楽曲のコード進行をアシストする Plugin Boutique Scalerの使い方② 実践編

Author: sleepfreaks

Scalerを使いこなそう


Scaler

今回はScalerの解説第二弾ということで、アップデートで加わった新しい機能もいくつか交えながら、実践的な使い方を解説していきたいと思います。
前回の記事を踏まえての内容もありますので、未読の方は事前にこちらをご覧ください。

楽曲のコード進行をアシストする Plugin Boutique Scalerの使い方② 実践編

  1. 1Scalerの使い方 基本編
  2. 2Scalerの使い方 実践編
  3. 3Scaler 2 新機能の解説


Scaler インストール〜アクティベーション方法

Logic Pro XでのMIDI読み込みの注意点

メロディを分析してスケールを割り出す

まず楽曲作りのスタートとして、思い浮かんだメロディを打ち込んでみたとします。

melody

このメロディにコードを当てていきたいわけですが、現段階ではキーとスケールがわかりません。
ここで活用したいのが、ScalerのDetectという機能です。

Detectを使用するには、まずScalerのトラックにメロディのMIDIを移動させます。
そしてDetectモードに切り替えます。するとStartボタンが表示されますので、クリックして点灯させます。

detect

この状態で、一度メロディを再生します。するとScalerがメロディを読み取って、その内容が表示されていきます。

detect2

終わったらStopを押し、メロディのMIDIを元のトラックに戻しておきましょう。
判定されたスケールは、最も考えられるのがB♭メジャーとGマイナーということになります。BbメジャーとGマイナーは使用する音は同じなので、楽曲の雰囲気でいずれかを決定します。
今回はGマイナーを選択しました。

ここで先ほど読み取った音を見ていただきたいのですが、F#/G♭がグレーになっていますね。このグレー表示は、選択したGマイナースケールに含まれていないことを示しています。

Gm

では、Gマイナースケールは間違いなのでしょうか?
他の候補を見てみましょう。その下に、Gハーモニックマイナースケールというのがありますね。こちらを選択すると、先ほどのF#は青く点灯しましたが、今度はFがグレー表示となりました。

Ghm

どうやらこの楽曲は、G(ナチュラル)マイナースケールとGハーモニックマイナースケールが混在しているようです。
FとF#が鍵となりますが、Fの方が使用回数が多いので、とりあえずはGマイナースケールとしておきます。

スケールに合ったコードの割り当て

スケールが決定されると、その下の段にGマイナースケールのダイアトニックコードが表示されます。

diatonic

この楽曲に対しては、主にこれらのコードの中から当てはめればよいということです。

当てはめる際には、画面上でクリックしてもいいのですが、前回ご紹介したBind MIDIを使用して鍵盤にアサインしてみましょう。

bind

現在のバージョンでは、右端のA、B、Cと書かれているところをクリックして点灯させると、そのゾーンのBind MIDIが有効となります。
使用する範囲は右上の、Bind MIDIと書かれているところの+-で調整します。

ダイアトニックコードだけで進行を考えていると、なんとなく普通で面白みがないと感じることがあります。
そこで活用したいのがSTYLEです。

style

Triadと書かれている部分の左右矢印をクリックすることで、7thやテンションを加えることができます。この際もちゃんとスケールが考慮されていますので安心です。
一つ一つ切り替えていくことも出来ますが、一番右のResetと書かれているところの左右矢印をクリックすることで、全体を切り替えることも出来ます。

ある程度コードの目処がついてきたら、Builderの空きスロットにコードを割り当てていきましょう。

ここでもう少しコードの可能性を探ってみたいと思います。
コードバリエーションをクリックすると、様々なバリエーションが表示されます。

variation

この中から気に入ったものを探したら、再度ドラッグ&ドロップして入れ替えていきます。

Builderでは、MacならOption、WindowsならAltを押しながらドラッグ&ドロップすると、コピーすることができます。

copy

前述の通り、今回のサンプル楽曲はGマイナーとGハーモニックマイナーが混在していましたので、途中でスケールを切り替えます。
Gハーモニックマイナーを選択すると、以下のようなメッセージが表示されます。

message

これは、現在指定している7thなどのSTYLEを維持するかを聞いています。
YESとすればSTYLEがリセットされず、引き継がれます。

ダイアトニックコードや、コードバリエーションにないコードを使いたい場合は、Create機能を活用します。

create

クリックすると、 コードの構成音を入力する画面になります。この入力は、鍵盤をクリックすることで行います。

create2

そうすると、中央の箱にコードネームが入りますので、ここからドラッグ&ドロップできるようになります。
Clearで中央のコードの消去、Backで元の画面に戻ります。

Builderは一見すると8個までに見えますが、左の1、2、3、4というボタンで切り替え、最大32個登録することができます。
1つのBuilderに作った連続するコード進行を、一気にコピーすることも可能です。
その際は、Macならcommand、WindowsならCtrlボタンを押しながら、コードを複数選択します。

multi-copy

この状態で、Macならoption、Windowsなら Altキーを押しながらドラッグ、2番のところに持っていきます。2番の空きスロットが表示されますので、ここにドロップしましょう。

multi-copy2

コード進行が決まったら、DAWに反映させましょう。右下のDrag MIDIからコード進行全てをドラッグ&ドロップできます。

drag-midi

その際、Drag MIDIの隣にある音符マークで、コードのデュレーションを決めておくことができます。

duration

コードを分析してスケールを割り出す

逆のアプローチとして、コード進行がわかっていてキーやスケールがわからない場合、あるいはコードネームがわからない場合、進行をベースにDetectを行なうことが出来ます。
メロディの時と同様に、コード進行のMIDIをScalerのトラックに移し、DetectのStartボタンを点灯させます。

chord-detect

この状態で再生すると、コードが分析されコードネームが並んでいきます。

スケールに合ったメロディ作り

これで、選択されたスケールをベースにメロディ作りを行うことが出来ます。
メロディを考える際には、Scale Lockボタンを活用するといいでしょう。オンにすると、どの鍵盤を押してもスケールの音のみが発音されるようになります。

scale-lock

更にその隣のアイコンをクリックし、White Keys Onlyに切り替えると、白鍵のみでスケールを演奏するモードになります。

white-keys-only

white-keys-only2

このモードでは、スケールの始まりの音がドの位置に来ます。Gマイナーの場合、ドを押すとソの音が出るという仕組みです。その点だけ注意しておけば、黒鍵の多い厄介なスケールでも、白鍵だけでメロディを考えることが出来ます。
もちろん、MIDIインプットをScalerとした状態でレコーディングを行えば、MIDIデータはきちんとGマイナーのスケールに変換されています。

ギターのフレットボード表示

最後にもう一つ、付け加えておきたいのが、フレットボード表示です。
鍵盤表示の左に、鍵盤とギターのアイコンが並んでるところで、ギターの方をクリックして点灯させると、鍵盤表示がギターのフレットボード表示に切り替わります。

fret-boad

このフレットボード表示では、現在選択しているスケールに含まれる音が青色で表示され、それ以外はグレーアウトしています。これを見ながらギターでリードフレーズなどを考えれば、音を外すことはないわけです。

鍵盤で考えたメロディをギターで弾きたいという場合は、メロディのMIDIをScalerのトラックに移し、再生します。このようにどの弦、どのフレットを押さえればいいか表示してくれます。複数表示される場合もありますが、その際は最も運指しやすい流れを採用していけばいいでしょう。

fret-board2

また、コード部分にカーソルを重ねると、その構成音がフレット上で強調表示されます。明るい色が現在のボイシングに含まれる音、暗い色がそれ以外ということになります。

chord

無理に鍵盤のボイシングに合わせることもありませんので、運指上無理のないポジション、あるいは使いたい高さを探して、ギターで押さえればよいでしょう。



以上、このようにScalerは、コードの知識が乏しかったり、鍵盤演奏が苦手という方にとって、非常に心強い味方となります。
ご興味を持たれた方は、ぜひ作曲時に活用してみてください。




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記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru

Sleepfreaks DTM講師 大鶴 暢彦
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