メジャー・シックス/マイナー・シックス コード(後編)/音楽理論講座
アボイド・ノートを使っていないのに響きが悪いケースがある
前回メジャー・シックス / マイナー・シックスコードの構成を学びましたが、アボイド・ノートからの流れでシックスコードをご紹介しておきたかった理由について、今回解き明かしていきたいと思います。
まずはこちらをお聴きください。
メロディーとコードがうまく調和していない部分がありますね。
譜面とピアノロールで確認してみましょう。
特に、四角で囲んだ箇所を意識しながら、音源と併せて確認してみてください。
こうして確認してみると、特にアボイド・ノートを目立たせて使っているということもないですね。
ではなぜ、響きが悪く聴こえるのでしょうか?
それぞれを切り取って聞いてみましょう。
- Fmaj7の箇所(メロディのトップノートはF)
- Cmaj7の箇所(メロディのトップノートはC)
両方ともメジャー・セブンスコードでメロディーのトップ・ノートがルート音という共通点があります。
ここで気づいた方もいるかもしれませんが、メジャー・セブンスコード(R M3rd P5th M7th / 1 3 5 7)のM7th(7)とメロディーのR(1)が濁った響きを生んでいるのです。
今回はあえて非常に目立つ形で、同時にコードとメロディーを鳴らしているので、特に響きが悪く聞こえますが、作曲の過程でこのような構成になることはあります。
シックスコードを用いて響きを整える
では、どのように対処すれば良いのでしょうか。
いくつか方法がありますが、最も簡単なのは三和音(トライアド)にすることです。
響きの悪さは解消され、メジャーコードの特徴である曇りのない、透き通った明るさになりました。
もし響きがシンプルすぎると感じたら、メジャー・シックスコードを使用することもできます。
Key=CメジャーのImaj7の代理として、C6を使用したという形です。
この場合は、I6(ワン・シックス)と表記されますね。
- Key=Cメジャー:IIm7→IIIm7→IV→V7→I6(Dm7→Em7→F→G7→C6)
最後だけシックスにすると突然雰囲気が変わってしまう感じもしますが、前のコードに少し手を加えれば、スムーズに繋ぐこともできます。
このようなコードテクニックは後々紹介しますので、今回はシックスコードを用いてメロディーを美しく響かせる可能性について覚えておいてください。
メジャースケールで作成できるシックスコード
ではここで、メジャースケールから作り上げたダイアトニックコード上で、スケールの音だけで出来上がる、メジャー・シックスコードを探してみましょう。
このように、I,IV,Vの箇所でメジャー・シックスコードを作ることができます。
もちろん代理として使用しても良いのですが、V6にはトライトーンが含まれていないので、ドミナントとしては弱いというポイントを押さえておきましょう。
- C→G7→C
- C→G6→C
アイデアの一つとして、メジャー・セブンスコードなどと交互に使用するのも面白いです。
その際はトップノートを意識してメロディーを考えてみると良いでしょう。
楽曲解析の際にシックスコードを見つけたら、ぜひメロディとの関係も確認してみてください。
アボイド・ノートやシックスコードを学んだところで、次回は再びコードと楽曲構成に戻り、「終止」に注目していきます。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。