マイナー版ツーファイブ(II-V)/音楽理論講座
マイナーの主要三和音以外を使う
今回は、メジャー同様の手順で確認しながら、マイナーの主要三和音以外の使い方も習得していきましょう。
実は今回の内容は、使い辛かったメジャーのダイアトニック7番目のコード「VIIdim」「VIIm7b5」を楽曲に自然に取り入れる方法の一つにも繋がってきます。
「25. ディグリーネーム(4和音)の活用とノンダイアトニックコードの存在」でも示した「Fly Me to the Moon (In Other Words)」の前半部分では、強い自然な流れで組み込まれていました。
この辺りの詳細については、また後の回で詳しく触れていきます。
ここからは、以下の内容も必須となりますので、復習しておいてください。
33. ツーファイブ(II-V)と強進行
49. 音名の相対表記(Scale degree names)ナチュラル・マイナー編
50. 主要三和音(ナチュラル・マイナー)とその機能(ファンクション)①
51. ナチュラルマイナーにリーディング・トーンを追加する
52.ケーデンスと色々な動き(マイナー編)
IVm (IVm7) の代理コードとなりうるIIdim (IIm7b5)
これまで、主要三和音のみで形成されたケーデンスをご紹介してきましたが、もちろんマイナー・キーの楽曲で使用されるのは、
その3つのコードだけではありません。
メジャーの際に「他のコードでもこれらのファンクションに近い機能を持てる」とお伝えしましたが、マイナー・キーでもその他のコードで置き換えが可能=「代理コード」として使用できる可能性がある、というイメージです。
メジャーの際は安定から次の展開があり、そして緊張感があり、 戻って安心感を得るという、代表的なケーデンス「T→SD→D→T」のSDの箇所にSD(代理)コードを入れて確認しました。
例)Key=Cメジャー
C→F→G7→C
C→Dm7→G7→C
安定から次の展開があり、そして緊張感があり、 戻って安心感を得るという一連のストーリーの流れは、さほど変わっていないように聴こえます。
つまり、IIm7をSDの代理として使用出来たという事ですね。
そして、ルート音(根音)に意識を集中して聞いてみると、強進行となる後者の方が、コード進行が力強いと感じると思います。
このイメージを、マイナーでも行ってみましょう。
52回で取り上げた、マイナーのT→SD→D→Tをベースに確認していきます。
❇︎全てトニック、サブドミナント,ドミナント上に出来上がるコードですので、T,SD(S),Dのみで表記する場合もありますが、今回もわかりやすく上記画像のようにしましょう。
各表で、青く囲んだ部分ですね。実際に取り入れてみましょう。
Key=Cマイナーで確認していきます。
T→SD→D→T
Tm→SDm→Dm→Tm Cm→Fm7→Gm7→Cm
これに対し、SDmの箇所に、代理コードとしてよく使用されるIIm7b5(IIdim)を使用してみましょう。
Tm→SDm(代理)→Dm→Tm Cm→Dm7b5→Gm7→Cm
悪くはないですが、少し曖昧な感じを残しますね。
では、後半をより”強い”流れにしたものに取り入れてみましょう。
T→SD→D→T
Tm→SDm→D→Tm Cm→Fm7→G7→Cm

Tm→SDm(代理)→D→Tm Cm→Dm7b5→G7→Cm

より強い進行感を感じますね。キーの感じも掴みやすいと思います。
一般の楽曲を分析してみると、こちらの流れの方が良く見かけると思います。
後半のSD→D→Tの強進行がより強くなった印象を受けますね。
ぜひ、楽曲分析の際もこの流れを見つけたら、注目してみましょう。
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記事の担当 伊藤 和馬/ Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。 バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
その技術を活かし、POPSから映像音楽まで、幅広い作曲活動を行っている。