えますし、Cubaseではコード表示もある程度キーに追従させることができます。
ただ、コード表示の追従が出来ないDAWを使用する場合や、ライブセッションなどで即座にキー変更を求められる場合は、このディグリーネームによるキー変更方法を覚えておくと非常に役に立ちます。
引き出しとして蓄積している進行を制作に用いる際も、あらゆるキーで手早く打ち込めるようになるでしょう。
以上のことからも、ぜひ身につけていただきたいテクニックです。
有名なコード進行をディグリーネームで把握する
世の中のヒット曲には共通して使われる進行があり、しかもコード進行自体には著作権はありません。
簡単なダイアトニックコードだけでできる進行もたくさんありますので、今回はその一部をご紹介します。
ぜひ、お気に入りのコード進行を自分のものにしてみましょう。
ダイアトニックコード表とともに、ご確認ください。
- VIm→IV→V→I
このコード進行は一般に「小室進行」として知られています。
遅いテンポでは力強い印象を与え、速いテンポでは疾走感を演出する特徴があります。
- VIm→IV→I→V
先ほどの進行において、VとIを入れ替えたものです。
EPIC系の音楽でよく耳にします。
ブロークン・コード(Broken Code) =「分散和音」で演奏すると、その特徴をより感じ取りやすくなります。
詳しくは、ボイシング、アルペジオ、ロー・インターバル・リミットをご参照ください。
- IV→V→IIIm→VIm
非常によく耳にするコード進行で、一般的に「王道進行」と呼ばれます。
四和音を含みますが、ここでは三和音のみのバージョンです。
ジャンルを問わず使用でき、メロディーも乗せやすい進行です。
- IV→V→VIm→VIm
トランスやユーロビートなどのダンス系の四つ打ちでよく使用されるコード進行です。
クールで洗練された印象を与えます。
- IV→V→VIm→IIIm
途中までは先ほどの進行と同じですが、最後を変えることで切ない雰囲気が生まれていますね。
このように最後のコードを変更することで、雰囲気や次への展開が導かれるケースはよくあります。
例えば、
- IV→V→VIm→I
このように変更すると、最後に力強さが感じられますね。
その他、以下の3つも非常によく耳にするコード進行です。
- VIm→IIm→V→I
- IV→I→V→VIm
- I→VIm→IIm→V
他にも、ここでは紹介しきれないほど多くのパターンがあります。
また、アレンジやテンポ、ボイシングによっても雰囲気が変わります。
ぜひディグリーネームを活用し、ご自身の曲で様々なアイデアを試してみてください。
次回は、4和音のメジャー・ダイアトニックコードでのディグリーネームを取り上げていきます。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。