「音楽業界への道標」第31回 ヨシザワ “モーリス” マサトモさんインタビュー

Author: sleepfreaks

YOUR SONG IS GOOD モーリスさんへインタビュー

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音楽業界への道標、第31回目となる今回はインストゥルメンタルバンド「YOUR SONG IS GOOD」のギタリストとして活躍するヨシザワ “モーリス” マサトモさんにお話を伺って参りました。
ミュージシャンとして、そして様々なイラストやアートワークなども手がけるまさに”アーティスト”のモーリスさん。止まることなく活動を続ける原動力や、音楽と絵画の関係など、今回も濃密なお話をたくさん聞くことができました。

ーー今回は取材させていただきありがとうございます。ではまず、現在のモーリスさんの活動内容を教えてください。

今年で活動20周年となるバンド、YOUR SONG IS GOODのギタリストとして活動しています。
またイラストレーターとして様々なバンドのジャケットを描いたり、Tシャツなどのグッズをデザインしています。

ーー音楽とイラストを両方手がけているというのはめずらしいですね。

そうかもしれません。小さい頃からどちらも好きで、職業にしたいなという思いはあったんです。
でも音楽に関しては、高校生の頃に一度諦めてしまったんですよ。

ーー何か発端となる出来事があったのでしょうか?

元々パンクミュージックが大好きで、「これなら自分でも出来るんじゃないか」と思い中学生の頃にバンドを始めました。当時はTHE BLUE HEARTSなどバンドブーム真っ盛りで、バンドを始めた仲間も沢山いましたからね。そうして活動を続けていくうち「音楽で生きていきたい」と思うようになりました。

でも高校生の頃、音楽を教えていた先生が「この中に音楽の道へ進みたい人もいるかもしれません。でも音楽大学に入るにはピアノのスキルは必須で、その他にも…」という風なことを言っていて。そこで釘を刺されたというか、自分はギターしか弾けないし音楽で生きていくのは不可能なんじゃないか、と思ってしまったんです。
身近なところで見聞きしていた人たちはそれなりに下積みがあって、音楽をちゃんと学ぶための切符さえ自分には手が届かないと思っていました。

当時はあまり視野が広くなかったなと、今になってみれば思うんですけどね。

ーーではそこで一旦折れてしまったんですね。

はい。それで、「こっちがダメならこっちだ!」というようにデザインの世界を目指すようになり、美術大学に進学しました。
そしてそこで今のバンドのメンバーであるサイトウ “JxJx” ジュンくんと出会ったんです。

ーー音楽を諦めて選んだ道の先で、今のメンバーに出会ったんですね。

そうなんです。もしあの時音大を目指していたらどうなっていたんだろうと思いますし、結果的にはいい選択でした。

YOUR SONG IS GOOD 「Double Sider」

ーーちなみに余談ですが、美術大学ではどんなことを学ぶのでしょう?

僕はデザイン科だったのですが、本当に様々です。とりあえず自分の中で湧いてくるアイディアをひたすら形にするっていうのは毎日やっていました。

YOUR SONG IS GOODの歩み

ーーYOUR SONG IS GOODはいつ頃結成したのでしょうか?

大学3年生くらいの頃ですね。
元々お遊び感覚で組んでいたバンドにジュンくんが加入する形で、前身となるバンドの「SCHOOL JACKETS」を結成しました。
約1年間の活動の中で40曲くらい作ったんですが、どれも短い、アイディアの断片のようなものばかりで。
色々やり尽くしてきた中で、もっとちゃんと曲を作ろうよっていうことでバンド名を「YOUR SONG IS GOOD」に改名し、再スタートを切りました。
僕もボーカルやドラム、トロンボーンなど色々とパートを転々としていたのですが、仕切り直してからようやくギターというポジションに落ち着きました。

ーープロを目指して活動していくために、体制を整えたということでしょうか?

いえ、その時はまだ仲間同士で楽しくやっている感じでしたね。
アルバイトをしながらイラストの仕事をして、バンドも楽しくやって…という良いサイクルが出来ていたからだと思います。

でも二十代半ばに差し掛かるあたりで、バンド内で「本当にこのままでいいのか」という話し合いがあったんです。せっかく音楽をここまで続けているのに、このまま草野球のような活動を続けていたら、いつか音楽に対する熱も消えてしまうのではないかという危機感もあったんだと思います。

ーー具体的には、どのような方向性で活動していくことにしたのでしょうか?

音楽性を決める時に、ひとつの指針としてThe Specialsの名前が上がりました。
皆んなバックグラウンドとして「スカが好き」っていうのがありましたし、問答無用で盛り上がるあの格好良さを目指そうということで、方向性が固まりました。

ーーそこから気持ちを切り替えたんですね。

一気に活動が変わったわけではないんですが、人との出会い方は変わりましたね。
カクバリズムっていうレーベルを立ち上げてCDをリリースして、色んな方面のアーティストからライブのお誘いもいただけるようになりました。

カクバリズムは、角張渉(かくばり わたる)が元々パンクレーベルをやっていて、そこに所属するのも違うよね、ということで立ち上げたのが始まりです。
僕たちは音楽に専念し、彼がマネジメント的な部分で色々と動いて後押ししてくれました。

出会った頃に、冗談半分か分からないですが「フジロックに連れて行きますよ」って言ってくれていて、その後本当に出演することが出来た時はとても嬉しかったです。

そこに至るまでも、下北沢SHELTERでワンマンをして次は渋谷 CLUB QUATTROで…というように、当時自分たちが観に行っていた憧れのライブハウスに出演し、徐々にステップアップできたのは本当に感慨深かったです。

ーーいわゆるインストバンドは、歌モノのバンドに比べ集客などの面でも難しい部分も多かったと思います。

「みんなが歌える大ヒット!」というのとも少し違いますからね。でも仲間のバンドもたくさんいましたし、自分たちが一緒にやりたいと思っていたバンドからお誘いをいただいたりしていく中で少しずつお客さんは増えていきました。
自分たちが楽しんで、面白いと思って活動しているときは、周りもそういう流れになって良い巡り合わせが沢山生まれました。

ーーYOUR SONG IS GOODはメジャーでの活動も経験されていらっしゃいますよね。

2004年にアルバムをリリースしたくらいの頃、ユニバーサルミュージックからお誘いをいただいて数年間メジャーとして活動しました。

ーーメジャーでの活動で、なにか大きく変わった部分はありますか?

僕らの場合はレーベルはあくまでカクバリズム、流通がメジャーという形だったので大きくは変わらなかったように思います。
でもその流通の大きさのおかげで新しいお客さんも増えましたし、ツアーもより広い範囲で回ることができました。

ーーモーリスさんから見て、メジャーとインディーズの関係性はどう変化してきていると思いますか?

昔は「メジャー=売れている人たち」、「インディーズ=小規模で活動している人たち」というイメージでしたが、その差は無くなってきているように思います。
あとは「メジャーでは、メジャーっぽい音楽をしなければいけない」という流れも変わってきているように思いますね。
音楽に対する消費のされ方が変わりつつある中で、逆にメジャーシーンにおける表現の自由度は上がっているように思います。

YOUR SONG IS GOOD 「The Cosmos」

ーーどちらが良い、悪いという話ではないんですね。

活動のスタイルに合った方を選んでいければいいのかなと思います。

ーーちなみにバンドの収入源として主なものは何なのでしょう?

これもアーティストによってそれぞれだとは思いますが、僕らの場合は頻繁に音源をリリースするわけではないのでライブと物販ですね。

モーリスさんのこれから

ーーYOUR SONG IS GOODではどのように曲を作っていくのでしょうか?

一つのアイディアを延々とループしながら、少しずつ膨らませていくスタイルが多いですね。セッションのような形でしょうか。

打ち込みの独特な気持ち良さと、バンドの肉体感を上手く混ぜ合わせながら作っていく場合もあります。

ーーモーリスさんの使用機材を教えてください。

ギターはFenderのコロナドをメインに使っています。
足元の機材としては、YOUR SONG IS GOODの初代ベーシストであるマツムラ タケオから譲り受けた歪みエフェクター、KLON Centaur(ケンタウロス)を愛用しています。

ーーモーリスさんの中では「音楽」と「イラスト」はどんな関係性なのでしょうか?

例えばレゲエにおけるダブみたいな音楽ならではの表現方法からアイディアをもらい、イラストに活用することもありますし、逆にイラストから音楽へ昇華させることもあります。
僕はCDのジャケットやグッズのデザインを依頼されることが多いのですが、そのときもやはり、そのバンドの曲から受けるインスピレーションは大事にしています。

これまでに手がけた作品

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ーー普段からインプットとして心がけていることはありますか?

「作り手と作品の関係性」みたいなものを考えるのは、すごく刺激になりますね。
繊細そうな人が繊細な作品を生み出すこともあれば、見た目からは想像できないくらい大胆なものを生み出す場合もあります。
そこには計り知れないほど複雑な関係性があって、それを知ったり考えたりというのは普段からしているように思います。

これは何にでも言えると思うんですが、インプットとアウトプット、どちらかが広がればもう片方も自然と広がってくると思うんです。僕は20年以上音楽を続けてきましたが自分が偉いとは全く思っていなくて、今だに新しい音楽を求めていますし、出来ないことも沢山あるからこそ今もこうして活動を続けているのかなと思います。

ーーありがとうございます。それでは最後に、これからの活動や目標があれば教えてください。

いくら続いているバンドでも、その状況にあぐらをかいていたら解散してしまう可能性はいくらでもあります。「ここまで続けてきたんだし、勿体無いから解散しない」っていうスタンスで続けることに何の意味もありませんからね。
常に新しい音楽に取り組み、なおかつ楽しみながらさらに成長していければと思っています。

ーーありがとうございました。




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取材・執筆:momo (田之上護/Tanoue Mamoru)

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profile:1995年生まれ。Digital Performer・Ableton liveユーザー。音楽学校を卒業後作曲家として福岡から上京。
2017年8月ツキクラ「STARDUST」に作・編曲で参加し作家デビュー。
「心に刺さる歌」をモットーに、作詞作曲・編曲からレコーディングまで全てをこなすマルチプレーヤー。
アートユニット「Shiro」の作編曲担当としても活動中。

ホームページ:Music Designer momo
TwitterID :@momo_tanoue