iZotope RX 7 の使い方② ブレス・ノイズ処理

Author: sleepfreaks

有用性の高いモジュールを紹介

RX 7

今回はiZotope社のオーディオリペアツール、RX 7の使い方第二弾ということで、各モジュールを用いた処理を取り上げていきたいと思います。
非常に多くのモジュールがありますが、その中でも個人的に有用性が高いと感じたものからピックアップしました。

iZotope RX 7 使い方動画②

  1. 1RX7の基本概要
  2. 2ブレスや各種ノイズの処理
  3. 3各種ノイズ、リバーブ、クリップ除去
  4. 4iZotope RX 8 新機能解説
  5. 4iZotope RX 9 新機能解説




Breath Control

RX 7のモジュールは、画面右のメニューの中に並んでいます。

modules

ここから目的のものを選ぶわけですが、まずはBreath Controlを使用してみましょう。

breath

ブレスを敢えて入れたサンプルを用意しましたので、一度お聞きください。


これに対して、Breath Controlを適用していきます。
使い方は非常に簡単で、Sensitivityでブレスを検知する感度を設定し、Target Levelでブレスをどの程度の音量にするかを設定するだけです。
まずは、Target Levelを無音にして、Sensitivityを調整してみましょう。効果を試聴するには、Previewボタンを押して再生します。

breath2


このサンプルの場合、Sensitivityをマックスにしても、ブレス部分と通常の部分としっかり分けて処理されていますね。

もし通常の部分にも反応してしまう場合は、ギリギリブレスが消えるくらいのところまで下げて調整します。
ブレスを完全に消したくない場合は、Target Levelを上げて調整します。Target Levelは絶対値ですが、Gainでは現在の音量から相対的にどのくらい下げるかを設定することもできます。
プレビュー内容に満足したら、Renderボタンを押して確定します。

render

De-Click

続いて、こちらのサンプルをお聞きください。

セリフの通り様々なノイズが混ざっていますね。こちらを綺麗にしていきたいと思います。

まず、大きなバチッといった感じのノイズが気になります。こういったものを除去するには、De-Clickを用います。

De-click3

  • Algorithm:クリック除去の処理方式。サウンドを聴きながら効きが良いものを選択します。
  • Frequency skew:クリック検知の周波数特性。左に寄せると低域、右に寄せると高域を検知します。
  • Sensitivity:クリック検知の感度を決めるパラメーター。なるべく高くしたいところですが、上げすぎると声がおかしくなります。適度なポイントを探りましょう。
  • Click Widening:検知されたクリックに対して処理する周囲の範囲を調整します。非連続的なクリックの修復やその他のデジタル的な波形の問題を修正する場合はここの数値を高く設定しますが、あまり高くしすぎると声がおかしくなります。可能な範囲にとどめておきましょう。

今回のサンプルでは、MULTIBAND(RANDOM CLICKS)を選択し、低域寄りを狙ったところ、綺麗に消すことが出来ました。


Spectral De-noise

次に、全体に薄く入っているホワイトノイズなどの雑音を消していきたいと思います。
ここで使用するのは「Spectral De-Noise」です。

spectral de-noise

Spectral De-Noiseは不快なノイズを分析し、それを信号から差し引くことで、ノイズを除去します。
分析を行う際には、できればノイズのみが鳴っている箇所を範囲選択し、Learnボタンを押します。

learn

  • Threshold:下げるほど影響が少なくなり自然になりますが、ノイズが残りやすくなります。上げるほどにノイズは消しやすくなりますが、欲しい部分まで削られて不自然になることがあります。
  • Reduction:ノイズの削減量。THRESHOLDと密接な関係があるため、両者のバランスで最も自然になるところを探ってみてください。
  • Quality:特にCPU負荷の支障がなければ最大にしておいてOKです。
  • Artifact Control:低い方がノイズと声の分離がよくなります。ただ、場合によっては声の音質が悪くなることもあります。その場合、音質低下が気にならないレベルまで、右に動かして調整します。
  • Reduction curve:チェックを入れると、アナライザー中央に青い線が表示されます。これによって帯域ごとのノイズ削減の強さを調整することができます。クリックでポイントを作り、あげればその部分のノイズ削減が弱くなり、下げると強くなります。
  • Smoothing:Reduction curveを緩やかな曲線にしたい場合、スライダーを右に動かします。

このようにノイズが大幅に削減されました。


De-plosive

続いて、最初の「さ」の部分に入ってしまっている、「ボフッ」とした息の音、いわゆる破裂音を処理していきたいと思います。
破裂音への対処には「De-Plossive」を用います。

de-plossive

  • Frequency Limit:破裂音除去の上限周波数を決めるパラメーター。声の低域が抜けるような際は左に動かして下げます。
  • Sensitivity:破裂音検知の感度を決めます。高くするほどよく破裂音を拾いますが、声の成分に影響が出ることがあります。
  • Strength:破裂音を削減する際の強さを決めます。小さくすればもちろん破裂音は削減されなくなり、大きくするにつれて削減度合いが強くなります。あまり大きくしすぎると、全体的に低域が薄くなる傾向があるようです。

全体の低域が抜けないよう調整すると、破裂音だけを綺麗に取り除くことができます。


De-ess

仕上げに、歯擦音を取り除きましょう。使用するのは「De-ess」です。

De-ess

  • Algorithm:Classicは一般的なディエッサーで全帯域を抑制し、Spectralは歯擦音が最も顕著な帯域にターゲットを絞って抑制します。
  • Threshold:一定のレベルを超えた歯擦音を検知する際の閾値を決めるものです。もちろん下げるほど効きが強くなります。参考にするのはこのゲインリダクションメーターですが、さらに「Output ess only」ボタンを押すことで、検知している歯擦音のみを聞くことができます。できる限り歯擦音のみに反応するよう上手く調整しましょう。
  • Cutoff Frequency:歯擦音とそれ以外として検知する境界線を決めるもので、上げるほどにターゲットが絞り込まれ、下げると広範囲に歯擦音を検知します。この際も、「Output ess only」を活用できます。
  • Speed:ディエッサーのアタックとリリースの時間を決めるもので、FASTとSLOWの二択となっています。多くの場合FASTで対応できると思いますが、滑舌が悪く聞こえるような場合はSLOWにしてみましょう。SLOWで高域にポンピングが起きるような場合は、FASTに切り替えてください。
  • Spectral shaping:ディエッサーの効きの強さの微調整と捉えるといいでしょう。ディエッサーが効きすぎていると感じる場合は、下げてみましょう。
  • Spectral tilt:歯擦音に対しターゲットとなるノイズプロフィールを作成します。デフォルトの0はピンクノイズを表し、中域寄りの自然なサウンドとなります。マイナス方面に振るとブラウンノイズがターゲットとなり、低域寄りの暗いサウンドになります。プラス方面に振るとホワイトノイズがターゲットとなり、高域寄りのサウンドになります。

これで全ての処理が終わりました。
もう一度最初の状態と比べながら聞いてみましょう。

▶︎処理前

▶︎処理後

このように驚くほど綺麗になりました。


以上、今回は特に有用性が高いと思われるモジュールをピックアップしてお伝えしました。
ぜひこれらを活用して、貴重な音源を復活させてみてください。



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記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru

Sleepfreaks DTM講師 大鶴 暢彦
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