UAD ボーカル特集② Oxide Tape, Pure Plate Reverb, Galaxy Tape Echo
続・UADプラグインでハイクオリティなボーカル処理
UADプラグインを用いたボーカル処理特集、第2回目となる今回は、テープシミュレーターによるキャラ付け、リバーブ/ディレイによる空間処理をご紹介していきたいと思います。
UADプラグインは、ApolloインターフェイスのConsoleソフト内部に起動した場合には、完全にリアルタイムで使用できるため、エフェクトのかけ録りができたり、あるいは録音時にモニターのみにかけ、原音で録音することができるといった点も画期的なポイントです。
それでは、各プラグインの詳細を見ていきましょう。
UAD ボーカル特集② 動画
製品URL:https://hookup.co.jp/blog/35007
- 1UADボーカル特集 Antares Auto Tune Realtime, Manley VOXBOX Channel Strip
- 2UADボーカル特集 Oxide Tape, Pure Plate Reverb, Galaxy Tape Echo
Oxide Tape Recorder
今回の最初にご紹介するのは、テープシミュレータープラグインOxide Tape Recorderです。
ボーカル処理時にテープシミュレーターを使用する目的としては、軽いコンプレッションやエンファシスなど、テープマシン独特の質感をサウンドに与えてアナログ感を出すとともに、サチュレーションによる倍音付加効果で抜けを良くするといったものが挙げられます。
このOxide Tapeでは、非常に簡単な操作で手軽にテープ効果を得ることができます。
- INPUT/OUTPUT
INPUTはテープに録音する際の入力音量を決めるもので、この値が大きいと、より多くのテープ効果が得られます。最初は、効果がわかりやすいように高め、例えばVUメーターで0〜+2辺りで振れるよう設定しておくといいでしょう。INPUTを大きくすれば当然音量は上がりますので、その分をOUTPUTで補正します。適用前と比べやすいように、同程度の音量にしておくのが原則です。 - IPS(テープスピード)
15IPSは、ヘッドバンプと呼ばれるの低域の持ち上がりが特徴で、太くコシのあるサウンドになります。
一方で7.5IPSは、高域がややブーストされ低域はすっきり目となるため、明瞭感のあるサウンドになります。 - EQ(エンファシス)
エンファシスとは録音時のEQで、ノイズを軽減しテープの特性を最適化するために設計されたものです。DTMにおいては無縁のようにも感じますが、その特性変化を利用してサウンドメイクするのも大いにアリと言えます。
NABは3kHz以上が若干ブーストされ、カラッとした明るいサウンドになります。CCIRはさらに上、6.3kHz以上に作用し、くっきりと前に出てくるサウンドになります。 - NR(ノイズリダクション)
テープのハムとヒスノイズを取り除いてくれます。テープのリアリティにこだわるならばOFFもアリかもしれませんが、通常はONにしておいて問題ないでしょう。 - INPUT/REPRO
INPUTモードでは、テープサウンド無しで、マシンエレクトロニクスだけのサウンドをエミュレートします。テープ効果はなくなりますのでIPSの選択は意味がなくなります。一方でEQ効果は残ります。REPROはデフォルトのモードで、全ての効果が反映されます。テープ効果の中でも、コンプレッションやサチュレーションが欲しくないという場合は、INPUTを選択するのもありでしょう。
Pure Plate Reverb
Pure Plate Reverbはシンプルなプレートリバーブ専用プラグインですが、サウンドのクオリティは非常に高く、手早く直感的に音作りできるのが魅力です。
今回のセッティングとしては、リバーブ用のFXトラックを作成し、ボーカルトラックからセンドする形を取っています。センド方式ですのでもちろんMIXはWet Soloです。
- REVERB TIME
残響の長さを設定します。ボーカルの雰囲気を決める重要なパラメーターになります。ボーカルの切れ目ではオケに綺麗に着地するよう、また、歌詞が連続する部分では、リバーブがボーカルを曇らせないように注意しながら、調整していきます。 - LOW CUT
ボーカルリバーブでは、適度に低域をカットするのが定番です。このPure Plate Reverbでは、90Hz、180Hzから選択できます - PRE DELAY
リバーブの発音タイミングを調整します。少し遅らせておくと、各歌詞の歌い出しの部分などがスッキリします。ただあまり遅らせすぎると、変なリズムが生まれていまいますので注意です。 - BASS/TREBLE
残響に対するEQ処理を行えます。ここは本当に曲調や好みで千差万別なので、定まったセオリーはありません。ゲイン幅としては±12dBとマニュアルにありますが、周波数は明記されていませんので、耳で注意深く確認しながら、直感的に決めるといいでしょう。
Galaxy Tape Echo
Galaxy Tape Echoは、Roland RE-201 Space Echoを忠実に再現したプラグインで、ディレイとスプリングリバーブのいずれかもしくは両方をかけていくことができますが、先ほどリバーブはPure Plateを使用しましたので、ディレイに絞って使ってみたいと思います。
また、今回のディレイは、モノラルでボーカルにやや厚みと余韻を持たせる目的で適用しますので、トラックに直接インサートする形としました。
- HEAD SELECT
ディレイといえばまずディレイタイムを決めていくことが肝要ですが、それに当たって、このGALAXY TAPE ECHOではテープヘッドを選択する必要があります。この大きなツマミで、12種類の組み合わせから選択できますが、今回使用するのはディレイのみなので、ECHOと書かれている1〜4の中から選択することとなります。1〜3と進むにつれ、幅はありますが遅めのディレイタイムへとシフトしていきます。4は2と3の組み合わせです。 - TREBLE/BASS
ディレイに対してEQ処理を行います。ボーカルでは、ディレイにトランジェントが強く出て耳障りにならないようにするため、TREBLEを適量カットするのが定番です。 - ECHO RATE
HEAD SELECTで決めたテープヘッドに対し、ディレイタイムを設定します。まずECHO RATEを右に回しきり、最速から徐々に遅くしていきます。すると、ダブリングっぽくはないが、リズムに悪影響も及ぼさない、ちょうどいいポイントが見つかるはずです。テンポにもよりますが、140ms〜180msあたりが目安です。 - ECHO VOL
ディレイの音量を決めます。その他のパラメーターをいじる際は大きめに設定し、当たりがついたら下げてオケに馴染ませるといいでしょう。ディレイとはっきりわからない程度で良いです。 - FEED BACK
ディレイの減衰率を決めます。太さが欲しいだけならフィードバックは要りませんが、やや余韻を出してオケへの着地をソフトにしたい場合は、フィードバックを活用します。これもあまりディレイが主張しない程度にしておくのがベターです。
以上、2回に渡ってUADプラグインによるボーカル処理プロセスについてお送りしました。
UADには魅力的なプラグインがたくさんありますが、今回ご紹介したプラグインで一通りのボーカル処理を行うことができます。どれもクオリティが高く、レコーディングやミックスのレベルを一段引き上げてくれるでしょう。
UADプラグインを用いたボーカル処理特集、第2回目となる今回は、テープシミュレーターによるキャラ付け、リバーブ/ディレイによる空間処理をご紹介いたします。
>Oxide Tape / Pure Plate Reverb / Galaxy Tape Echo 使い方
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— SLEEP FREAKS (@SLEEPFREAKS_DTM) May 2, 2020