DTM上達「コンプレッサー編」Waves製品6種の機能比較と使い分け
コンプの特性を掴んで使い分けよう
今回は色々と種類があるコンプレッサーをどのように使い分けるのか、という視点で、Wavesの代表的なコンプを比較していきたいと思います。
取り上げるコンプは以下の通りです。
特に初心者の方は、まず、なぜこんなに色々なコンプが存在するのかという疑問を持たれるのではないかと思います。
これは、時代とともに進化してきた、ということも言えますが、やはりそれぞれに特性があり、ソースやシーンによって使い分けることができれば、クオリティアップや作業効率化に繋がります。
それでは、一つ一つ見ていきましょう。
Waves製品コンプ6種の機能比較と使い分け 動画
C1 Compressor
まずは基準となるコンプレッサーとして、C1を見てみましょう。
コンプではおなじみのグラフィックが表示され、パラメーターは小数点以下が細かく、きっちり作り込めるコンプということが伺えます。また、かなり極端な数値も設定可能で、アタックタイムは最速0.01msと相当速くすることもできます。
サウンドは非常に素直で、設定通りの出音になります。クセがないゆえに、ナチュラルなコンプレッションから、いかにも潰しましたというサウンドまで、幅広く対応できるのが強みです。
▶︎バイパス
▶︎アタックを比較的遅めにしてしっかりコンプをかけたパンチのあるサウンド
▶︎リリースを早めにして浅めにコンプをかけ、やや余韻を持たせたサウンド
弱点としては、細かさゆえにやや設定に手間取る、また初心者にハードルが高いと言ったところでしょうか。
逆に言えば一周回って玄人好みするコンプと言ってもいいかもしれません。
コンプレッサー Attack 動画
コンプレッサー Release 動画
Renaissance Compressor
続いてはRenaissance Compressor、通称Rcompです。
Renaissanceシリーズの中でも根強い人気で、長年愛用されている方も多いですね。
このコンプの特徴としてまず挙げたいのは、パラメーターが少なく、手早くサウンドメイクできるという点です。
このお手軽設計を支えているのが、ARC、Auto Release Controlです。ソースや設定値に応じて最適なリリース設定としてくれます。
設定値に応じて、と言いましたが、これは完全にオートではなく、遅め、早め、といった設定が可能です。
特に嬉しいのが、遅めに設定しても次のアタックに間に合うようにリダクションが戻る点ですね。
次に挙げたいのがC1にはないキャラ付け機能です。
その一つが、Electro/Optoの切り替え。これはリリースのキャラクターに違いをもたらします。
Electroはゲインリダクション3dB以上のリリースが遅く、3dB以下が速くなります。Optはその逆です。これによりコンプのかかり具合が変わるため、好みに合わせて切り替えることができます。
比べてみましょう。
▶︎Electro
▶︎Opto
今回はElectroの方がやや余韻が多めで、Optの方がスッキリした印象ですね。
もう一つがその隣の、Warm/Smoothの切り替えです。
Warmは低域の倍音を付加する効果があり、太く温かみのあるサウンドになります。Smoothは特にキャラ付けしません。
比べてみましょう。
▶︎Smooth
▶︎Warm
Warmの方がキックがふくよかになる印象ですね。
弱点は挙げにくいくらい万能なコンプなのですが、強いて言えばC1ほど細かい数値は設定できない点でしょうか。
それから、Electro、Smoothに設定しても多少の色はつきます。完全に自然な挙動を求めるならC1ですね。
コンプレッサー Gain Reduction 動画
H-Comp
続いては、こちらも愛用者が多い定番のコンプレッサー、H-Compです。
このコンプの特徴はまず、見た目ですね。メーターもアナログライクになっていますし、各パラメーターもつまみです。この辺りで好みが分かれるかもしれません。
パラメーターは一般的なものの他、PUNCH、ANALOG、MIXといったものが加えられています。
PUNCHは、アタックタイムに関わらず、コンプのかかり始めで一定量のサウンドをスルーするというものです。その分鋭いトランジェントが得られ、文字通りパンチのあるサウンドになります。
わかりやすいようにアタックを最速にして、PUNCHを上げたものを聞いてみましょう。
のように非常にアグレッシブなサウンドメイクが可能です。これはちょっとC1では真似できないですね。
続いてMIXです。
コンプのかかったサウンドと、ソースのサウンドをミックスできるというものですね。
コンプをきつめにかけておいて、MIXを下げると、通常のコンプでは出せない絶妙なかかり具合となることがあります。
これをC1でやろうとすると、AUXやFXトラックにコンプを立ち上げてセンドしなければなりません。この一手間が省けるのは大きいです。
ミックステクニック パラレルコンプレッション 動画
ANALOGは、4タイプのアナログ機器の風合いが用意されていて、それぞれ倍音の乗り方が違います。
なしも含めて、好みに合わせてチョイスできるのがいいですね。
もう一つ大きな特徴が、リリースタイムをテンポシンクできる点です。
これはサイドチェインによるダッキング効果を得たい場合に便利です。ホストのテンポにシンクさせると、リリースが音符単位に設定できるようになります。
このようにダッキングが音楽的となり、リリース設定が容易になります。
H-Compも非常に万能なのですが、弱点を挙げるならゲインリダクションの数値が細かく見れないといったところでしょうか。
H-Comp特有の機能が必要なく、数値を追い込みたい場合はC1をチョイスということになるでしょう。
サイドチェインを使用したグルーブテクニック 動画
MV2
さてここまでベーシックなコンプでしたが、ここから少し趣向を変えて、より特徴的なものを挙げていきます。
このMV2はLOW LEVEL、HIGH LEVELという非常にシンプルなパラメーター構成ですが、唯一無二とも言える機能がLOW LEVELです。
通常のコンプレッサーは音量が大きい部分を潰しますが、このLOW LEVELは音量が小さい部分を持ち上げてくれます。
その際、大きい部分への影響は最小限に抑えられるので、演奏ニュアンスを残したい場合などに便利です。
例えば、このようなギターのカッティングですね。
ブラッシングの部分をもっと大きく聞かせたい、しかしコンプで潰してしまうと、ニュアンスが変わってしまう、といったことがよくあります。
そこでLOW LEVELで調整してみましょう。
いい感じでブラッシングの部分が持ち上がってきましたね。
これはちょっと他のコンプでの再現は難しいかと思います。レベル調整の際に、コンプ臭さを出したくない時にはどんどん使っていきいましょう。
CLA-2A/CLA-3A
続いては、CLA-2AそしてCLA-3Aです。
これらはオプティカル、日本語で行くと光学式という、原始的な方式を採っているコンプで、アタックやリリースの設定はできません。ピークリダクションで強さを決め、ゲインで音量調整するだけ。かつ、固定値のアタックタイムは非常に遅いです。
しかし、この遅さがほどよくナチュラルなコンプレッションをもたらしてくれるため、ボーカルトラックなどに頻繁に使用されます。
コンプレッサーのタイプ別活用法② optical 動画
2Aで確認してみましょう。
▶︎バイパス
▶︎CLA-2A
メーターを見ても、非常に緩やかな動きで、自然にダイナミクスを整えてくれているのがわかるはずです。
そして2Aと3Aの違いとしては、3Aの方が若干アタックとリリースが早い点が挙げられます。同じボーカルにかけても少しニュアンスが変わりますので、楽曲やソースに応じて使い分けるといいでしょう。加えて、3Aの方が音質変化が顕著です。2Aよりも多めに倍音が加わる感じがします。
3Aのサウンドも聞いてみましょう。上の2Aのものと比べてみてください。
▶︎CLA-3A
クイックな動きと倍音の関係で、3Aの方がやや押し出しが強い感じがしますね。
これらオプトコンプの弱点として、そのシンプルさ故に細かな追い込みには向きませんが、程よくならしたい場合にはとても手早く結果を得ることができます。
dbx160
最後にご紹介するのが、このdbx160です。
これはVCAタイプのコンプレッサーで、比較的新しい方式のため、俊敏でクリアな効き味が特徴です。
コンプレッサーのタイプ別活用法① FET/VCA/真空管 動画
さほどコンプ臭くならないので、マスターやバストラックなどで音をまとめる目的で使用されることも多いです。
その場合、あまりきつくかけず、ゲインリダクション-2db程度にとどめておくのがコツです。このdbx160もアタック・リリースのパラメーターはなく、THRESHOLDとCOMPRESSIONの2つで調整します。
コンプレッサー Threshold 動画
マスター向きにセッティングしてみましたので、サンプルをお聞きください。
▶︎バイパス
▶︎適用後
程よくまとまり感が出ていますが、いかにもコンプをかけた、という感じにはなっていませんね。
さらに、プラグインならではの特徴として、MS個別のコンプレッションを行うことができます。
右下のMSボタンを押すと、パラメータの上段がM、下段がSとなります。
Mをやや強めにコンプレッションし、Sのアウトを上げて広がりと迫力を出してみました。
もちろんdbx160はマスターバスだけでなく様々な用途に使用可能です。深くかけて積極的に潰すこともできますが、操作できるパラメーターは限られるため、さっと試してソースとの マッチングが良ければ採用、といった感じかと思います。
以上、今回はWavesの様々なコンプの使い分けについて取り上げました。
万能なデジタルコンプで腕を磨いていくのもいいですが、適材適所のコンプを用いれば格段に作業効率が上がります。
それぞれの特徴をうまく掴んで、使い分けてみてください。
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「コンプには様々な種類があり迷ってしまう」というDTM初心者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、Waves社の代表的なコンプ6種を厳選し、機能比較や使い分けを解説していきたいと思います。詳細:https://t.co/aBw2LZdxGV pic.twitter.com/4wNILy1GmG
— SLEEP FREAKS (@SLEEPFREAKS_DTM) July 20, 2020