セカンダリー・ドミナント⑤ 実践編2/音楽理論講座
メロディーへの意識
前回までは、セカンダリー・ドミナントを取り入れている楽曲の分析や、今まで出てきたコード進行をアレンジとして取り入れるということを行ってきました。
今回は、これらの知識を踏まえつつ、メロディーの新しい可能性に焦点を当てていきます。
メロディーにおいても、前回までに出てきた”部分転調”という言葉がポイントになります。
部分転調とメロディーの関係
「”部分的”に”転調”する=他のキーからコードを借りてくる」ということまでは理解いただけたかと思います。
ですがそのコード上で鳴るメロディーも、他のキーのスケールの音から持ってこれるのではないか?という考え方も出来るのではないでしょうか?
この考え方は、「アヴェイラブル・ノート・スケール」「ペアレントスケール」といった概念と同時に説明されることが多いですが、今までの内容でできることを中心に進めていきます。
前回のカノン進行に続き、第23回、26回目で出てきた、「王道進行」と呼ばれるものを用意しました。
今回はKey=Cメジャーで、基本のコード進行をIVmaj7→V→IIIm7→VImとして確認します。
まず、この進行を2回繰り返したものを作成します。
前半部分に、このようなメロディーを用意しました。
先ほどのコードと合わせて聴いてみましょう。
セカンダリー・ドミナントコードを取り入れる
次に、2回目の繰り返しで、VImの前にセカンダリー・ドミナントを使ってみましょう。
V7/VI
などのパターンが考えられます。
今回はEm7の部分にE7を取り入れてみました。
一度聴いてみましょう。
メロディーをアレンジする
ここで、コードトーンを意識してみましょう。
KeyはCですが、部分転調の一つであるセカンダリー・ドミナントのE7を使用しているので、コードトーンにG#がついているところに注目です。
この音( G#)をメロディーで使用してみましょう。
このようなメロディーをつけてみました。
合わせて確認してみましょう。
✳︎メロディーは同時表示で重ならないように、ワンオクターブ上げています。
ハーモニックマイナー、メロディックマイナーの知識があれば、上記の内容はスケール理論がなくてもできそうですね。
同じくKey=Cの、別のコード進行でも試してみましょう。
セカンダリー・ドミナントである「C7」のコードトーン、B♭を意識してメロディーも乗せてみましょう。
もちろん、より詳しいスケールの知識があれば、この手法の見方も少し変わってきます。
しかしながら、まずはアボイド・ノートやハーモニック・マイナー、メロディック・マイナーの知識を使い、メロディーラインでも少し外れた音を取り入れて、新しい表現に挑戦してみてください。
まとめ
今回の記事のポイントは下記の通りです。
- 部分転調の概念は、コードだけでなくメロディーにも適用できる。
- コードトーンを意識し、特にセカンダリー・ドミナントのコードトーン(例:E7のG#)をメロディーに取り入れることで、曲に新たな色彩を加えられる。
- 異なるコード進行でも同様の手法を適用することで、多様な音楽表現が可能になる。
次回もコード進行にセカンダリー・ドミナントを取り入れるのですが、さらに今までとは違う使い方を分析、確認していきます。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。