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9_著作権者人格権

サウンドクリエイターのための音楽著作権 公開 2014.02.02 更新 2026.07.17
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著作者人格権は著作権とは別に著作者に認められる精神的権利で、公表権・氏名表示権・同一性保持権の3つで構成されます。公表権は未発表作品をいつどのような形で公表するかを決定する権利、氏名表示権は実名かペンネームかを選択する権利、同一性保持権は作品のタイトルと内容の改変を防ぐ権利です。特に同一性保持権は楽曲の無断編曲を禁止するため重要であり、著作権譲渡時に「著作者人格権不行使特約」が契約書に含まれることが多いため注意が必要です。

こんにちは。高木啓成です。

まずはちょっと復習です。

著作者の権利には、「著作権」と「著作者人格権」がある、
ということは、今まで何度も出てきましたね。

そのうちの、「著作権」の中身である「支分権」について、
前々回(第7回)と前回(第8回)で詳しく見ました。

今回は、「著作者人格権」の中身である、
「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」の
3つの権利を詳しく見ていきましょう。

著作者人格権は、特に、同一性保持権が重要です。

1 公表権(18条)

公表権とは、著作者が、自分の未発表の著作物を、公表するかどうか、
どのような形で公表するか、いつ公表するか、を決定することができる権利
 です(18条)。

たとえば、僕が、ある楽曲を作曲したけど、出来があまりにも悪くて作曲家生命に関わると思い、
お蔵入りにしようと思っていたとします。

それなのに、勝手に、第三者に、
その楽曲を「作曲 高木啓成」として公表されてしまってはたまったものではありません。

ですので、著作者には、公表権が認められています。

図1


ただし、未公表の著作物の著作権を第三者に譲渡した場合は、
その第三者に、公表を同意したものと推定されます(18条2項1号)。

ですので、たとえば、僕が、ある著作物について、
音楽出版社や音楽制作会社と著作権譲渡契約を締結した場合は、
公表について同意したものと推定されます。

音楽出版社や音楽制作会社は、
著作物を利用するために著作権を譲り受けているのですから、当然といえば当然ですね。

2.氏名表示権(19条)

氏名表示権とは、著作者が、自分の著作物を公表するに際して、
氏名をつけるかどうか、どのような氏名をつけるかを決定することができる権利
です(19条)。

ですので、作曲者は、自分が作曲した楽曲を実名で公表することもできるし、
ペンネームで公表することもできます。

ある楽曲については実名で公表し、別の楽曲についてはペンネームで公表する、ということもできます。

図2

  • threebodytech 記事中

3 同一性保持権(20条)

同一性保持権とは、
著作者が、自分の著作物のタイトルと内容について、
意に反する改変を受けないという権利
 です(20条)。

たとえば、楽曲のBメロだけを勝手に変えたり、勝手に楽曲のタイトルを変えたりしたら、
同一性保持権の侵害になります。

それに加えて、楽曲に、勝手に別のアレンジを加えることも、
同一性保持権の侵害になると考えられています。

ですので、楽曲を無断で編曲することは、著作権の「翻案権(編曲権)」と、
著作者人格権の「同一性保持権」を同時に侵害する、ということになりますね。

図3

ただし、著作者の意に反する改変といえども、やむを得ない改変であれば、
同一性保持権の侵害にはなりません(第20条第2項第4号)。

たとえば、テレビの歌番組では、楽曲の尺を変更して、
ワンハーフで楽曲を演奏することが多いですね。

これは、本来の楽曲を切り取っているので、同一性保持権の侵害になりそうですが、
テレビの放送時間の制約上、やむを得ない改変に当たると考えられています。

4 著作者人格権の不行使特約

著作者人格権は、著作者の精神的な権利なので、他人に譲渡することはできませんし、
相続によって相続人に著作者人格権が移転することもありません。

これは、第6回で説明しましたね。

ですので、たとえば、
僕が、自分の楽曲の著作権を取引先に譲渡したとしても、著作者人格権は僕がもったままです。

しかし、楽曲利用の方法によっては、取引先は、
「いつ、高木が著作者人格権を根拠にクレームを言ってくるか分からない。」と思い、
楽曲利用を躊躇するかもしれません。

そこで、取引先は、著作権譲渡契約書に、「著作者は、著作者人格権を行使しない。」という条項を
入れることが非常に多いです。

これを「著作者人格権の不行使特約」と呼んだりします。
「著作者は、著作者人格権を放棄する。」という条項も同じ意味です。

たとえば、音楽制作会社などから仕事の依頼を受ける際、著作権譲渡契約書に
このような条項が入っていることが多いと思います。

もっとも、みなさんが、音楽出版社に著作権を譲渡するときの
音楽出版社が使用しているMPA統一のフォームには、この条項は入っていません。

この条項が入っていると、著作者人格権の3つの権利が行使できない、
ということですので、十分注意してください。

もっとも、実は、著作者人格権の不行使特約という条項自体、無効だという考え方もあり、
確立した判例はありません。(音楽実務は完全に有効であることが前提で話が進んでいますが)

5 今回のまとめ

今回は、著作者人格権の具体的な内容を解説しました。

著作者人格権の3つの権利のイメージをもってもらえれば、と思います。

あと、著作者人格権は、著作権譲渡契約書で、
不行使特約が入っていることが多い、ということを憶えてもらえれば、と思います。

次回は、著作権が行使できない場合(著作権の制限)について、解説していきます。

著者の紹介

高木啓成 写真
高木啓成
DTMで作曲活動中。
ロックバンド「幾何学少年」(現在、休止中)のリーダー、ドラマー。
弁護士として、エンターテインメント関係の法務、
中小規模の会社や個人の法律問題を扱う。

TwitterID : @hirock_n
Soundcloud : soundcloud.com/hirock_n

アクシアム法律事務所 : https://axiomlawoffice.com


よくある質問

Q1. DTMで作曲した楽曲を他者に譲渡した場合、著作者人格権はどうなりますか?

著作者人格権は著作者の精神的権利のため譲渡できず、著作権を譲渡しても著作者が保有し続けます。ただし著作権譲渡契約に「著作者人格権不行使特約」が含まれていると、その権利は行使できなくなります。

Q2. 楽曲を編曲する際、著作権者の許可だけで十分ですか?

いいえ。無断編曲は著作権の「翻案権」と著作者人格権の「同一性保持権」の両方を侵害します。著作権者から許可を得ても、著作者人格権不行使特約がない限り同一性保持権侵害のリスクがあります。

Q3. テレビ放送で楽曲の長さを短縮されるのは同一性保持権の侵害ではないのですか?

放送時間の制約という「やむを得ない改変」に該当するため、同一性保持権の侵害にはなりません。ただし恣意的な改変は侵害となるため、改変の必然性が重要です。

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