59. セカンダリー・ドミナント②
セカンダリードミナントについて
前回は、「Fly Me to the Moon (In Other Words)」の前半部分を分析し、セカンダリードミナントを意識してみてみました。
まずはその音源を聴いてみましょう。
シンプルなコードのみの場合
まずはCメジャーキーのダイアトニックコードを画像のように間隔を開けて用意します。
今回は3和音+1音の4和音で確認していきます。
重要なVからIの解決の動きを確認します。
上図ではキーがCメジャーのみのため、G7→Cmaj7の動きです。
分かりやすいようにベースを加え、ボイシングを整えて聴いてみましょう。
V7→Imaj7の進行をV→Iにしてみました。
もちろんV7→Iなどでも構いません。
こちらの方が、明るく解決した感じが強いですね。
ご自身で曲を作る際は、楽曲やイメージに合わせて使い分けてみてください。
では次にV→Iという解決の動きを、他のダイアトニックコードにも当てはめていきましょう。
Cmaj7以外のダイアトニックコードを仮のIに見立て、それに対しVをつけていくイメージです。
このようになりました。
オレンジ文字が新たに加えたコードです。
✳︎注:ボイシングは変えてあります。
分析の為、それぞれのコードにこのように数字を書いてみました。
✳︎注:スラッシュコード(オンコード)とは異なるのでご注意ください。
Fly Me to the Moonの譜面にも書き込んでみましょう。
✳︎黄色箇所の部分です。
読み方の一例として、V7/IIは「ファイブセブンス・オブ・ツー」つまり、IIのV7というイメージです。
次に、それぞれのV→Iの動きを確認していきましょう。
「解決の動きをしている」ということを意識しながら、V7→I(4和音) V→I (3和音) V7→I(3和音)の順番で聴いてみます。
V7/II
V7/III
V7/IV
V7/V
では次に左から5番目、最初の赤丸の箇所を確認していきます。
Gに移った際には自然な解決感が得られましたが、G7に移った際には今までにない違和感を感じた方もいるかと思います。
もう一度確認してみましょう。
よく見てみるとドミナント7thから、ドミナント7thへの流れになっていますね。
こちらは次回詳しく触れていきたいと思います。
V7/VI
次は、音楽理論初級編の51〜53あたりでお馴染みの部分ですね。
最後に、左から7番目の赤丸の箇所を確認して行きましょう。
いかがでしょうか。
5番目とは比べ物にならないほどの違和感を感じたと思います。
この動きは、まれにセカンダリードミナントとして説明されることもありますが、m7♭5やdimは解決先のIとしては不安定すぎるため、基本的にVIIdimやVIIm7♭5にセカンダリードミナントはないと考えることが多いです。
✳︎注:KeyCメジャー(C D E F G A B)で確認。
また他との違いとして、ルートの音がスケール外の音になっているという箇所にも注目です。
ダイアトニックコードが家族だとすると、ルート音がスケール内のセカンダリードミナントは親戚のような存在であり、スケール外の音を持つ場合は遠い親戚のようなイメージで覚えておきましょう。
まとめ
今回の学習ポイントをまとめると下記の通りです。
- セカンダリードミナントは、ダイアトニックコード以外のコードを一時的なIとみなし、そのVやV7を使用する手法
- セカンダリードミナントの使用により、楽曲に新たな緊張感や解決感を加え、より豊かな和声進行を作り出せる
- m7♭5やdimコードは不安定なため、基本的にVIIdimやVIIm7♭5にセカンダリードミナントはないと考えることが多い
- セカンダリードミナントのルート音がスケール外の音である場合、より遠い調性関係を示し、特殊な効果を生む
次回は、今回の解説で説明出来なかった違和感を感じた箇所や、今まで出てきたコード進行にセカンダリードミナントを取り入れたアレンジなどを解説・実践していきます。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。