僕がAbleton Live「Suite」を選ぶ理由 (前編)インストゥルメント音源の比較
Ableton Liveが真価を発揮する機能と付属サウンド
Sleepfreaks講師の宮川です。
EDMを制作する方に圧倒的に人気があるDAW「Ableton Live」
このAbleton Liveには「Intro/Standard/Suite」という3つのグレードが用意されています。
Live機能比較ページ : https://bit.ly/2Hqpw0Q
僕は2番目のグレードとなる「Standard」エディションからAbleton Liveの使用を始めましたが、現在は最上位グレードの「Suite」へアップグレードし、Suiteに含まれる機能や付属サウンドを愛用しています。
以降、ハイクオリティな作品を作りたいという方には、Suiteエディションをお勧めしていますが、なぜ僕がこのエディションを勧めるか?
ここでは「Suite」を選ぶメリットを楽曲制作者の目線から前編/後編の2回に分けてお伝えしていきます。
前編となる今回は、Suiteに付属するインストゥルメント(音源)にスポットを当て、そのサウンドクオリティの高さをサードパーティ製プラグインと比較しながら解説していきます。
僕がAbleton Live「Suite」を選ぶ理由(前編)
製品サイト : https://bit.ly/2Hp4Ar4
Live Suite 付属インストゥルメント
まずはLive Suiteと他エディションの付属インストゥルメント数を確認してみましょう。
シンセサイザー/サンプラーなどインストゥルメントの数は、Suiteで15個となっています。
これはStandardと比較しても3倍です。
インストゥルメントの内容として、「Wavetable」を始めとする「FM」「バーチャルアナログ」「物理モデリング」などの多種多様なシンセサイザー/サンプラーが含まれており、これは幅広いジャンルに対応することを意味します。
また上記の表で「サウンド」と記載されている内容は
- ピアノやベースなどのバンド系サウンド
- オーケストラ楽曲をカバーする多彩な生楽器音源
- 生〜エレクトロまで広範囲のジャンルをカバーできるドラム音源
このようなサンプルベースの膨大な音源となります。
DAWに付属するインストゥルメントは「クオリティ的に物足りないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、
Live Suiteは単体で販売されている音源集多彩なサウンドPackが使用可能です。
そのサウンドクオリティは付属というイメージを凌駕しています。
これらインストゥルメントやサウンドの中から、特にお勧めしたい項目をピックアップしました。
Wavetableシンセ
近年、最も人気のシンセのタイプと言えば「Wavetable」方式の製品です。
SuiteにはWavetableシンセが予め付属します。
同タイプのシンセ(Wavetable)として高いシェアを誇るサードパーティ製品「Serum」とサウンドを比較してみましょう。
エレクトロミュージックで幅広く使用される定番サウンドを同じ設定で作成したサウンドです。
- Serum
- Wavetable(Live Suite)
このようにクオリティは専門のサードパーティプラグインに引けを取りません。
機能面の比較として、Serumは多くのフィルタータイプが備わっています。
この点ではLive Wavetableよりも優れていると言えますが、
2基のフィルターを並列/直列接続で自由にルーティングできるという点では、Live WavetableがSerumよりも優れています。
Live WavetableにはSerumのようなエフェクトが内蔵されていませんが、これはLive内のエフェクトを組み合わせることを前提に開発されているためです。
後に解説する「Max for Live」の機能を組み合わせることで、各パラメータへLFOやENV変調を行うことができるため、エフェクト面では差がないと言えます。
また、DAWに付属するシンセとはしては珍しく、サードパーティからサウンドプリセットが販売されています。
これはLiveが世界で最もシェアの高いDAWという理由に結びつきます。
バーチャルアナログシンセ
上記で述べたように、Suiteには「FM音源/物理モデル音源/アナログモデリング音源」などのシンセが付属します。
特にアナログモデリングシンセのBassは、アナログ特有のサウンドがよく再現されており、近年人気が高まっている太く温かみのあるサウンドを求める方へ強くお勧めできます。
ここではSuiteに付属するサウンドPack「Max for Live Essential」のBassと、サードパーティ製で高い評価を得ているu-he社の「Diva」を比較してみます。
- Diva
- Bass
1オシレーターのみを使用したシンプルなベースサウンドですが、太く歪み感の感じるアナログシンセ特有の振る舞いがDivaに負けないほどしっかりと再現されていることが確認できます。
またこの他にも「Analog」というより汎用性の高いシンセも付属しています。
オシレーターユニゾン、ビブラート、2つのLFOなど。
BassやPoliよりも機能が多く、より多彩なサウンドメイクが可能なシンセです。
- Live Analog
FMシンセ
Synth WaveやLofi系サウンドの流行で脚光を浴びている「FMシンセ」としてSuiteには「Operator」が付属しています。
デジタルシンセとなる当製品は、硬質できらびやかなサウンドが特徴となっています。
- Live Operator
この他にもSuiteには「物理モデリング」や「グラニュラー」といったシンセが付属します。
知らないタイプのシンセでも、新しく好みのサウンドを発見する機会も多くなります。
Suite付属の生楽器音源
次に生楽器系のインストゥルメントを確認していきます。
エレクトリック・ピアノ
まずはエレピ音源のPack「Electric Keyboards」と、お持ちの方も多いサードパーティ製品「Komplete」に含まれる「Scarbee Vintage Keys」を比較します。
- Scarbee Vintage Key
- Electric Keyboards
Electric Kehyboardsのベロシティレイヤーは「5-6段階」用意されており、これは専用音源であるScarbeeと比較しても遜色のないサウンドです。
ストリングス
続いてオーケストラ系のインストゥルメントを比較していきます。
Suiteからは「Orchestral Strings」サードパーティからはKompleteに含まれる「Session Strings Pro2」を比較します。
- Session Strings Pro2
- Orchestral Strings
アーティキュレーション数(奏法)はSession Strings Pro2よりも少ないものの、4つのアーティキュレーションが備わっており、付属音源を超える高いサウンドクオリティを感じていただけたと思います。
アコースティック・ドラム
続いてはドラム音源の比較を行います。
Suiteから「Session Drums Multimic」サードパーティからKompleteに付属する「Studio Drummer」を比較します。
- Studio Drummer
- Session Drum Multimic
ドラム音源は収録されたキットによりサウンドの特性が大きく異なるため、純粋に比較することは難しいですが、RoomマイクやOverHeadマイクのサンプルが収録されているか?という点が生ドラムの質感を再現する部分がポイントととなります。
これも実用に十分なクオリティと言えるでしょう。
いかがでしょうか?
Live Suiteに付属するインストゥルメントのクオリティを感じていただけたと思います。
今回の比較でも登場したPackと呼ばれる拡張音源は定期的に追加されています。
中には有料で追加が必要な製品もありますが、Suiteを持っておくと無償使用できるPackが増えていきます。
また、これらはLive専用に設計されており、動作が軽く安定性が高いという点も付属製品を多用する大きな理由となっています。
CPUリソースを気にすることなく、サウンドの組み合わせを存分に試すことが可能です。
多機能で軽量な純正のSampler
Suite以外のエディション(Intro/Standard)にも「Simpler」というサンプラーが付属しますが、上記生楽器インストゥルメントを動作させる「Sampler」が付属します。
Simplerとは異なり、ベロシティレイヤー、鍵盤ごとに異なるサンプルを配置、オリジナルのサンプルを使用できる点が特徴です。
LFOやENVによるモジュレーション、内蔵オシレータによるAM/FMモジュレーションなど、クリエイティブなサウンド作成が可能なSamplerは動作も軽量な為、制作時に頻繁に使用するデバイスとなっています。
近年のエレクトロミュージックでよく耳にするボーカルチョップのような手法もSamplerで作成可能です。
- Live Sampler
Suite付属インストゥルメントのまとめ
ここまでの内容をまとめると
- 制作で主要となるタイプを網羅した9種類のシンセサイザー
- 生楽器を含む70GBを超えるインストゥルメント
- サウンドクオリティは実用的かつ、CPU負荷が少なく動作が安定している
これらがLive Suiteを選ぶ理由です。
Live Suiteの真価を測る上で、この付属インストゥルメントは一部です。
後編で解説を進めていく「Max for Live」を含めた「MIDI/オーディオエフェクト」は制作において更に重要な要素となってきます。
是非、後半もお楽しみいただければ幸いです。
製品サイト : https://bit.ly/2Hp4Ar4
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記事の担当 宮川 智希/Tomoki Miyakawa