楽曲のコード進行をアシストする Plugin Boutique Scaler 2 新機能

Author: sleepfreaks

更に進化した作曲支援機能

scaler2

今回は以前解説して好評をいただきましたScalerが、2にバージョンアップされましたので、主な新機能を解説していきたいと思います。
これまでの機能に加えて、さらに作曲・アレンジを支援してくれる機能が充実しましたので、ぜひご注目ください。

前バージョンの基本機能については踏襲されていますので、初めての方はこちらもチェックしてみてください。

楽曲のコード進行をアシストする Scaler 2 新機能

  1. 1Scalerの使い方 基本編
  2. 2Scalerの使い方 実践編
  3. 3Scaler 2 新機能の解説


Scaler インストール〜アクティベーション方法

Logic Pro XでのMIDI読み込みの注意点

目次
  1. 1音色とコードセットの追加
  2. 2コード演奏をアシストしてくれるPERFORM機能
  3. 3ボイシングをアシストしてくれるVOICE GROUPING機能
  4. 4演奏に人間らしさを加えるHUMANIZE機能
  5. 5転調をアシストしてくれるMODULATION機能
  6. 6コードごとに細かな演奏内容を設定できるEDIT機能
  7. 7オーディオからコードとスケールを割り出すAUDIO DETECT

音色とコードセットの追加

Scalerはそれ自体が音色を持っていて、以前から何種類か選択できましたが、今回30種類に増えました。クオリティも上がってきています。

instrument

それからコードセット、こちらは以前から大量にありましたが、さらに増えて、200種類以上になったとのことです。
見た感じでは、特にArtistsの項目が大幅に増えているようですね。

codeset

コード演奏をアシストしてくれるPERFORM機能

コード進行は確かに曲の着想を与えてくれるのですが、フレーズなしでコードだけを聴いても何となくピンとこないという方も多いのではないでしょうか?
そこで重宝するのがPERFORM機能です。
これはいわゆる自動演奏機能で、こちらのPERFORMボタンを点灯させると有効になります。
そしてその右で種類を選択するのですが、この中でARPEGGIOとSTRUMMINGは以前のバージョンからありました。

perform

新しく加わったのがEXPRESSIONSです。こちらには様々な演奏パターンが用意されていて、指定したコードを演奏してくれます。

expressions

音色を変えたり、倍速や半分のテンポにしたり、色々と試していると、曲のイメージが自然と湧いてきそうです。

ちなみに、ちょっと残念なのが、再生ボタンで演奏させると、コードチェンジの際にリズムが乱れてしまう点です。
このリズムの乱れは、DAW内に貼り付けると解消されます。

貼り付けたいコードをこのようにドラッグで囲み、

select chord

DAWにドラッグ&ドロップすると、普通のリズムでプレイバックされます。

drag_drop

何れにしても、このリズム問題は、ぜひ次期バージョンで解消してもらいたいところですね。

ボイシングをアシストしてくれるVOICE GROUPING機能

さて次は、ボイシングをアシストしてくれるVOICE GROUPING機能です。こちらからタイプを選択できます。

grouping

DYNAMICは以前のバージョンにもあり、コードチェンジがスムーズになるようボイシングしてくれるものですが、新たにオクターブの変更もできるようになりました。

GROUPING C1-B2、C2-B3、C3-B4の3つは、その名の通り指定された範囲内に収まるようボイシングしてくれるものです。

OPEN VOICINGは、1オクターブ以上の幅を使って広がりのあるボイシングにしてくれます。ストリングスのボイシングなどに向いていますね。

EXTRACTEDは通常グレーアウトしていて、使用するには少し手順が必要です。
まず目的のコードを右クリックして、Extract Voicingを選択します。

extract

これで、このコードのボイシングを抽出しました。
そしてVOICE GROUPINGからExtractedを選択すると、先ほど抽出したボイシングを他のコードにも当てはめることができます。

演奏に人間らしさを加えるHUMANIZE機能

続いてその隣にあるのが、HUMANIZE。ドラム音源などではお馴染みの機能ですね。

humanize

ヴェロシティやタイミングをランダマイズしてくれるというものです。PERFORM機能と組み合わせれば、自動演奏にちょっとした人間っぽさを加味することができます。

これをDAWにドラッグ&ドロップすれば、このように微妙にノートが前後してバラけているのがわかります。

humanize2

転調をアシストしてくれるMODULATION機能

続いてはBセクションに移って、MODULATIONです。

modulation

MODULATIONは日本語に訳すと転調を意味します。その名の通りこの機能は、転調する際に最適なコード進行を提案してくれるものということになります。
クリックしてみると、上にはCセクションに配置したコード進行が表示されています。こちらのキーはC Majorです。

modulation2

そして、左の五度圏の部分から、転調したいキーを選択します。C# Majorに転調するとしてみましょう。
すると、その橋渡しとして最適なコード進行が中央に表示され、下には転調後のコード進行が表示されます。

modulation3

ここからそのままCセクションに貼り付けられればいいのですが、PATTERN1だけでは足りなくなってしまいます。かといって新たなパターンを作成すると、進行が消えてしまうんですね。ここがちょっと残念です。
というわけで、これらの進行を使いたい場合は、MODULATIONの画面からそのまま選択してDAWに貼り付けるのが現実的と言えます。

コードごとに細かな演奏内容を設定できるEDIT機能

続いてはCセクションに移ります。ここにEDITというボタンがありますが、クリックすると各コードを細かく調整できるモードになります。

edit

edit2

オクターブ変更や、転回させるINVERSION、移調させるSEMITONEなどのCHORD VOICINGは以前からありましたが、その下の項目が追加されています。
PLAYBACK TIMINGSでは、コードのデュレーション、つまり1小節や2拍などといった長さの設定がコードごとにできます。より細かなコード進行が構成できますね。

playback_timings

なお、基本となるデュレーションは、右上の歯車マークをクリックし、PLAYBACKのCHORD DURATIONで設定することができます。ここを4BEAT、つまり1小節としておき、時折DURATIONを0.5にする、といった使い方が実用的かと思います。

setting

ssetting2

さらにその下のPLAYBACK PERFOMANCESでは、先ほどご紹介したPERFORM機能を、コードごとに切り替える、といったことも可能となっています。

playback_performances

もちろんドラッグ&ドロップした際には、設定した内容が反映されます。

drag

オーディオからコードとスケールを割り出すAUDIO DETECT

AUDIO DETECTを使用するには、あらかじめオーディオトラックを作成しておき、インサートにScaler2Audioを適用します。

audio track

そして、ウインドウに対してオーディオファイルをドラッグ&ドロップします。

drag audio

これだけです。DETECTモードに切り替わり、瞬時にコードが割り出されます。

audio detect

と、このようにご覧いただくと非常にスムーズなようですが、元のファイルはエレピによる非常にシンプルなコード演奏です。
画像のFsus2は実はCsus4なので、微妙に違っていたりします。

様々な楽器やフレーズなども試してみましたが、まだまだこの機能は発展途上のようで、正直精度が高いとはまだ言えないと感じました。
ただ、完璧でなくてもいいのでヒントが欲しい、といった際には便利なのではないでしょうか。



以上、Scaler2の主な新機能について解説しました。
少し惜しい部分もありましたが、Saler1の便利さはそのままに、アレンジや転調などの補助的な機能が大幅に進化しています。
あまり肩肘を張らずに、色々な機能で遊んでいると、曲の着想がふと生まれてくる、そんなプラグインだと思います。



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記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru

Sleepfreaks DTM講師 大鶴 暢彦
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