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【UADプラグイン特集】最先端のアナログサウンドを忠実に再現 Vertigo Sound VSC-2 Compressor

モダンコンプレッサーの傑作

VSC-2

UADの秀逸なプラグインをご紹介していくシリーズ、第6回目となる今回は、「Vertigo Sound VSC-2 Compressor」を取り上げます。
バストラックやマスタートラックにどんなコンプレッサーを用いるべきか、様々な選択肢の中で迷うことも多いでしょう。このVSC-2は、非常にクリアかつ音楽的なカラーリングが特徴で、コンプ臭くならずにまとまり感を出し、かつ説得力のあるサウンドに仕上げてくれます。もちろんきつめにかけて積極的にサウンドメイクすることも可能です。
何より出音が非常にいいプロセッサーとして、マスタリングはもちろん、様々なソースを通してみたくなるコンプです。
それでは、サウンドとともに確認していきましょう。

製品リンク:Vertigo Sound VSC-2 Compressor

なお、UADプラグインは専用のDSPアクセラレーター(あるいはオーディオインターフェイスApolloシリーズ)で動作します。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

Vertigo Sound VSC-2 Compressorについて

vsc2_gross

VSC-2はVCAコンプのメルセデスと呼ばれる名機で、4基のVCA搭載による正確無比な性能が特徴です。”1979”と命名された各VCAではディスクリートコンポーネントのみを使用し、70〜80年代を代表する最高のVCAコンプレッサー・サウンドを実現しています。
そのクラシックなサウンドをベースとした出音が現代のマスタリンググレードのシグナルパスと融合し、VSCシリーズが誕生しました。今や世界中のトップクラスのスタジオで使用され、ヒット曲を世に送り出しています。

Vertigo Sound VSC-2 Compressorの主要パラメーター

一般的なコンプでよく見るパラメーターですが、独特の機能も備えていますので確認しておいてください。

parameter

  • ①Threshold
    コンプレッションがかかり始める信号のピークを設定します。時計方向に回すと値が大きくなります。スレッショルド値は約 48dB の範囲で設定可能です。
  • ②Ratio
    コンプレッション・カーブの傾きを設定します。入力信号に対して出力信号を圧縮する比率を設定します。レシオが高いほどコンプレッションを強くかかり、より「潰れた」サウンドになります。Softモードでは、一般的なソフトニーとは異なり、入力レベルの増加に合わせてレシオが 1:1 から 8:1 にまで自動的に変化します。Brickに設定すると VSC-2 はアナログ・リミッターとして機能し、設定したレベル以 上の信号をカットします。ただし、サンプルのピークを完全にカットするいわゆる「ブリック・ ウォール・リミッター」ではありませんのでご注意ください。
  • ③Attack
    スレッショルド値を超える信号レベルが検出されてから内部回路が圧縮を開始するまでの時間を設定します。一旦強めのゲイン・リダクション(10dB 程度)が得られるまでスレッショルドを下げ、欲しいサウンドになるよう設定し、適切なゲイン・リダクションになるようスレッショルドを戻すと設定しやすいでしょう。
  • ④Release
    信号がスレッショルド値を下回るレベルを検出してからコンプレッサーが圧縮を終了するまでの時間を設定します。アタックタイム同様の設定手順がおすすめです。
  • ⑤Make-Up
    コンプレッション処理の後段 で信号のゲインを上げ、コンプレッションによるレベル減少を補います。そうすることで、バイパス時との極端な音量変化を避け、比較しやすいように設定することができます。
  • ⑥SC Filter
    入力信号の低域をカット(90Hzもしくは60Hzを選択)することで、低域成分に引っ張られて不必要なコンプレッションがかかってしまうことを防ぎます。結果的に低域成分を強調することも可能です。
  • ⑦ステレオモードスイッチ
    コンプレッションをステレオリンクさせるか、デュアル・モノ(左右個別設定)とするかを選択します。基本的にはステレオリンクで問題ないですが、設定後にデュアル・モノにするだけで、ステレオイメージを若干広げることもできます。

使用ケース1:ドラムバスへの適用

まずは、少し積極的にサウンドを変化させる使い方からご紹介しましょう。
パンチを出すことを目的として、ドラムバスに適用してみました。

▶︎適用前

▶︎適用後

しっかりとアタックが強調されつつ、心地よいコンプ感で粘りのあるサウンドに変化していますね。空気感の密度も高まったように感じられ、金物の存在感も上がっています。一方で、不自然なポンピング現象は起きていません。
設定はこのような感じです。

drums

このサウンドの肝となっているのが、レシオ設定です。8:1と高めの設定としてあり、VSC-2の特性上、レシオが高い方がニーもハード気味となりますので、はっきりとした効き方になります。
そして、アタックが最も遅い30ms、リリースが最速の0.1sということで、これがパンチのあるアタック感と粘りのあるサスティンを生み出しています。
もう一つ鍵となっているのが、サイドチェインです。60Hz以下をフィルターし、過度に低域に引っ張られないようにしているため、高めのレシオでも不自然な仕上がりになりません。
スレッショルドはゲイン・リダクションのピークが-3dBに達する程度に調節してあります。さらにアグレッシブなサウンドを目指すなら、もう少し突っ込んでみてもいいでしょう。

使用ケース2:ピアノへの適用

次は、バスではなく楽器トラックへの適用例です。
程よくダイナミクスを均し、ミックスに馴染ませることを目的としてセッティングしました。

▶︎適用前

▶︎適用後

演奏ニュアンスを損なうことなく、自然にレベルが整えられていますね。少し煌びやかになったようにも感じます。
設定はこのような感じです。

piano

アタック3ms、リリース0.6sとやや速めですが、不自然な変化ではなく、自然とサスティンが伸びてサウンドに太さも加わっています。やはり肝となるのはレシオで、soft設定としているため、スレッショルドレベル付近では圧縮が起きず、Make Upによってしっかりと持ち上がってきます。
スレッショルドはゲイン・リダクションのピークが-2dB程度に収まるよう調節してあり、穏やかなコンプレッションながら、アナログ特有の倍音付加効果もあいまって、しっかりと存在感が出ていますね。

使用ケース2:使用ケース3:マスターバスへの適用

最後に、王道のマスターバスの適用例も示しておきましょう。
過度なコンプレッションは行わず、まとまり感を出すようセッティングしました。

▶︎適用前

▶︎適用後

こちらも非常に自然な仕上がりで、バスコンプに期待する効果をきっちりこなしてくれている印象です。それでいて非常に出音が気持ちよく、デジタル系のコンプでは出せない味が加えられているように感じます。
設定はこのような感じです。

VCAタイプのコンプをバストラックにインサートする場合、やはり基本はアタック遅め、リリース速めとするのが定番です。ただ、数値を前後させるともちろんニュアンスは変わるため、ある程度の模索は行うべきでしょう。今回はアタックはドラムバスと同じく30msですが、リリースは0.3sの方がややサウンドがタイトに感じられました。レシオはsoftと迷いましたが、2:1固定の方がややボーカルに明瞭感が加わったため、採用しました。
サイドチェインは90Hz以下とし、コンプレッションがベース/キックに引っ張られないよう配慮しました。埋もれがちなキックのインパクトもしっかりと残っています。
スレッショルドはゲイン・リダクション-2dBを目指して設定。コンプ臭さがほとんどないにも関わらずミックス全体にまとまり感が生まれ、倍音付加効果によって一歩前に出てきたような印象があります。いずれの効果も非常に自然で、嫌味がないのがこのコンプの最大の特徴と言えます。


以上、今回はThermionic Culture Vultureをご紹介しました。
このプラグインは私自身も以前から愛用しており、自信を持ってお勧めできるVCAコンプです。この透明感と絶妙なかかり具合は、他ではなかなか得られない感覚ですね。「色々試したけど中々良いバスコンプが見つからない」という方は、ぜひ一度お試しいただければと思います。

製品リンク:Vertigo Sound VSC-2 Compressor

記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru

Sleepfreaks DTM講師 大鶴 暢彦
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