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サウンドクリエイターのための音楽著作権 公開 2014.01.19 更新 2026.07.17
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著作権法の支分権について、譲渡権、貸与権、編曲権の3つを詳しく解説した記事です。譲渡権は著作物やCD等を公衆に提供する権利で、一度行使されると消尽する特性があります。貸与権はレンタルCD店での利用が典型例で、個人間の貸し借りは対象外です。編曲権はアレンジやリミックスなど二次的著作物を創作する権利で、音楽制作に直結する重要な権利です。これらの支分権を理解することで、DTM制作や音楽配信時の著作権処理が適切に行えるようになります。

明けましておめでとうございます。高木啓成です。

今年最初の連載ですね。今年もよろしくお願いします。

さて、前回までに、著作者の権利には「著作権」と「著作者人格権」があることを説明したあと、
「著作権」の支分権である「複製権」、「演奏権」、「公衆送信権」を詳しく見ていきました。

今回は、支分権の残りの「譲渡権」、「貸与権」、「編曲権」を
ひとつひとつ確認していきましょう。

1 譲渡権(26条の2)

譲渡権とは、著作物、またはその複製物を、譲渡により、公衆に提供する権利です(26条の2)。

著作者は譲渡権を「専有」します。「専有」の意味は、前回お話しましたね。

譲渡権は、ちょっとイメージが湧きにくい権利ですね。

たとえば、僕は、「りんねのね」をCDにプレスして、それをインディーズレーベルに譲渡して、
全国のCDショップで売ってもらう契約をすることができます。これが譲渡権の内容です。

もし、僕が「りんねのね」をCDにプレスした段階で、泥棒がそのCDを全部盗み、
インディーズレーベルに譲渡しようとしているとします。

この場合、僕は、譲渡権に基づき、その泥棒に対して、「勝手に、譲渡により公衆に提供するな!」
ということが言えるわけです。

図1


実は、譲渡権は、WIPO著作権条約を締結したときに、
条約との整合性の観点から作られた規定であって、
実際は、別に無くてもよかった規定と考えられています。

他の法律や他の条文で対応可能だからです。

ではなんでこの連載で譲渡権を取り上げたかというと、
ひとつ、著作権法で重要な概念である、「消尽」という概念を憶えてほしいからです。

「消尽」とは、著作権者が、一度、権利行使をしてしまうと、その権利は消えてしまい、
もはや権利行使することはできない、
という概念です。

譲渡権は、一度、権利行使すると、消尽してしまいます。

さっきの例でいうと、僕が、インディーズレーベルではなく、ライブ会場で、直接、お客さんに、
「りんねのね」のCDを買ってもらったとします。

これは譲渡権の行使に当たるので、この時点で、僕の「譲渡権」は、消尽してしまうわけです。

ですので、その後、そのお客さんが、「もう聴き飽きた」と思い、
そのCDを中古CD店に売っぱらおうとしているとき、
僕は、譲渡権に基いて「勝手に中古CD店に売っぱらうな!」なんてことは言えないわけです。

僕がライブ会場で「りんねのね」のCDを売った段階で、譲渡権は消尽してしまい、
もはや権利行使できないからです。

図2

「消尽」の概念は、音楽著作権に限らず、
著作権法の勉強を進める上で必要な知識になりますので、ぜひ憶えておいてください。

2 貸与権(26条の3)

貸与権とは、著作物の複製物を、貸与により公衆に提供する権利です。著作者は、貸与権を専有します。 

典型例は、レンタルCD店が、公衆にCDを貸与する場合ですね。

メジャーレーベルのCDは、レンタルCD店が、JASRACなどの著作権管理事業者と包括契約を
結ぶことにより著作権者の許諾を得て、CDのレンタル事業をやっています。

「公衆に」という縛りがありますので、個人間での貸し借りは、貸与権の対象外です。
ですので、個人間での貸し借りであれば、著作権者に無断で自由に行うことができます。

図3

あとで説明しますが、著作権者だけでなく、実演家やレコード製作者も、
著作隣接権として、貸与権をもっています(95条の3、97条の3)。

ですので、実際は、レンタルCD店は、JASRACなどの著作権管理事業者だけでなく、
演奏家やレコード会社との関係でも権利処理をしています。

  • threebodytech 記事中

3 編曲権(27条)

編曲権とは、著作物に、編曲(アレンジ・改変)を施し、
新たな著作物(二次的著作物)を創作する権利
です。

著作者は、編曲権を専有します。

このように、音楽の場合、二次的著作物を創作する権利は「編曲権」と呼ぶのが普通ですが、
「編曲権」より広い概念である「翻案権」という言葉を使うこともよくあります。

ですので、音楽においては、「編曲権」イコール「翻案権」だ、と思ってもらって大丈夫です。

図4

二次的著作物については、第4回に詳しく説明しているので、復習してみてください。

4 今回のまとめ

前回と今回の2回にわたって、音楽に関係の深い主な支分権を見てきました。

実際には、支分権は他にもいろいろあり、音楽に関わるものであれば、
「伝達権」という支分権もありますし、
第4回で解説した「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」も支分権のひとつです。

支分権は、特に複製権が重要ですので、複製権をしっかり把握して、
それ以外の支分権についても、「こんなものがあったな」程度にでも憶えてもらえればと思います。

次回は、著作者人格権の中身である、
「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」を解説していきます。

著者の紹介

高木啓成 写真
高木啓成
DTMで作曲活動中。
ロックバンド「幾何学少年」(現在、休止中)のリーダー、ドラマー。
弁護士として、エンターテインメント関係の法務、
中小規模の会社や個人の法律問題を扱う。

TwitterID : @hirock_n
Soundcloud : soundcloud.com/hirock_n

アクシアム法律事務所 : https://axiomlawoffice.com


よくある質問

Q1. 譲渡権とは何ですか?DTM制作で関係がありますか?

譲渡権は著作物やその複製物(CDなど)を公衆に提供する権利です。DTM制作者が自作のCDをレーベルや店舗を通じて販売する際に該当します。一度販売すると権利は消尽し、その後の転売には影響しません。

Q2. 個人間でCDを貸し借りする場合、許可が必要ですか?

不要です。貸与権は「公衆に」提供する場合に適用されるため、友人間などの個人的な貸し借りは著作権者の許可なく自由に行えます。レンタルショップのような商業的貸与のみが対象です。

Q3. 編曲権とはどのような権利ですか?

編曲権は楽曲にアレンジやリミックスを施して新たな作品を創作する権利です。既存曲をリミックスしたりアレンジしたりする場合は、原著作者の編曲権許可が必要になります。

Q4. 支分権の中で最も重要なのはどれですか?

複製権が最も重要です。CD製造、配信、コピーなど音楽活動のほぼ全ての場面で複製行為が発生するため、DTM制作者にとって最初に理解すべき支分権です。