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10ステップで分かる!ピアノバッキングの作り方【DTM初心者】

J-POP系楽曲で使えるピアノの作り方を解説

今回はポップス系楽曲でピアノのバッキングトラックをどう作れば良いか分からないという方に向けて、10段階のステップで使える動きのあるピアノフレーズの作り方を解説します。

ピアノバッキングの作り方 動画

まず初めに、シンプルなコード和音のみを打ち込んだものと、これから解説する内容を取り入れて複雑に動きをつけたトラックを聴き比べてみましょう。
楽曲には「残響散歌」のサビのメロディとコード進行を使用しました。

▶︎コードを基本系で入力したトラック

▶︎多彩な動きをつけたトラック

このようにピアノに動きをつけることで楽曲全体が華やかに感じられ、躍動感を加えることができます。

  1. 1ピアノの基本について
  2. 2STEP1 コードの和音を打ち込む
  3. 3STEP2 左手を追加する
  4. 4STEP3 ピッチの高さを揃える
  5. 5STEP4 リズムを加える
  6. 6STEP5 右手と左手で異なるリズムにする
  7. 7STEP6 コードの高さを変える
  8. 8STEP7 コード以外の音を使用する
  9. 9STEP8 アルペジオを使用する
  10. 10STEP9 サブメロディを入力する
  11. 11STEP10 ステップ1〜9を組み合わせる

ピアノの基本について

詳しい解説に進む前に、一般的なピアノの役割と演奏内容について触れておきましょう。

ピアノの役割には

  • コード伴奏をする
  • 裏メロディやオブリガートといったメロディ的なフレーズ

といった二つの要素があり、華やかなアレンジを施されたピアノトラックではその両方の要素が含まれている場合が多くあります。

伴奏とはコードの和音にリズムをつけて演奏したもので、楽曲の展開やノリを形成するという役割があります。
わかりやすい例を挙げると、ピアノやギターなどの1つの楽器と歌のみで演奏される楽曲であれば、楽器で演奏されているものが伴奏です。

メロディ的なフレーズとは、伴奏のリズムやコード構成音の縛りから離れた一連の旋律を演奏するものです。
歌などの主旋律の邪魔にならないようなフレーズとし、楽曲に華やかさを加えることを目的として使用します。

STEP1 コードの和音を打ち込む

最初のステップとして、まずコードの基本形を打ち込んでみましょう。

Piano1

コードの基本形とは、上記画像のようにルートを最低音として順に上へと積み重ねた形を表します。
例えば楽曲中のG#マイナーコードであれば、一番下にルートのG#、その上にB、最後にD#と音を重ねていくことになりますね。

コードについて詳しく学んでみたいという方は、ぜひこちらの音楽理論講座をご覧ください。

Piano2
この手順で全てのコードを入力するとこのようになります。

▶︎基本系で入力したコード

STEP2 左手を追加する

ステップ2では左手の演奏を追加し両手で演奏をさせます。

ピアノ伴奏では右手でコードを弾き、左手ではコードのルート音を弾くことが最も基本的な形になります。

Piano33

ここでは先ほど打ち込んだコード和音に、3つの左手演奏の定番パターンをご紹介します。

コードのルート音のみを入力する

まずは最もシンプルに、ルート音のみを入力するパターンです。

コードがG#mの場合ルート音はG#になるため、この音を左手の演奏として入力します。

Piano4

▶︎ルート音のみを入力した例

音の高さは右手よりも低いポジションであればどこに入力しても問題ないため、より重みのあるサウンドにしたい場合は低めに、逆に軽い印象にしたい場合は、高めの位置に入力すると良いでしょう。

コードのルート音をオクターブで重ねる

次にご紹介するのは、ルート音をオクターブで重ねるパターンです。

Piano7

先ほど入力したルート音の1オクターブ上や1オクターブ下に音を重ねることにより、ピアノ伴奏により厚みを持たせることができます。

▶︎ルート音のオクターブを入力した例

こちらも好みや楽曲の雰囲気にマッチしたものを自由に選択していくと良いでしょう。

コードのルート音と5度の音を重ねる

3つ目にご紹介するのは、ルート音に5度の音を重ねるパターンです。

Piano5

5度はコード和音を順に重ねた際に、ルート音から数えて下から3つ目の音です。G#mであれば図の通りD#の音が5度にあたります。

Piano6

この音を左手側のルート音の上に配置することで、左手パートに厚みを加えることができます。

前述のオクターブを重ねる方法に比べ、5度の音を重ねる方法はより複雑かつ重みのある響きを与えることができます。

▶︎ルート音と5度で入力した例

音の厚みという面では【ルート音】→【ルート音をオクターブで重ねる】→【ルート音と5度を重ねる】の順に変化します。

3音全てを弾く

またここまでご紹介した3つのパターンを全て含めた形も存在します。

Piano8

ルート音に5度の音と、さらに1オクターブ上のルート音を重ね、左手を合計3和音とします。このパターンは、最大限にピアノの厚みを出したい場合に使用します。

▶︎3音全て入力した例

このほかにも左手の演奏パターンはありますが、今回ご紹介した4つが最も定番のパターンですので、それぞれ試してみてください。

打ち込み時のポイント

両手で伴奏を行う際は、左手に必ずルート音が含まれるため、右手はルート音を省いても問題ありません。

Piano9

特にセブンスコードをはじめとする4和音以上のコードを演奏する時には、右手からルート音を省くことで、不要な厚みを除きスッキリとコードを聴かせることができます。
また3和音のコードと重ねる音の数が揃うため、コードチェンジをよりスムーズにしてくれる効果もあります。

実際に鍵盤楽器奏者が好んで行う弾き方なので、生演奏を意識したピアノの伴奏を作る場合はぜひ取り入れてみてください。

STEP3 ピッチの高さを揃える

ステップ3では、入力した各コードの構成音の高さ(ピッチ)を、なるべく近くなるよう揃えていきます。

Piano10

こちらはステップ2で入力したコードの基本形と、ピッチの高さを揃えた伴奏を比べたものです。

▶︎ステップ2の内容

▶︎高さを揃えたもの

ステップ2の内容でも伴奏として成り立ちますが、高さを揃えたものの方がより安定した響きとなっているのがわかります。

「高さを変更することでコードが変わってしまうのでは?」と思われがちですが、コードには音の並び順(ボイシング)を変えてもコード名は変わらないという特徴があります。

この特徴を利用し、前後のコードと近い音域で演奏されるように、高さを変更することができます。

Piano11

G#mコードの部分を例に挙げると、上の画像の右手は下からG#、B、D#の順で積み重ねられていますが、

Piano12

この一番高いD#の音を1オクターブ下げ、低いD#に動かしても問題ないということになります(これをコードの転回と言います)。

打ち込み時のポイント

音の高さを調整する際

、右手のコード和音は自由に転回できますが、左手の最も低い音は必ずルートにするという決まりがあります。

Piano13

このように左手も含めて高さを変えてしまうと違うコードに変わってしまうため、一番低い音はルート弾くと覚えておきましょう(例外としてG/Bなどのいわゆる「分数コード」があり、その場合分母のベース音を最低音とします)。

STEP4 リズムを加える

ここまではコードの重ね方について学んできましたが、ステップ4ではリズムを加えてみましょう。

Piano14

▶︎コード和音にリズムを加えた伴奏

ピアノはアタック感のある楽器なので、リズムを加えることで楽曲全体がより軽快な印象に変化します。

リズムには様々なバリエーションがありますが、今回はその中でも定番の「ドラムに合わせるリズムパターン」をご紹介します。

Piano15

まずはピアノをドラムのトラックと一緒に表示させ、キックやスネアのリズムに合わせてピアノのリズムを分割します。

Piano16

ひとまずキックとスネアが入力されているタイミング全てでピアノのリズムを分割しました。

▶︎リズム分割後

サウンドを確認すると、リズムが過剰に細かく感じられるため、適度にノートを削除したいと思います。

Piano17

分割され細かくなったコード和音の中から、できる限り一定間隔でノートを削除するとこのようになります。

▶︎不要なノート削除後

このように、ドラムのトラックと連動しながらもスッキリと自然なリズムで演奏させることができます。

STEP5 右手と左手で異なるリズムにする

ここではステップ4で一律に加えたリズムに対し、右手と左手の違いを加えてみましょう。

もちろん左右で同じリズムで演奏してはいけないわけではありませんが、異なる動きとすることで、より複雑なリズムを構成することができます。

Piano21

まずは右手と左手のリズムを変えた状態を聴いてみましょう。

▶︎両手で異なるリズムに変更した場合

Piano22

細かく見ていくと、コードが切り替わる頭の部分では両手で演奏していますが、

Piano23

それ以外の部分では常に左手が右手に先行しているのがわかります。
これにより、左手で助走をつけ右手でアクセントを打つ、といったリズムの躍動感が生まれます。

この他にも左手のリズムパターンはありますが、左手は右手の直前で入力する方法は定番の1つですので、ぜひお試しください。

STEP6 コードの高さを意図的に変える

ステップ3では各コードごとに構成音の高さを平均的に揃えましたが、ここでは逆に意図的に高さを変える手法を解説します。

Piano24

まずは一旦音の高さを揃えた状態と、意図的に変えたものを聴き比べてみましょう。

▶︎高さを揃えたもの

▶︎高さ変更後

高さを揃えたものにはいかにも伴奏らしい安定感がある一方、意図的に高さを変えたものには、伴奏の中にどこかメロディアスな雰囲気も感じられます。
これはコード構成音の中で最も印象的な最高音(トップノート)が上下することで、その動きがメロディのように感じられることによるものです。

Piano25

内容を見てみると、高さが変わっていてもG#mのコードであればG#、B、D#の3種類の音のみを使用しています。
つまり、これはステップ3の時と同様に、コード構成音を転回する方法で高さを変えています。

高さは自由に変更しても問題ありませんが、極端なピッチの変化を与える場合は注意が必要です。

Piano26

特別な意図がなく極端に上下させると、高い音が闇雲なアクセントとなり、脈略のない印象を与えてしまいます。

▶︎極端に高さを変えた例

STEP7 コード以外の音を使用する

ここまでのステップでは、コードを構成する音のみを使用してきましたが、ここからは構成音以外の音も使用し、さらに華やかなフレーズを作る手順を解説していきます。

Piano27

まず、コード以外の音を使用したピアノトラックの作例を聴いてみましょう。

▶︎コード音以外の音を使用した例

先ほどのステップ6の時よりも、さらにピアノがメロディアスに聴こえますね。
この方法は伴奏のピアノをより印象的に聴かせたい場面で効果的なテクニックです。

Piano28

細かく見ていくと、コード構成音以外が使われるのは一番高い音だけとなっているところがポイントです。

Piano29

さらにコード構成音に対して、スケールに沿って1音上もしくは1音下、つまり隣の音に動かすことで安定した流れを作っています。

しかし時には、より大きく跳躍して高い音/低い音へと動きをつけたいケースもあるでしょう。

Piano30

その際は、ステップ6で行なった転回による方法を使用し、その後隣の音に動かすことで、大きなピッチ変化をメロディアスに聴かせることができます。

打ち込み時のポイント

コード構成音以外の音を使用する場合の注意点として、コードが切り替わるタイミングでは必ずコード構成音のみを使用することが挙げられます。
そうすることで、伴奏としての安定感を損なうことなくピッチに動きをつけることができます。

STEP8 アルペジオを使用する

ステップ8では、ピアノの代表的な奏法の1つ「アルペジオ」を取り入れていきます。
アルペジオは分散和音とも呼ばれ、コードの和音を1音ずつバラバラに弾くことを表す奏法です。

Piano31

上の図のように、コード構成音を1音ずつタイミングをずらして演奏するのが基本です。

まずはアルペジオを使用したパターンを聴いてみましょう。

▶︎アルペジオを使用したピアノトラック

和音のような力強さは乏しいものの、コード伴奏に滑らかさを与えるとともに、雰囲気がよりメロディ寄りとなり華やかな印象を与えることができます。

Piano33

内容を確認すると、全てをアルペジオで演奏しているのではなく、コードが切り替わるポイントでは和音、その後にアルペジオと使い分けています。

もちろん全てをアルペジオで演奏するケースもありますが、和音とアルペジオを切り替えながら演奏することで、演奏にメリハリが生まれます。

また、このアルペジオのフレーズは、ステップ6で高さを調整した和音を元にしています。
つまりアルペジオも、コードの構成音であれば音の高さは自由に変更してよいということになります。

打ち込み時のポイント

ピアノでアルペジオを演奏する際は、多くの場合、サスティンーペダル(またはダンパーペダル)と呼ばれる音を伸ばすためのペダルを使用します。
サスティーンペダルを使用することで、コードを分解して演奏しながらも音を重ねていくことができます。ピッチが跳躍するアルペジオや、素早い動きのアルペジオを演奏したい場合には必須のテクニックです。
打ち込み上では、いちいちノートを引き伸ばさなくても良いため、効率的で見た目もわかりやすくなるという利点があります。

一般的なピアノ音源の場合、サスティーンペダルは「MIDI CC64」でコントロールができるようになっています。

Piano35

コードが切り替わる節目では、その1拍目で必ず値を0にしてください。そうしないと、前の音が伸び続けて次のコードが破壊的な響きになってしまいます。

STEP9 サブメロディを入力する

ステップ9では、メインのメロディの後ろで演奏されるもう一つのメロディ(サブメロディ)の役割をピアノに加えていきます。

サブメロディは、「裏メロディ」や「オブリガート」など役割によって様々な呼ばれ方があります。

Piano18

こちらもはじめにサンプルを聴いてみましょう。

▶︎サブメロディが含まれたトラック

伴奏が安定を演出するものだとすれば、サブメロディは躍動感を演出するものとなり、取り入れることで楽曲をより華やかに彩ってくれます。

Piano19

サンプルでは、コードが切り替わるポイントはコード和音、その後にサブメロディを入力しています。

全てをサブメロディで演奏しても良いですが、ピアノに伴奏の役割も持たせたい場合は、二つの要素を組み合わせて使用するのがおすすめです。

またサブメロディは単音だけではなく、力強く聴かせたい場面ではオクターブで音を重ねるのも効果的です。

Piano20

単音と1オクターブを使い分けることで、サブメロディの演奏にメリハリをつけることができます。

打ち込み時のポイント

サブメロディを入力する際は、メインメロディを邪魔しないように注意が必要です。

メロディが細かな動きをしている時は、ピアノは大きなリズムで演奏し、逆にメロディが休んでいる箇所や音を伸ばしている箇所では、ピアノが細かな動きを担当します。
そうすることでメインメロディとサブメロディが互いに引き立て合う関係となり、それぞれをより印象的に聴かせることができます。

STEP10 ステップ1〜9を組み合わせる

ステップ10では、ここまで学んだステップ1から9の内容を組み合わせて、1つのピアノトラックとしてまとめます。

実は冒頭でお聴きいただいた「多彩な動きをつけたトラック」は、このステップ10で作成したものです。

▶︎ステップ10のピアノトラック

Piano37

一見複雑そうに感じられますが、部分的にみていくと、今回学んだ各ステップの内容で構成されていることがわかります。

左手部分はステップ2で学んだルート音のオクターブや、5度を重ねる手法を使用し、またステップ8のアルペジオも取り入れてメリハリをつけています。
右手ではステップ6のコード転回やステップ7のスケールに沿った動きを導入し、ステップ9のサブメロディを使用することで、ダイナミックかつドラマチックに楽曲を盛り上げています。

このように数パターンの手法を学び組み合わせることで、ピアノトラックのバリエーションを大幅に広げることができます。


今回は主に伴奏パターンの作り方を解説させていただきましたが、これらのテクニックを楽曲中でどのように使用するかも重要です。
例えばAメロではシンプルなコード和音のみにして、Bメロではサブメロディで演奏、サビではステップ10を使うなど、楽曲にメリハリをつけることを意識するとより良いトラックを作ることができます。

機会がありましたらこの辺りについても解説したいと思います。