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目次

DTMer・音楽クリエイターのための著作権法 ① 著作権法の基礎知識

Author: sleepfreaks

書籍発売記念インタビュー

今回から3回に渡って「DTMer・音楽クリエイターのための著作権法」と題した内容をお送りします。
この企画は、作曲家としても活動されている弁護士の高木啓成さんが、著書「弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール」を出版されたことを記念し、インタビューを行わせていただいたものです。
本記事では内容のポイントを掲載しておりますが、ぜひインタビュー動画も併せてご覧ください。

第1回目の流れは以下の通りです。

  1. 1作詞者・作曲者の権利(「著作権」、「著作者人格権」)
  2. 2編曲者(アレンジャー)の権利
  3. 3バックミュージシャン(実演家)の権利
  4. 4原盤制作者の権利(原盤権)

DTMer・音楽クリエイターのための著作権法 ①著作権法の基礎知識 動画

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作詞者・作曲者の権利(「著作権」、「著作者人格権」)

作詞・作曲をすると、「著作権」が発生します。音楽ビジネス上での著作権とは、「歌詞」と「メロディ」についての権利というイメージです。
ただ、音楽ビジネス上は、作家が「著作権」を持ったままではなく、譲渡されていきます。まず音楽出版社に譲渡されて、それから、JASRACやNexToneが管理することになります。JASRACやNexToneが著作権を管理して、音楽の利用者(レコード会社や、放送局、YouTubeなどのインターネット上のサービス)から著作権使用料を徴収してくれるので、クリエイターは印税を受け取ることができわけです。

著作権の譲渡

作詞者・作曲者には、著作権のほかに「著作者人格権」という権利も発生します。この権利は、印税をもらえる権利というより、「きちんとクレジットを表記してもらいたい」とか「勝手に替歌にされたくない」と主張するための権利です。

編曲者(アレンジャー)の権利

編曲の場合も、作詞・作曲と同じように、その編曲部分について著作権と著作者人格権が発生します。
ただ、編曲者の著作権は、ギャラの支払いによってレコード会社側に著作権譲渡していると考えられています。そのため、基本的にはJASRACは管理せず、印税は発生しません。
ただ、「公表時編曲」という、一定の場合に印税がもらえる制度もあります。

編曲者の権利

バックミュージシャン(実演家)の権利

「実演家の権利」は、簡単にいうと、演奏についての権利です。
CDのレコーディングにバックミュージシャン(サポートミュージシャン)として参加した場合が典型例です。ただ、必ずしも生楽器でなければいけないというわけではなく、編曲の仕事でDTMで打ち込みで制作したトラックがCD音源にそのまま採用されたような場合も、「実演家」としての権利を持ちます。

実演家の権利

「実演家の権利」は、以下の3種類の権利です。

  • ①著作隣接権
  • ②報酬請求権
  • ③実演家人格権

①の著作隣接権は、ギャラの支払いでレコード会社側に買い取られていると考えられていますが、②の報酬請求権は、実演家やクリエイターが保有しています。報酬請求権は、簡単にいうと、CDが放送で使われたり、レンタルCD店でたくさん借りられるとお金をもらうことのできる権利です。
③の実演家人格権は、著作者人格権と似た権利ですが、実際はあまり行使されていません。

ポイントは、2つめの「報酬請求権」です。クリエイターが個人で放送局やレンタル店に請求することはできませんが、MPN(演奏家権利処理合同機構)に入会することで、報酬をもらうことができます。

報酬請求権

原盤制作者の権利(原盤権)

原盤権は、文字通りCD「原盤」=CD「音源」を作ったことによる権利、言い換えれば、レコーディングしてミックス・マスタリングを行った会社の権利です。法律上は、「レコード製作者の権利」と呼びます。
著作権が歌詞やメロディの権利であるのに対して、レコード製作者の権利は、CDの「音源」の権利です。

原盤権1

CD原盤には、メインアーティストの歌やバックミュージシャンの演奏なども入っていますが、レコード会社側は、上記のように実演家の著作隣接権を譲渡してもらっているので、CD「原盤」を自由にビジネスに利用することができます。
このように「原盤を自由にビジネスに利用することができる権利という意味で、「原盤権」と呼んでいます。

原盤権2

音楽ビジネスでは、CDの発売元レコード会社が「原盤権」を管理しています。
でも、例えば、皆さんが地下アイドルのプロダクションに楽曲提供するような場合は、今までに見てきた著作権、実演家の権利、レコード製作者の権利を、どのように取り扱うのかを決めていく必要があります。その辺りをしっかり契約書で定めておきたいところですね。



著書「弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール」では、ここに掲載されている内容についてさらに詳しく解説しています。



次回は、作家事務所、音楽出版社、著作権管理事業者について取り上げます。
既に作曲家やアレンジャーとして活動されている方、または将来それらを目指している方に特にご覧いただきたい内容となっていますので、どうぞ引き続きご覧ください。

【特別講師】高木 啓成 弁護士

高木啓成

高木 啓成/Hironori Takaki
弁護士・作曲家
音楽・動画関連企業、ゲーム会社、タレント事務所、デザイン事務所などをクライアントとし、著作権法を中心とするエンターテイメント法務を取り扱う。
「Just a moment」HKT48 作曲
「憧れで終わらせるな」桃色革命 作詞・作曲・編曲
「恋は溶けてくIceCream」桃色革命 作曲・編曲
その他、多数


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