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【UADプラグイン特集】伝説的コンソールを忠実に再現 Helios Type 69 Preamp & EQ Collection

Author: sleepfreaks

骨太かつ音楽的なサウンドメイクが可能

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UADの秀逸なプラグインをご紹介していくシリーズ、第3回目となる今回は、「Helios Type 69 Preamp & EQ Collection」を取り上げます。
このプラグインは、その名と見た目の通り、伝説的なビンテージ・コンソールのプリアンプとEQをエミュレートしたものです。その類のプラグインではNEVE1073が人気ですが、このHelios Type 69にはやはりこれにしか出せない味があり、特にファットでロックなサウンドが欲しい場合に重宝します。実際、歴史的にもそのようなジャンルに頻用されてきました。
ただ、使ってみると特定のジャンルだけでなく、美味しいところを活かして幅広く使えるのではないか?という印象も持ちました。
サウンドとともにレビューしていきますので、どうぞ最後までお付き合いください。

製品リンク:Helios Type 69 Preamp & EQ Collection

なお、UADプラグインは専用のDSPアクセラレーター(あるいはオーディオインターフェイスApolloシリーズ)で動作します。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

Helios Type 69コンソールについて

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まず、このプラグインの原型であるHelios Type 69コンソールについて簡単に触れておきます。
ロンドンのオリンピックスタジオ、ミュンヘンのミュージックランドスタジオ、また有名な The Rolling Stones のモバイルスタジオなどに設置されていたHelios Type 69は、まさにロックの「黄金時代」のサウンドを象徴する存在と言っていいでしょう。
レッド・ツェッペリン、ビートルズ、ジミ・ヘンドリクス、ピンク・フロイドからボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ、デヴィット・ボウイ、ブラック・サバス、AC/DCなど、使用アーティストも錚々たる面々です。
そのような伝説的なコンソールのプリアンプとEQについて、回路の隅々まで忠実にモデリングしたのが、UADのHelios Type 69 Preamp & EQ Collectionです。「UADプラットフォーム上で唯一の“トリプルアンプ”プリアンプ」とのことで、その力の入れようも伝わってきます。

Helios Type 69 Preamp & EQ Collectionのパラメーター

プリアンプと3バンドEQからなるシンプルな構成ですが、やや操作が特殊な部分もありますので、概要を見ておきましょう。

parameter

  • ①インプットセレクト
    MIC/LINE入力を切り替えます。MICの方が出力レベルが大きくなるだけでなく、ゲインによるサチュレーション効果も顕著になります。
  • ②ゲイン
    入力レベルを増幅するとともに、サチュレーションによる色付けを行います。
  • ③ハイシェルフゲイン
    10kHz固定のシェルビングEQで、-16〜+12を4dBステップでコントロールします。
  • ④ミッドEQ
    左下のノブで周波数を設定し、右上のノブでブースト/カット量を設定します。PK/TRのタイプスイッチで、ブースト/カットを切り替えて使用します。ゲイン設定が小さいほど広いQ、大きいほど狭いQとなります。
  • ⑤ベースEQ
    左下のノブの位置によって役割が変わりますので注意が必要です。0より上の周波数ゾーンに合わせるとピーキングEQとなり、その周波数に対して、右上のノブでブースト量を決めることができます。0より下に合わせると、50Hz固定のシェルビングEQとなり、-3〜-15dBの3dBステップでカット量を決定します。
  • ⑥出力フェーダー
    プリアンプ、EQでサウンドメイクした後の、最終的な出力音量を調整します。

使用ケース1:ドラムアンビマイクへの適用

ここからは実際にデモ音源を使用して、サウンドを確認しながらレビューしていきます。

まずはドラムです。
ガッツリとロックサウンドに仕上げたい場合は、キック、スネアなどの各マイクに適用してサウンドメイクしてもいいですが、手軽にロック風味を足してみたい場合、まずドラムのアンビマイクに適用してみると効果がわかりやすいです。
ドラム全体のサウンドが収められているため、臨場感の醸成や骨格作りとしてコントロールすることができます。
一例ですが、サウンドを聴いてみてください。

▶︎アンビマイクへの適用前

▶︎アンビマイクへの適用後

ドラムバス全体でのサウンドも参考までに。

▶︎アンビマイクへの適用前

▶︎アンビマイクへの適用後

ドラムセットの振動を感じるような、荒削りで骨太なサウンドに変化しましたね。
設定はこのような感じです。

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インプットセレクターはMICを選択し、ゲインを30としてサチュレーションを加えています。サチュレーションと呼べるのは30までで、40以上とするとかなり激しい歪みとなります。
ハイシェルフゲインは-4dBで若干高域の角を取りました。ミッドEQは1.4kHzを7dBほどブーストし、スネアやハイハットの金属的な響きに太さを与えています。ベースEQはシェルビングの-3dBカットでキックが広がりすぎないよう意識しました。
結果としては、やはりサチュレーションによる味付け効果は絶大で、一気にロックな雰囲気に変えてくれます。単にEQで中域を膨らませただけではこうはいきません。EQはさすがパッシブEQで、大きくブーストして過激なサウンドメイクもできますが、決して破綻せず、心地よく変化を楽しむことができます。

使用ケース2:ベースへの適用

続いてはベースです。
「中域に特徴がある」と言われるHeliosですが、低域も侮るなかれ、想像以上に化けてくれます。

▶︎ベースへの適用前

▶︎ベースへの適用後

どっしりとしていて、かつ倍音の存在感も適度にある、理想的なベースサウンドになってくれました。
設定はこのような感じです。

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インプットセレクターは歪みすぎないLINEを選択、ゲインを30としましたが、この時点でサウンドのイメージがガラッと変わります。かといって癖が強すぎるわけでもなく、様々なジャンルにマッチしそうなサウンドです。正直ここまでベースにハマるとは思いませんでした。
EQは微調整程度に行っています。ミッドEQで700Hzをややカットし、少しタイトな印象を狙いました。低域はプリアンプだけでも程よく出たのですが、楽曲とのマッチングで120Hzを若干ブーストしています。
ソロで聴いてもいい感じですが、ミックス全体への収まりも絶妙に落ち着きがあります。設定次第で、特徴的なロックサウンドだけでなく、オールマイティなサウンドのブラッシュアップもできるという、このプラグインの懐の深さを感じました。

使用ケース3:ボーカルへの適用

続いてボーカルに適用してみました。まずは適用前後を比べてみてください。

▶︎ボーカルへの適用前

▶︎ボーカルへの適用後

綺麗に高域が伸びていて、ベース同様癖のないサウンドだと思いませんか?
設定はこのような感じです。

vocal

ンプットセレクターはLINEを選択し、ゲインを30とすると、まずアナログライクな心地良い倍音が乗り、サウンドの素地ができます。
ここからEQで調整していきますが、プリアンプを通した後のハイブーストが何とも鮮烈で瑞々しいです。きっちり抜けながらも嫌な感じにならず、ボーカルの説得力を増してくれます。願わくば4dBステップではなく、もう少し細かく設定できるとありがたいですが、それでも色んなボーカルを通してみたくなる魅力があります。上質なエキサイターとして位置付け、他のEQと組み合わせてみてもいいかもしれません。
また、Heliosの真骨頂と言われるミッドEQも良いです。ここでは2kHzを8dBほどブーストということで、数値としては大きいですが、効き方が音楽的なので、スイートスポットを探す感覚で操作するのが吉です。
もし若干音痩せを感じたら、ベースEQで低域を補強してもいいでしょう。ここでは400Hzを5dBほどブーストしたら、程よい感じとなりました。


最後に参考として、ミックス全体で上記3トラックへの適用前後を比べてみてください。

▶︎ドラムアンビマイク、ベース、ボーカルへの適用前

▶︎ドラムアンビマイク、ベース、ボーカルへの適用後



以上、今回はHelios Type 69 Preamp & EQ Collectionをご紹介しました。
見た目やその歴史から、ちょっと癖のあるイロモノ?という印象を持たれがちですが、使ってみるとロックだけでなく様々なジャンルやソースで活躍できるポテンシャルを持っています。いつものミックスにピンポイントで足すだけでも、曲全体の印象をガラッと変えてくれるかもしれません。
ご興味を持たれた方は、ぜひトライしてみていただきたい逸品です。

製品リンク:Helios Type 69 Preamp & EQ Collection



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記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru

Sleepfreaks DTM講師 大鶴 暢彦
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