「音楽業界への道標」 第30回 村上基さんインタビュー

Author: sleepfreaks

在日ファンク・トランペット奏者 村上基さんへインタビュー

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音楽業界への道標、第30回目となる今回は在日ファンクやGENTLE FOREST JAZZ BANDなどで作編曲・トランペットを務める村上基(むらかみ もとい)さんへお話を伺って参りました。
なかなか知ることの出来ないジャズの世界や独特な作曲方法など、色々と面白いお話を聞くことが出来ましたのでぜひご一読ください!

ジャズ作曲法

ーー今回は取材させていただきありがとうございます。まず、現在のお仕事内容から教えてください。

在日ファンクGENTLE FOREST JAZZ BANDというバンドをメインに活動しています。今年からDirty Four Eyesというバンドでも活動を始めました。
あとはトランペット奏者としてのスタジオワークや、ライブのサポートとして「レキシ」や「星野源」のライブにも出演しています。

またジャズアレンジやCM音楽の作編曲なども行なっています。

ーー村上さんはジャズやビッグバンドの作編曲を得意としていますが、曲はどのように作っていくのでしょうか?

まずは楽曲の設計図を紙に書きます。最近はiPadもよく使いますね。
イメージだけなのか、具体的なものなのかはその時々でバラバラなんですが、ひとまずそれを頭からおしりまで作ります。どこで盛り上がってとか、ハーモニーはこんな感じで…みたいに考えていき、それに合わせてBPMや大体の曲の長さも決めていきます。

現在のジャズは10分を超えるような曲もザラにあるんですが、案件によっては時間的制約がある場合も多いです。
特に古いスタイルのジャズは、当時でいうポピュラー音楽にあたるので曲の時間には注意します。

ーージャズといえばアドリブで楽曲が構成されているようなイメージがあります。

ジャズって意外とルールがあって、まず前提としてテーマとなるメロディーがあるんです。所謂”ジャズのスタンダード”と言われる曲がたくさんあって、例えばセッションのときはその曲のテーマを演奏してアドリブをみんなで回して、またテーマに戻ってエンディング…みたいなケースが多いです。

僕が作曲をするときもやはりメインテーマを作り、そこからどう展開するかを考えます。

ーーそこから実際に曲を構築していく際は、どのような方法で進めていくのでしょうか?

僕はWindows環境なんですが、Finaleを使って譜面を書きながら進めていきます。
メインテーマを打ち込み、そこから設計図と見比べながら付け足していくといった手法です。

ーー譜面からの作曲は、最近ではなかなか珍しい手法のように思います。

基本的に生演奏を想定して書くので、作り終わったと同時に譜面も完成しているというのが一番のメリットですね。MIDIデータから譜面に起こすのって大変ですから。
ジャズやビッグバンドをアレンジする方は結構この方法で進める人が多くて、設計図ではなくボリュームと時間軸の図で波を書き、そこから進めていく方法なんかもあります。
そういう昔ならではの作曲方法っていうのは自分の中にもルーツとして残っていて、それを今のスピード感やデモの納品に合わせた結果こういった手法になっています。

ーーFinaleで打ち込んだあとはどう進めていくのでしょうか?

Cubaseに落とし込み、音源を差し替えます。僕はNative InstrumentsのSession Horns Proがお気に入りです。
またFinaleはドラムなどには弱いので、こちらはBFD3を使ってCubaseで打ち込んでいます。


ーーFinaleとCubaseを上手く使い分けながら制作を行なっているんですね。

僕が作っているようなジャンルの曲って、求めてる人は多いんですがちゃんとしたものを作れる人って意外と少ないんです。
ジャズ出身の方は譜面を書けてもDAWが扱えなかったり、打ち込みやバンド出身の方で管楽器の知識がない人だと譜面がめちゃくちゃだったり。
やっぱりそれぞれの楽器に得意とする音域があったり、クラシックとは違う音域やハーモニーでオーケストレーションがあったり、運指の制約なんかも多いので、ちゃんと勉強しようと思ったら結構難しいジャンルだと思います。

ーーもしジャズやビッグバンドの曲を書きたい、勉強したいと思ったらまず何から始めるべきでしょうか?

やっぱり実際にライブを観に行って音のイメージを付けるいうのも大事ですし、コピーをするのも有効な手段かと思います。最初は訳わからないと思うんですが(笑)、意外とシステム的に構築されている場合も多いので。

ーー「この曲だけは聴いておいたほうがいい!」というものはありますか?

うーん…難しいですね。ビッグバンドで強いて言うならDuke EllingtonCount Basieあたりでしょうか。
ジャズって年代ごとに全く雰囲気もカラーも違うんです。ビッグバンドも色々な変移がありますし、好きな曲を辿っていくのが一番良いかと思います。
また辿る際に、その楽曲に誰が参加しているかを調べるのはオススメです。
ジャズの世界って特殊で、セッションが多いジャンルということもあり、グループ単位というより個人単位で活動しているケースが多いんです。
一人のミュージシャンが自分名義や色んな人の名義で様々なバンドに参加していたりもするので、「この人は自分の好きな音楽をやっている、他にはどんな作品に参加しているだろう?」と調べていくのがいいと思います。

在日ファンク「爆弾こわい」

村上さんのこれまで

ーー村上さんはいつから音楽を始めたのでしょうか?

トランペットを始めたのは10歳くらいの頃です。小さい頃オーケストラを観たのをきっかけに興味を持ち、近所の音楽教室で習うようになりました。
確か中学生くらいまで習っていたと思います。

ーー高校ではどんな活動をしていたのでしょうか?

バンド活動をしていました。
ちょうどスカブームで、トランペットを演奏できるっていうだけで色んなバンドに引っ張りだこだったんです。あとは大学のジャズ研に参加してました。

ーーその頃はどんな音楽を聴いていたのでしょうか?

The BeatlesやKing Crimson、UKロックやプログレなどを好んで聴いていました。その頃にジャズも知ってよく聴くようになりましたね。

そうやってバンド活動していき、いざ自分の進路を考えるっていうときに「あ、自分は演奏活動以外何もしてないな」ということに気づきまして、そこからジャズの音楽大学に進みました。

当時吹奏楽をやっていたわけでも、譜面がちゃんと読めるわけでも無かったので、かなり苦労したことを覚えています。

ーー当時からバンドマンとして活動されていたんですね。

そうですね。今でもバンドマン寄りのスタジオワークで色々と動いています。スタジオミュージシャンの「与えられた仕事をどれだけ正確にこなせるか」っていうスタイルよりかは、自分のやりたいことを楽しみながらやるっていう方が自分に合っているみたいで。

ーー音楽大学ではどんなことを学んだのでしょうか?

基本的な知識や作曲法、あとはひたすらセッションしてアドリブでした。
高校生の頃からビッグバンドが好きだったので演奏だけでなく、書けるようになりたいと思って色々勉強しました。
大学では基本的な部分は学べたんですが、結局それを自分で使いこなせるようになるにはそれ相応の時間がかかりましたね。

GENTLE FOREST JAZZ BAND「スリリング・ザ・バンド」

バンドで生きていく

ーー現在メインで活動されている2つのバンドはいつ頃結成したのでしょうか?

GENTLE FOREST JAZZ BANDは20歳くらい、在日ファンクはその半年後くらいです。ジェントル久保田やハマケン(浜野謙太)なんかとは高校生の時に行っていたジャズ研からの付き合いで、感覚としてはサークルの仲間で今もやっているような感じです。

ーー今も止まらず活動を続けているのはすごいことだと思います。

メンバーみんながバンドを掛け持ちしてて、一つに固執しないでみんな自由にやれているのが逆に良かったのかもしれないです。
もちろんその分スケジュール調整などは大変ですけどね。

ーーバンドを続けていくにあたって、村上さんが思う大切なことはなんでしょうか?

もちろん人それぞれですが、僕の場合あまり他人に期待し過ぎないことでしょうか。バンドってなかなかお金にならないし、みんなそれぞれ生活環境も違って上手く時間が合わないことも多々あります。
だからバンドやメンバーに頼るのではなく、楽器の技術や作曲など自分で出来る事を増やして、それを常に向上させていかないとな、と思っています。

ーー在日ファンクはどのようにして有名になっていったのでしょうか?

結成して間も無い頃、ハマケンがスペースシャワーTVで話題になって、大阪の大きなライブハウスで演奏したんですが、その時にすごくお客さんが入ったんです。ギャラも結構発生して、これはイケる!と思って東京でライブをしたんですが、まさかの10人くらいしか人が来なくて。それが在日ファンクの始まりですね。

そこから地道に活動を続け、貯めたお金でアルバムを作って収益が少しずつ増えて…みたいに成長していきました。

ーーその出来事はちょっとトラウマになりそうです。

どの世界も厳しいですからね。ジャズ界隈でも、お客さんよりメンバーの方が多いなんてこともザラにあります。

ーー村上さんは20代の頃、どういう思いで音楽活動をされていたのでしょうか?

最低10年は(音楽だけでは)食えないだろうなと思っていました。でも他にやれることもありませんし、40歳になるまでにバイトを辞めれたらいいかな、くらいに思っていました。

実際に音楽だけで生活できるようになったのは29歳くらいの頃、ライブサポートや制作でスケジュールがかなり忙しくなってきて、その時ですね。

earth music&ecology 2018秋
「2倍上機嫌でいこう・3名」篇(作・編曲を担当)

村上さんのこれから

ーー村上さんはメジャーの世界もインディーズの世界も経験していらっしゃいますが、大きく違う部分はありますか?

基本的にはそんなに大きく変わらないと思います。ただマネジメントごと移籍すると色々やり方とかの面で違う部分は出てきます。これは単純に合うか合わないかの問題ですね。

ーーメジャーバンドの契約形態は、どういったものがあるのでしょうか?

色々な形があります。マネジメントの契約で言えば、例えば「固定給の代わりに毎年これくらい稼いでね」とか、「固定給は無いけど売り上げに応じて支払いますよ」とか。若いバンドだと育成契約の場合もあるみたいです。

ーーこれから音楽業界で生きていくにはどんな活動をすればいいと思いますか?

「音楽で生活していく」という意味であれば、自分のやりたいことを持ちつつも周りの事にも対応できる能力を身につけておくべきだと思います。演奏はできるけどデータ納品は出来ない、みたいなのだととても勿体無いですよね。DTM関連製品の値段も下がってきていますし、演奏しか出来ないという方は積極的にチャレンジした方がいいと思います。

あと、楽器奏者はこれからはより個性も大事になってくると思います。ピッチもタイムも完璧、ミスもしない、それって素晴らしいことだし絶対必要なことだとは思いますが、正確なだけの演奏だと打ち込みの音に寄ってきてしまう場合もあるので、技術が高いうえで「自分にしか出来ない表現」を持っておくといいですね。

ーーありがとうございます。では最後に、これからの村上さんの活動について教えてください。

多分一生満足することは無いんだろうなと思うんですが、もっともっといい作品を残していきたいですし、色んな知識も吸収したいと思っています。

トランペット奏者としては、「生演奏であることの良さ」っていうのを常に僕ら演奏者側から発信できればいいなと思っています。その時々の現場に流されるだけでなく自発的に考えていきながら、楽器奏者がきちんと評価される時代を作っていければと思っています。

ーーありがとうございました。

在日ファンク「根にもってます」




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取材・執筆:momo (田之上護/Tanoue Mamoru)

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profile:1995年生まれ。Digital Performer・Ableton liveユーザー。音楽学校を卒業後作曲家として福岡から上京。
2017年8月ツキクラ「STARDUST」に作・編曲で参加し作家デビュー。
「心に刺さる歌」をモットーに、作詞作曲・編曲からレコーディングまで全てをこなすマルチプレーヤー。
アートユニット「Shiro」の作編曲担当としても活動中。

ホームページ:Music Designer momo
TwitterID :@momo_tanoue