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【DTM】作曲家・白戸佑輔さんの楽曲制作の裏側に密着 第1弾 作曲編

クリエイターの金字塔 白戸佑輔が作曲テクニックを公開

白戸 佑輔 / Yusuke Shirato

Shirato-Yusuke-Composer-Arranger

1981年に茨城県で生まれ、子どもの頃よりクラシックを聴きピアノを習う。
高校でドラムと作曲に目覚め、その後、東京音楽大学作曲科へ入学。室内楽、オーケストラ、などの作曲をしつつも、大学3年時にベースをはじめ卒業後はベーシストとして活動。
2007年に作家活動をはじめ、現在は様々なアーティストへの楽曲提供やサポート演奏を手がける。
現在は、DreamMonster所属の作曲家として活動する。
ピアノ、ストリングスを活かしたアニソン、アイドルソング、またそれとは対照的に心に染み入るバラードが定評を持つ。
アニメOP、ED、TV主題歌、挿入歌など。パチンコ、映画、ゲームなどのBGMや主題歌なども手がける。

Twitter:@sirato10

欅坂46 『世界には愛しかない』

JUNNA 「Here」

当コンテンツについて 金谷 樹

kanaya-sleepfreaks

レッスンやコンテンツに対して、非常に要望が多い項目が「制作の風景を見てみたい」というものです。
この度、作曲家として大活躍されている白戸佑輔さんにご協力いただき、当コンテンツを実現することができました。
何もないところからスタートし、メロディー・コード・アレンジを制作していくという無茶な企画です(笑)

制作の中では、浮かんできたアイディアを取り入れたり、楽曲をより良いものにするための実験・試行錯誤を行なっています。
プロだからといって、全てが思い通りに進むということはないという点も感じていただけると思います。

また、制作者の数だけ音へのこだわり・制作手法・思考があり、これがオリジナリティに繋がっているという点。
決まった正解が無い中で、どのように考えて、どの道を選択していくのか?ということを常に意識し続けるということが、作品の指針として重要になるということを感じていただけると思っております。

当コンテンツが皆様の制作の参考となり、モチベーションの向上に貢献できれば幸いです!

実践コンペ 楽曲制作 動画

  1. 1白戸佑輔さんの楽曲制作の裏側に密着 作曲編
  2. 2白戸佑輔さんの楽曲制作の裏側に密着 アレンジ編
  3. 3白戸佑輔さんの楽曲制作の裏側に密着 レコーディング編

動画内容の補足

動画から白戸佑輔さんのこだわりを抜粋して記載していきます。

楽曲制作する上で、BPM(テンポ)はとても大切

Yusuke-Shirato-Tips-1-BPM-Tempo-Cubase

楽曲の印象を決める上で、テンポの設定は非常に重要です。

楽曲を制作する際、最終的にできあがる楽曲のBPM(テンポ)を決めることからスタートします。
クリック(メトロノーム)を鳴らしながら、ピアノを演奏してイメージに近いテンポを見つけるまで微調整を繰り返していきます。

Yusuke-Shirato-Tips-2

テンポを決めた後は、自分が得意としている楽器(ここではピアノ)を録音して楽曲イメージを形にしていきます。

メロディを打ち込む

Yusuke-Shirato-Tips-3-Prologue-Cubase

メロディを考える際、まずはシンセ(Cubase付属のPrologue)を使用していきます。

Yusuke-Shirato-Tips-4-Prologue-Attack-Cubase

オススメのプリセットは「Square Lead」です。
ここではオシレーターの波形から「Sawtooth」を選択してカスタマイズしています。

この際、「Attack」を若干遅くすることで、耳の疲れを軽減する工夫も行なっています。

Yusuke-Shirato-Tips-4

メロディ録音時にはボーカルの「しゃくり」を表現するMIDIノートも入力しています。
これによって、実際に歌った際のニュアンスをイメージしやすくなります。

ブレスの重要性

Yusuke-Shirato-Tips-29

メロディを作成する際、ボーカルのブレス(息継ぎ)ができる箇所を用意しておくことも重要です。

Yusuke-Shirato-Tips-28

あくまで人間が歌うということを前提とし、ブレスを含めたメロディを作成していきます。

トラックバージョンを活用する

Yusuke-Shirato-Tips-8-Track-Version-Cubase

フレーズを作成する際、複数の候補が挙がる。という場面も多くなります。
Cubase7.5以降で追加されている「トラックバージョン」機能を活用することで、瞬時にトラック内容を切り替えてプレビュー(判断)することができます。

ドラムは曲調に合わせて選定する

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ある程度、メロディやコードのイメージが固まってきた後はリズムを打ち込んでいきます。
ここでは「Superior Drummer 3」を使用していますが、「BFD3」や「Stylus RMX」などジャンルや曲調に合わせて音源を決めていきます。

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ドラムは制作スピードを優先してリアルタイムで入力します。
まずはクオンタイズは100%でビートイメージを固定します。

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ドラムの盛り上がりの全てをベロシティで表現することは困難です。
そのため、Hi-Hatの開け閉め(オープン/クローズハイハット)を使い分けてコントロールしていきます。

口(くち)ドラム?

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少年がギターのリフのモノマネをするように、ドラムのフレーズを口ずさむ。
フレーズを口ずさむことができれば、自身でビートを認識できています。

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あとはピアノロール(キーエディター)上に打ち込む操作を身につければ良いということになります。

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実際、こんな感じです。
「ダカドコパーン」

ミスタッチは気にし過ぎない

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作曲は、主になるモチーフ(J-POPでいうとメロディ)をどんどん生み出さなくてはいけません。

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細かなミスタッチを気にして曲が進まないのは本末転倒です。
完璧主義よりも、浮かんできたイメージやインスピレーションを優先することが良い結果に繋がります。

ギターの打ち込み

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サビまでの道のりが決まっていない際は、試しに違う楽器(ここではアコースティックギター)を打ち込んでイメージを広げるというのも手です。

Yusuke-Shirato-Tips-18-Guitar-Programming

ギターを弾ける弾けないに関わらず、ギターのアルペジオフレーズを鍵盤で演奏できるようになっておくと、楽曲に対してのアプローチが広がります。

Yusuke-Shirato-Tips-11

多くの現場では、打ち込みのギターを生の演奏に差し替えます。
そのため、フレーズイメージを演奏するギタリストに伝えるという際にも役立ちます。

コードに9thを足す

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コードが「Ⅵm」の際は、9th(add9)を足すことも多いです。
柔らかい独特の雰囲気が加わります。

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Ⅳにも9thを足し、ストレートな響きを避けていくことも多くあります。

楽曲に刺激を与える場合

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楽曲のマンネリ化を防ぐために、様々なアプローチ(アクセント)を取り入れていきます。

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コードへ「♯5」や「♭5」の緊張感のある響きをを取り入れ、展開に締まりを与えることも有効です。

J-POPは規定演技

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ありきたりになってしまわない工夫(オリジナリティ)を常に心がけることが大切です。

しかし、その前提として王道パターンも勉強・研究して知っておく必要があります。
この王道という基準があった上で、判断を行う必要があるためです。

予定調和を崩す

上記の意外性で驚かせた後は、次で回収(予定調和)を行うことでドラマや展開を作ります。
意外性の後には、予定調和を加えて流れが完結する気持ち良さをしっかりと作っておくということが大切です

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オリジナリティやありきたりで終わらないためにも予定調和になることをできるだけ避ける工夫が必要です。
成功している作家・アレンジャーはこの工夫が徹底されており、1小節でも2拍でも1拍でも、どこで期待を裏切るか?(予定調和を崩すか)を意識して曲作りを行なっています。

この感性のアンテナを常に張ってみてください。
日常の音楽(音)から、何が心地よく感じなのか?ということが明確になり、制作する楽曲に活かすことができます。

サビのコードをどうするか

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同じコード進行ばかり使ってしまうというケースを避けるために、先人達の残した様々な楽曲を学び、分析することを大切にしてください。
コード進行の把握は、「ディグリーネーム」を活用することで、異なる楽曲の「キー」にもコード進行の特徴を活かすことができます。

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ヒット曲を分析していると、コード進行が似ているということが多々あります。
まずは自分の好きな楽曲を分析して、気に入ったコード進行をネタとして溜めていき、楽曲へ積極的に取り入れてみてください。
これがオリジナリティに繋がっていきます。

音楽理論が分からなくても…

Yusuke-Shirato-Tips-about-music-theory

中には音楽理論を勉強していなくても、素晴らしいメロディを生み出す方もいます。
ただ、そのような方の周りには、音楽理論に精通しているプロデューサーやアレンジャーがアドバイス・サポートしているというケースもあります。
そのため、ご自身でもある程度の知識を身につけておくことをお勧めします。

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音楽理論に縛られず、メロディが浮かんでくることが理想ではありますが、感性だけで数多くの楽曲を作り続けるのは非常に難しいことや、時間の制約がある場面も多いです。

その際は、先人の作品からヒントを得たり、楽曲を客観的に分析するために音楽理論を活用していきます。
これらの情報をキャッチして作品に活かすためにも音楽理論は非常に便利と言えます。

ポップスを制作する時に意識していること

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楽曲制作を行う際、リスナーの心に引っかかる部分(フック)は必ず作るように意識します。
数多くの楽曲の中から、自分の作品を選んでもらうためには、リスナーにどう響くか考える想像力が求められます。
逆に常日頃から、この感性のアンテナを張って楽曲を聴くようにすると、作品の質が別次元のものになります。

もう一回聞きたくなる楽曲とは

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「楽曲をもう一回聞きたいな」とリスナーに思わせるためには、「イントロ」と「アウトロ(楽曲の終わりの部分)」の良さが特に重要です。

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イントロの重要性を理解している方は多いかと思いますが、楽曲のアウトロにも意識を向けて研究を行なってください。
新たな発見や、楽曲に活かせるヒントが見つかるかもしれません。

ショートカットで作業の効率化

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人気作曲家ともなれば、楽曲の質はもちろん、制作のスピードが求められます。
DAWのショートカットをカスタマイズして、インスピレーション(閃き)を素早く形にできる環境(スキル)を整えておくことが重要です。
操作やトラブルによって、楽曲に対してのインスピレーションが失われるということが最も惜しいためです。
(上記画像はMIDIノートの長さを整える)

この一例として、

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ベロシティ値を一発で最大(127)に設定する

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Cubaseのショートカット「無音部分を挿入」
Mac:Command + Shift + E
Windows:Ctrl + Shift + E

このように、よく使用するショートカットキーを把握・カスタマイズして作業効率の向上も意識してください。

作曲家を目指す方へメッセージ

Yusuke-Shirato-Message-for-those-who-want-to-be-a-composer

音楽で飯を食いたいという想いがある場合、自分が気持ち良いままに曲を作ることよりも、求められているサウンドは何か?をしっかりと把握する能力、そして、その中で「1つでも自身のアイディアを入れ、インパクトを残そう」という気持ちがとても大切だと思っています。
この想いに日々の研究や努力が味方してくることで、愛される作品が生まれていきます。
是非、ご自身の想いを大切に頑張ってください!



弊社では、白戸佑輔さんのインタビュー記事も掲載していますので、気になる方はぜひチェックしてください。