支分権 2 音楽著作権

Author: sleepfreaks

明けましておめでとうございます。高木啓成です。

今年最初の連載ですね。今年もよろしくお願いします。

さて、前回までに、著作者の権利には「著作権」と「著作者人格権」があることを説明したあと、
「著作権」の支分権である「複製権」、「演奏権」、「公衆送信権」を詳しく見ていきました。

今回は、支分権の残りの「譲渡権」、「貸与権」、「編曲権」を
ひとつひとつ確認していきましょう。

1 譲渡権(26条の2)

譲渡権とは、著作物、またはその複製物を、譲渡により、公衆に提供する権利です(26条の2)。

著作者は譲渡権を「専有」します。「専有」の意味は、前回お話しましたね。

譲渡権は、ちょっとイメージが湧きにくい権利ですね。

たとえば、僕は、「りんねのね」をCDにプレスして、それをインディーズレーベルに譲渡して、
全国のCDショップで売ってもらう契約をすることができます。これが譲渡権の内容です。

もし、僕が「りんねのね」をCDにプレスした段階で、泥棒がそのCDを全部盗み、
インディーズレーベルに譲渡しようとしているとします。

この場合、僕は、譲渡権に基づき、その泥棒に対して、「勝手に、譲渡により公衆に提供するな!」
ということが言えるわけです。

図1



実は、譲渡権は、WIPO著作権条約を締結したときに、
条約との整合性の観点から作られた規定であって、
実際は、別に無くてもよかった規定と考えられています。

他の法律や他の条文で対応可能だからです。

ではなんでこの連載で譲渡権を取り上げたかというと、
ひとつ、著作権法で重要な概念である、「消尽」という概念を憶えてほしいからです。

「消尽」とは、著作権者が、一度、権利行使をしてしまうと、その権利は消えてしまい、
もはや権利行使することはできない、
という概念です。

譲渡権は、一度、権利行使すると、消尽してしまいます。

さっきの例でいうと、僕が、インディーズレーベルではなく、ライブ会場で、直接、お客さんに、
「りんねのね」のCDを買ってもらったとします。

これは譲渡権の行使に当たるので、この時点で、僕の「譲渡権」は、消尽してしまうわけです。

ですので、その後、そのお客さんが、「もう聴き飽きた」と思い、
そのCDを中古CD店に売っぱらおうとしているとき、
僕は、譲渡権に基いて「勝手に中古CD店に売っぱらうな!」なんてことは言えないわけです。

僕がライブ会場で「りんねのね」のCDを売った段階で、譲渡権は消尽してしまい、
もはや権利行使できないからです。

図2


「消尽」の概念は、音楽著作権に限らず、
著作権法の勉強を進める上で必要な知識になりますので、ぜひ憶えておいてください。

2 貸与権(26条の3)

貸与権とは、著作物の複製物を、貸与により公衆に提供する権利です。著作者は、貸与権を専有します。 

典型例は、レンタルCD店が、公衆にCDを貸与する場合ですね。

メジャーレーベルのCDは、レンタルCD店が、JASRACなどの著作権管理事業者と包括契約を
結ぶことにより著作権者の許諾を得て、CDのレンタル事業をやっています。

「公衆に」という縛りがありますので、個人間での貸し借りは、貸与権の対象外です。
ですので、個人間での貸し借りであれば、著作権者に無断で自由に行うことができます。

図3


あとで説明しますが、著作権者だけでなく、実演家やレコード製作者も、
著作隣接権として、貸与権をもっています(95条の3、97条の3)。

ですので、実際は、レンタルCD店は、JASRACなどの著作権管理事業者だけでなく、
演奏家やレコード会社との関係でも権利処理をしています。

3 編曲権(27条)

編曲権とは、著作物に、編曲(アレンジ・改変)を施し、
新たな著作物(二次的著作物)を創作する権利
です。

著作者は、編曲権を専有します。

このように、音楽の場合、二次的著作物を創作する権利は「編曲権」と呼ぶのが普通ですが、
「編曲権」より広い概念である「翻案権」という言葉を使うこともよくあります。

ですので、音楽においては、「編曲権」イコール「翻案権」だ、と思ってもらって大丈夫です。

図4


二次的著作物については、第4回に詳しく説明しているので、復習してみてください。

4 今回のまとめ

前回と今回の2回にわたって、音楽に関係の深い主な支分権を見てきました。

実際には、支分権は他にもいろいろあり、音楽に関わるものであれば、
「伝達権」という支分権もありますし、
第4回で解説した「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」も支分権のひとつです。

支分権は、特に複製権が重要ですので、複製権をしっかり把握して、
それ以外の支分権についても、「こんなものがあったな」程度にでも憶えてもらえればと思います。

次回は、著作者人格権の中身である、
「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」を解説していきます。

著者の紹介

高木啓成 写真
高木啓成
DTMで作曲活動中。
ロックバンド「幾何学少年」(現在、休止中)のリーダー、ドラマー。
弁護士として、エンターテインメント関係の法務、
中小規模の会社や個人の法律問題を扱う。

TwitterID : @hirock_n
Soundcloud : soundcloud.com/hirock_n

アクシアム法律事務所 : http://www.axiomlawoffice.com