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「音楽出版社」/クリエーターのための音楽著作権(ビジネス編)

音楽著作権記事担当の高木 啓成弁護士よりご挨拶

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こんにちは。弁護士の高木啓成です。
前回、作家事務所について色々お話しました。

今回は、音楽出版社について解説します。
作家事務所はイメージが持ちやすくても、音楽出版社というとちょっとイメージが持ちにくいですよね。

1.音楽出版社の役割

音楽出版社の業務は、主に、①楽曲のプロモーションと、②著作権の管理です。

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①楽曲のプロモーション

音楽出版社にとって、「楽曲のプロモーション」は、最も重要な業務です。
レコード会社はもちろん、映画会社、広告代理店、ゲーム会社などに働きかけて、楽曲を使ってもらうように営業を行うわけです。

どんなに素晴らしい楽曲も、プロモーションされて、たくさんの人に聴いてもらえわなければヒットしません。
ですので、音楽出版社は、音楽ビジネスでとても重要な役割を担っています。

「楽曲のプロモーションはレコード会社がしているんじゃないの?」と思う方もいらっしゃると思います。

レコード会社は、その楽曲が収録されたCDのプロモーションをしているのであって、その楽曲そのもののプロモーションではないんですよね。
もちろん被るところはありますし、その楽曲をリリースするレコード会社の系列の音楽出版社が入ることも多々あります。

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音楽出版社の数はとても多いです。JASRACに著作権を預けている音楽出版社の数は2500社ほどあるそうです。
そして、レコード会社系列、プロダクション系列、テレビ局系列、広告代理店系列、ゲーム会社系列など、種類も様々です。

音楽出版社は、ひとつの楽曲につき1社とは限りません。2社以上の音楽出版社が入り、「共同出版」という形を採ることも非常に多いです。

たとえば、テレビのタイアップが入った楽曲には、リリースしたレーベル系列の音楽出版社と、そのテレビ局の系列の音楽出版社が入る、という形がオーソドックスです。

実際の楽曲を見てみましょう。

JASRACの管理楽曲であれば、JASRACのウェブサイト上から、作詞者・作曲者や音楽出版社を検索することができます。
http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/main.jsp?trxID=F00100

たとえば、「けいおん!」1期のエンディングテーマの「DON'T SAY LAZY」という楽曲には、「ポニーキャニオン音楽出版」というレコード会社系列の音楽出版社と、「日音」というTBS系列の音楽出版社が入っています。

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②著作権の管理

次に、音楽出版社は、「著作権の管理」も担っています。

「著作権の管理はJASRACがやってるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、音楽出版社は、作家さんや作家事務所から譲渡を受けた著作権の全部をJASRACに譲渡するのではなくて、一部を残しておいて自分で管理することができるんです。

たとえば、著作権のうちの「映画への録音」の権利は、JASRACに譲渡するのではなく音楽出版社が自己管理しておけば、「この楽曲を映画に使わせてください!」という会社が現れた場合、直接に使用料を交渉することができるわけです。

自己管理した著作権についてのこのような交渉や、著作権使用料の徴収も、音楽出版社の重要な業務です。

2.音楽出版社との契約

めでたく楽曲のリリースが決まれば、その楽曲の著作権を音楽出版社に譲渡する契約を締結することになります。

音楽出版社との契約は、日本音楽出版社協会(MPA)が提供している「著作権契約書」というフォーマットを使うことが非常に多いです。
この契約書のことを、実務的に、「MPA契約書」と呼びます。こんなタイプの契約書です。

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作家さんが作家事務所に著作権を譲渡していない場合は、作家さんが著作権者として、音楽出版社と契約することになりますし、作家事務所が作家さんから著作権の譲渡を受けている場合には、作家事務所が著作権者として音楽出版社と契約することになります。

ただ、実際は、マネジメント契約上は作家事務所が著作権を持っている場合でも、作家さんが著作権者として音楽出版社と契約しているパターンもよく見ます。
なので、あまり厳密ではないようです。

この「著作権契約書」の契約内容は、主に、①著作権が譲渡される期間、②分配率、③著作権の管理方法の3つです。
順番に見て行きましょう。

①著作権が譲渡される期間

作家さんや作家事務所が音楽出版社に譲渡した著作権は、永遠に譲渡されるわけではありません。
期間があります。

期間は、「10年」というのがほとんどです。10年経てば、著作権が戻ってくるわけです。
ただし、ほとんどの場合、「期間満了の3ヶ月前までに反対の意思表示がなければ、更に10年間更新される」という10年の自動更新になっています。

大御所の作家さんの場合、3年契約だったり5年契約もあると聞きますが、僕は有名な作家さんの契約書もけっこう見ていますが、ほぼほぼ10年です。

「著作権存続期間ずっと譲渡する」(つまり、永遠に譲渡)という契約も存在はするのですが、最近は少ないのではないかと思います。

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②分配率

これは、JASRACから分配された著作権使用料(または音楽出版社が自己管理した場合に音楽出版社が受領した著作権使用料)を、音楽出版社と作家(作家事務所)とで、どのような割合で分配するか、という問題です。

駆け出しの作家さんの場合、基本的に、音楽出版社の取り分は50%とされている場合がほとんどです。

なので、作家さん側から見ると、作詞か作曲かどちらかを担当した場合は25%で、作詞作曲両方を担当した場合は50%です。

ちなみに、音楽出版社が2社以上の場合でも、音楽出版社の取り分は合計50%です。
その50%を複数の音楽出版社で分け合うわけです。
50%を超えて音楽出版社が持っていくことはありません。

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③管理方法

先ほど説明したように、音楽出版社は、楽曲の著作権の全てをJASRACに譲渡するのか、それとも一部を自己管理するのかを選択することができます。
それをMPA契約書上で決めています。

あと、このほかに、重要な規定があります。

「作家さん(または作家事務所)が、ある楽曲の著作権使用料が、JASRACから音楽出版社にいくら支払われたかを、JASRACに対して直接に問い合わせることができる」という規定と、

「作家さん(または作家事務所)は、音楽著作権に対して、帳簿などを見せるように要求することができる」という規定です。

もし、音楽出版社が著作権使用料を誤魔化している疑いがある場合は、この規定を行使することで、きちんと支払われているかを確認することができます。

僕自身も、作家さんの代理人として、この規定に基いて、音楽出版社やJASRACに対して問い合わせたことがあります。

このように、いざとなったときに役に立つこと規定があるということだけでも憶えていただければと思います。

以上、今回は音楽出版社についてお話しました。
音楽出版社という存在が、なかなかイメージしづらいですよね。
ちょっと難しいお話になってしまいました。

次回は、JASRACについて解説していきますね。

「記事の担当」高木 啓成 弁護士

高木啓成

高木 啓成/Hironori Takaki
DTMで作曲活動中。logicユーザー。ロックとダンスミュージックが得意。
弁護士として、エンターテインメント関係の法務、企業法務や個人の法律問題を扱う。


楽曲配信中 : http://www.tunecore.co.jp/artist/hirock_n
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