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「音楽業界への道標」 第14回 やしきんさんインタビュー

音楽業界への道標、第14回目となる今回はアニメ主題歌から劇伴まで、数多くの名曲を生み出し続けるクリエイターやしきんさんに取材を行いました。
実力はもちろんのこと、「とても人運に恵まれている」と語るやしきんさん。作曲術から人付き合いのコツまで、濃厚なお話を聞くことができましたのでぜひご一読いただければと思います。

やしきん|profile

yashikin
1988年5月12日生まれ、O型。東京生まれ池袋育ち。高校生の頃からバンド活動を開始。
大学入学後、続けてバンド活動にいそしむが、就職活動時期到来により解散。作曲に特化した音楽活動への憧憬から、独学でDTMや音楽理論についての勉強を始める。2010年夏に行われた、TVアニメ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」楽曲募集コンペ採用にて作家デビュー。その後、アニメ音楽を中心に、作詞・作曲・編曲とマルチに制作活動中。

やしきんさんについて

ーーこの度はお忙しい中ありがとうございます。それではまず、簡単にやしきんさんの現在の活動から教えていただいてもよろしいでしょうか?

主にアニメ関連の楽曲を制作しています。作・編曲はもちろん、案件によっては作詞も担当させていただいています。
あとは男性モノの楽曲であれば仮歌を自分で歌ったり、コーラスで参加させていただくことも稀にありますね。

ーーwikipediaにも載っていますが、主題歌から劇伴まで膨大な数の曲を手掛けていらっしゃいますよね。もともと音楽はいつから始めたのでしょうか?

中学生の頃両親にアコースティックギターを買ってもらったことがきっかけで音楽を始めました。Mr.Childrenやスピッツなどのポップスバンドが好きだったので、弾き語りをしたり、コード進行を真似て自分で曲を作ってみたりしていました。
そういうこともあって、今でも編曲のツールとして一番自由に使えるのはバッキングギターです。

ーー現在主に使用している機材は何でしょうか?

DAWはCubaseです。これはDTMを始めた頃から変わっていないですね。あとは定番のプラグインを使うことが多いですが、最近面白いなと思ったプラグインはRealiToneのRealiBanjoですね。
カントリーコアっぽい曲を作った時に使用したのですが、とにかく見た目が良くて。ご機嫌なおじさんとイヌのアニメーションがとても面白いのでおすすめです。

あとはilya efimovのBAYANもめちゃめちゃ音が良いので気に入っています。

ーーどちらもかなりマニアックなプラグインですね。(笑)

機材に関しては周りの人に勧められて購入することが多いです。僕自身説明書とか全く読まないタイプなので、実はそんなに機材に詳しくないんですよね。
大学2年生くらいの頃、ちょうどボーカロイドが盛り上がっていた時期にCubaseとボーカロイドを購入してDTMを始めたのですが、本当に何の知識もない状態で始めちゃって。
ミキサー画面を見ても「なんかメーターが振り切って赤くなってるんだけどこれなんだろう…?」っていうレベルでした。リミッターも知らなくて、安物のヘッドホンを使っていたせいでクリップにも気づかなかったくらいです。

ーー調べたりはしなかったのでしょうか?

何故かその発想に至らなかったんですよね。(笑)
とりあえず既存の曲の音量に合わせようと思って、各トラック全部手書きでオートメーションを描いたりして調整していました。

ーーとんでもない労力がかかりそうです…。

そうですね。ただそうやって色々と試行錯誤したり回り道をしたおかげで、色んな手段が身についたりトラブルに強くなった面はあります。
勿論効率のいい方法もたくさんあるので、それはそれでいいと思います。

TVアニメ「刀使ノ巫女」後期OP「進化系Colors」

作曲家を目指すまで

ーーやしきんさんは中学生の頃から音楽を始めたとのことですが、そこから今に至るまでにはどのような経緯があったのでしょうか?

高校からは、元々あったバンドにギターボーカルとして加入し、活動していました。
ちなみに軽音部に所属していたのですが、僕が入部した時は結構ひどい状態で。ミニアンプも使えない、予算も年々削られる…みたいな感じだったので、部活の立て直しなんかもしていましたね。

ーーアニメみたいな話ですね。

そうなんですよ。(笑)
高校で組んでいたバンドではコピーもそこそこに、オリジナル曲を演奏することが多かったです。
始めのうちはギターの人が作曲、ドラムの人が作詞を担当していて、徐々に僕も曲を作るようになりました。

ーー高校生のうちからオリジナル曲を沢山演奏するのは結構すごいことですよね。

コピーをあまりしてこなかった分、テクニック的には劣る部分も多かったですけどね。色んなバンド大会に応募していたのですが、高校生バンドっぽいフレッシュさを評価されたのか、割といいところまで勝ち上がることが多かったように思います。
文化祭くらいでしかライブをしたことがなかったのに、いきなりROCK IN JAPAN(TEENS ROCK IN HITACHINAKA)の最終選考でLAKE STAGEに立つことが出来たのはいい思い出ですね。

ーーかなり精力的に活動されていたんですね。

そうですね。その頃に同じ大会に感傷ベクトルの田口囁一さんやKEYTALKの首藤義勝さん等も出ていました。
その時は気付かなくても、よくよく話を聞くと「ああ、あの時一緒のライブに出てたんだ!?」っていうこともよくありますね。
大会に出たがる人っていっぱい応募するから、色んなところで被るんですよ。(笑)

ーーそのバンドではデビュー等の流れにはならなかったのでしょうか?

大学に入ってからも同じバンドで活動を続けていたのですが、レーベルの新人発掘の方がライブを観に来てくれたりすることはあったもののそういった話には至らなかったですね。
結局鳴かず飛ばずのまま、就職活動のタイミングでバンドが解散してしまいました。

ーーそこから作曲に傾倒していったきっかけは何だったのでしょうか?

バンド活動をしていた頃から、作曲が自分の中で一番面白くて。バンド以外にも発表って色んな形があるなと思った時に、ちょうどボカロが流行ったんです。そこでDTMを始めました。
イラストはPixivでお借りしつつ、叔母に動画制作を手伝ってもらいながら1、2週間に1曲くらいのペースでアップするようにしていました。

ーーその流れで作曲家を目指すようになったんですね。

当時から尊敬していた作曲家の一人がMONACAの神前暁さんだったのですが、ゲームのサウンドデザイナーを経てアニソン作家として活躍していることを知り、僕もその方向を目指して色々と行動しました。

ーーやしきんさんは2010年に開催された俺妹(アニメ、俺の妹がこんなに可愛いわけがない)のアマチュア向けエンディングテーマコンペで、応募総数1000曲を超える中から見事2曲採用されるという経歴をお持ちですよね。

まさにゲームのサウンドデザイナーを目指していた頃ですね。ちょうど原作を読んでいてとても好きな作品だったので応募しました。同人でバリバリに活動してる方やフリーランスの作曲家もたくさん応募していたコンペだったので不安でしたが、採用のメールが来たときはとても嬉しかったことを覚えています。自分の部屋で踊り狂っていました。(笑)

ーーやしきんさんとしては、自分の曲が採用されたのにはどんな理由があったと思いますか?

そのコンペではキャラクターソング的なものを求められていたので、もっとキャラクターを好きになれるような曲を意識して書きました。
作品に対しての大ファンだったので、そこも大きかったんじゃないかと思います。

やしきんさん流コミュニケーション術

ーー現在アニメソングを中心に数多くの楽曲を手掛けるやしきんさんですが、具体的にはどういった流れでお仕事が来るのでしょうか?

事務所に入った頃はコンペをコツコツやっていました。最初は全然決まらなくて苦労しましたね。今は指名でお仕事をいただくことが多いです。

あとはバンドをやっていた頃、よくUNISON SQUARE GARDENと同じスタジオで会うことがあって、その頃からベースの田淵智也さんと交流がありまして。時々会う先輩のお兄さん、みたいな関係性でしょうか。

その田淵さんから、俺妹のコンペが終わったあとくらいに「作曲を仕事にしようとしてる人がいるって聞いたんだけど、1回話さない?」って突然連絡が来て。
田淵さんが作曲した曲のアレンジの仕事を振ってもらったことがきっかけで、それ以降も色々と制作に携わらせていただいてます。

UNISON SQUARE GARDEN「君の瞳に恋してない」
ブラスアレンジ(編曲協力)

ーー不思議な繋がりがたくさんあるんですね。

今の事務所に入るきっかけになったのも、俺妹のコンペで受かった曲の共同アレンジをしてくださったyamazoさんの紹介からなんですよ。
自分の曲がプロの編曲家の手ですごくカッコよくブラッシュアップされていて、感動のあまり連絡先を調べて感謝のメールを送ったんです。それがきっかけで交流が出来て、色々と相談にも乗ってもらいました。

本当に、人運には恵まれすぎているなと思っています。

ーーやしきんさんが人と接する時、心がけていることはありますか?

正直に、自分の好きをごまかさないことでしょうか。
いい加減な人とは付き合わず、「一緒にいたい」と思える人とだけ付き合うようにしていますね。
どうせ生きるなら、なるべく好きな人たちと幸せに生きていきたいんです。

好ましくない人だけど仕事に繋がるかも…って思って接していても、そういうのって大抵繋がらないものなんですよね。もちろん失礼の無いようには接しますが。
自分が一生で書ける曲って限られているから、無駄打ちもしたくないんです。

あとは仕事とプライベートの人間関係を分けて考えることもあまり無いです。飲み仲間と仕事をすることもよくありますし、アパレルの仕事をしていた友人が脚本家になって、一緒に仕事をすることになったってケースもありましたからね。

ーー人脈を作ろう!ではなく、やしきんさんがこの人と一緒にいたいという思いで人付き合いをした結果が今ということですね。

作ろうと思って接してもいいのですが、目の前にいる”その人”とちゃんとコミュニケーションをすることが大事だと思います。あくまで人と人のつながりですから。

ーーなるほど、勉強になります。

とはいえもちろん僕も色々失敗することはありますよ。怒られたりすることもありますし。(笑)
でもちゃんと直せば見てくれるようになりますし、そうやって様々な失敗を重ねながらちゃんとした人間になるのかなと思っています。

制作術とオリジナリティー

ーーやしきんさんは普段どうやって作曲をしていますか?

思いついたひとつのモチーフをどんどん膨らませていく方法が一番多いですね。大抵そのモチーフが、その楽曲を象徴するものだったりします。
あとはトラックや、サウンドから作ったりすることもありますね。

色々試行錯誤してきた経緯があるので、ジャンルに合わせて色んな方法を駆使して製作しています。

ーーやしきんさんにとって、”良い曲”の基準とはなんでしょうか?

1番大切なのは、目的を果たしているかどうか。その上で、何かしらの個性が見えるものなら最高ですね。
もうプラスアルファでフックがあると、より魅力的な曲になると思います。

ーー若くして音楽業界に飛び込んでから今に至るまでに、一番苦しかった時期はありますか?

初めての劇伴仕事の時ですね。24歳くらいの時にお話をいただいたのですが、機材もノウハウも乏しかったので相当苦労しました。
上手く作れないし、時間は迫ってくるし…と、ノイローゼみたいになっちゃって。

ーーその苦境をどうやって乗り越えたのでしょうか?

「これはヤバい」と思った時に、進行を仕切っている方に相談したんです。
それで先輩に何曲か手伝ってもらって命からがら乗り切りました。勿論プロなので最終的なクオリティーは落としませんでしたけど、あれは本当に大変でしたね。

ーー行き詰っても、自分の中の色んなものが邪魔をして、誰にも相談できない人って多いですよね。

見栄やプライドもありますからね。「次の仕事が無くなっちゃうかも…」とか。
でも〆切を飛ばすのは社会人としてマズいと思いましたし、自分がどうこうよりも作品がダメになってしまう。それだけは避けたいですからね。

今でも、あの判断をして本当によかったと思います。

ーーやしきんさんは常に”曲を提供する先”のことを考えていらっしゃるんですね。

エゴが少ないんだと思います。それがコンプレックスになることもありますが、”普通の人”がこんな面白い曲を書けるんだっていう部分を強みにしていきたいですね。
職業作曲家は色んなオーダーでいろんなアプローチが出来ますから、僕にとっては天職だなって思います。

ーーやしきんさんが思う、自身のオリジナリティーは何でしょうか?

歌詞が一番特徴的だと思います。言葉のはめ方や韻の踏み方が英語チックだったり、いわゆる電波系の歌詞なんかも得意です。
あとはプロデューサー目線というか、制作している時も”音楽じゃない要素”も含めて考えることが多いので、多分それが僕の個性なんだと思います。

TVアニメ「てーきゅう」7期主題歌「ツッパリくんvs関取マン」

これから音楽業界を目指す方へ向けて

ーーやしきんさんは音楽で生きていくことを決意する時、迷いはありましたか?

当時は迷うほど情報量も無かったですし、考えてもしょうがないかなって。
たぶん就職しても音楽は好きだから続けるとは思っていて、それなら音楽を仕事にした方が一日中没頭できるし、それが本業に対してサボりにならないなと思ったんです。

ーー周りが就職していく中で、両親の反対などはなかったのでしょうか?

むしろ応援してくれましたね。両親とはすごく仲が良くて、自分が思っていることや考え方、今の状況を逐一報告していたこともあって僕に対する「得体の知れなさ」みたいなのがあんまりなかったんだと思います。
お金の話も、面と向かってちゃんと相談するようにしていました。多方面ですごく協力してくれて今でもすごく感謝していますし、おかげさまで最近ようやく恩返しができるようになってきました。

ーー今まさに”好きなことで生きる”を体現しているやしきんさんですが、「好きなことを仕事にしたら嫌いになってしまうのでは」と不安に思う方も多いと思います。

あれは嘘じゃないでしょうか。というのも、音楽が好きっていっても色んな仕事がありますよね。その中で、”ちょっと外したもの”を選んでしまうと幸せじゃないのかなって思うんです。
例えば僕の職業であれば、「作曲は好きだけどタレント的なこともしたい」という人には向かないと思うんですよ。

ーー自分のハマるところを見つけられていないだけ、ということですね。

そうですね。開示されているデータは実情と違うことも多いので、なるべく色んな世界を覗いたり、目指している世界にいる人たちと話すことが大事です。
そうすることで変な憧れもなくなるというか、夢物語ではなくより現実的に考えることができるんじゃないかと思います。

ーーありがとうございます。それでは最後に、やしきんさんのこれからの目標を教えてください。

歴史に残る大名曲を書きたいですね。この曲が出来たら死んでもいい、みたいな。
あとはチームみたいな形で、作品の初期段階から携われるものをやってみたいなと思っています!

ーーありがとうございました。

記事作成者

tanoue
取材・執筆:momo (田之上護/Tanoue Mamoru)

1995年生まれ。Digital Performer・Ableton liveユーザー。音楽学校を卒業後作曲家として福岡から上京。
2017年8月ツキクラ「STARDUST」に作・編曲で参加し作家デビュー。
「心に刺さる歌」をモットーに、作詞作曲・編曲からレコーディングまで全てをこなすマルチプレーヤー。
アートユニット「Shiro」の作編曲担当としても活動中。

TwitterID : @momo_tanoue
Shiro : Youtubeチャンネル