オミット(Omit)という考え方/音楽理論講座
オミットの概要
今回は、sus系のコードとも合わせて覚えたい「オミット(Omit)」という考え方を学びましょう。
演奏者にコード譜を渡して弾いてもらう際にも、非常に役に立つ知識です。
まず、オミットとはなんでしょうか。
「Omit」には、「省く」「省略する」「抜かす」などの意味があります。
つまり、コードの構成音から何かを”省略”して使用しようという意味ですね。
今回は、オミットの中でも頻出する「omit3(オミット・サード)」を中心に確認していきましょう。
✳︎omit3はパワーコードと同時に紹介されることもありますが、パワーコードについては後ほど詳しく説明します。
オミットの表記法
オミットの代表的な表記例は以下の通りです。
上記はomit3を例にしていますが、「omit5」や「omit root」などの表記を見かけた際には、「omit」の後に書かれている音を省略して弾くという意味です。
会話の中で「〜の音をオミットして」のようにも使用されます。
また、「no3」は3rdを省略し、「5」はルートと5thだけを弾くことを意味し、どちらもomit3と同じことを指しています。
オミットの響きと成り立ち
まずは、Comit3のサウンドを確認してみましょう。
コードの構成音を順に鳴らした後に、コードが鳴ります。
今までのコードとは異なり、この状態では明るさも暗さも判別できませんね。
譜面とピアノロール上でも確認してみましょう。
コードの中で、性質を左右する、つまりマイナーかメジャーかを決定する3rd(3度)の音がありません。
また、独自のキャラクターを持つ7th(7度)などの音も含まれていません。
では、なぜこのように音を省略してコードを演奏する必要があるのか見ていきましょう。
オミットを使ってみる
まず、Key=Cメジャーでこのようなメロディーが浮かんだとします。
これにアボイドノートに気をつけてコードをつけてみた結果、次のようになったとします。
もちろん悪くはないのですが、サブドミナントから始まっているため、「どこに向かうんだろう?」という期待感を持たせる始まり方になっています。
もし順当にトニックから始めたい場合、メロディのFが目立ってアボイドノートとなり、濁った響きが気になることがあります。
最初の響きだけを聞くとこのような感じになります。
そういった場合にomit3を使用すれば、アボイドノートの発生を避けながらトニックのように始めることができます。
もちろん、このケースではsus4を使用して濁りを解消することもできます。
Fが強調される形になりますので、雰囲気に合わせて使い分けてください。
以上はオミットの一例ですが、他にも以下のような意図を持って指定されることがあります。
- メジャーでもマイナーでもないコードのサウンドを使用したかった
- たくさんの音が含まれるコードから、いくつかの音を省略したかった
- メロディーを自由に動かしたかった
楽曲分析の際にオミットを見つけたら、作曲者の意図を読み取ってみてください。
まとめ
今回の学習ポイントをまとめると下記の通りです。
- オミット(Omit)はコードの構成音から特定の音を省略する手法
- 「omit3」は3rdの音を省略し、コードの明るさや暗さを判別しにくくする
- 「omit3」「omit5」「omit root」はそれぞれ後に続く音を省略して演奏することを指す
- omit3を使うとアボイドノートを避けながらトニックのように始められる
次回は、比較的新しいコード「sus2(サスツー)」について解説します。
記事の担当 伊藤 和馬/Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。
バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
日本に帰国後は、Pops・アニメソング・アイドルソング・CM・ゲーム・イベントのBGMまで、幅広い作曲・編曲の技術を身につけ作編曲家として活動している。