【新製品】T-RackS 6が登場!追加された新モジュールのサウンドを徹底解説
あらゆる音楽制作に対応するミキシング&マスタリングツール
IK Multimediaが新たに「T-RackS 6」をリリースしました。
最新のサウンドエンジンを搭載し、リデザインされたインターフェースによって、音質、作業スピード、使いやすさが大幅に向上しています。
本記事では、T-RackS 6の注目すべき新機能とその詳細について解説します。
自動マスタリング機能 Master Match X
「Master Match X」は、AI技術を活用してリファレンス楽曲の特性を解析し、ターゲットトラックのEQ、コンプレッション、バランスを自動的に最適化する新しい自動マスタリングツールです。
プロフェッショナルなクオリティの音を簡単に得ることが可能で、スピーディーに仕上げることができます。
また、音楽スタイルに応じたプリセットが用意されており、より細かい設定を素早く適用できます。
Master Match Xの使い方
「Load Reference」ボタンをクリックして、解析したいリファレンス楽曲をドラッグ&ドロップで選択します。
リファレンスとして最大3つのトラックをロード可能です(Track 1, 2, 3)。
必要に応じて、リファレンスの一部を選択して解析することもできます。
リファレンスの設定が完了したら、「Analyze」ボタンをクリックします。
次の画面で、制作中の楽曲をDAWで再生すると解析が開始します。
解析を終了するには、「Match」ボタンをクリックします。
リファレンスや制作楽曲の解析・再生範囲は、トラックの音質に最も大きな影響を与えるセクション(サビやメロディ部分)を選ぶと、効果的なマスタリングが行えます。
解析を終了すると、自動的に生成されたEQカーブが製作中の楽曲に適用されます。
必要に応じて、各パラメーターの調整を行います。
- 1. Input:製作中の楽曲の入力音量を調整
- 2. EQ Balance:リファレンスとのEQバランスを調整
- 3. EQ Match:リファレンスのEQに合わせる度合いを設定
- 4. Compression:ダイナミクスをリファレンスに近づける
- 5. Style:マスタリングの音色スタイルを選択
- 6. Limiter:音量のピークを制限してクリッピングを防ぐ
- 7. Stereo Enhance:ステレオ幅を拡張して広がりのあるサウンド空間を作る
さらに、「Edit EQ」をクリックすると、EQカーブをより細かく直感的に微調整することができます。
- 1. スライダーアイコン:EQポイントのバイパスボタン。左右のドラッグでEQバンドを無効化する範囲を設定し、音質の変化を比較
- 2. EQポイント:EQ調整ポイント。上下左右のドラッグで周波数とゲインを調整し、特定の帯域を強調・減衰。ダブルクリックでポイント作成、右クリックでポイント削除
- 3. EQ設定値の表示:現在のEQ設定(周波数、ゲイン、帯域幅など)をリアルタイムで表示。数値入力での調整が可能
「プリセットスロット(A, B, C, D)」では、それぞれ異なる設定を保存し、瞬時に切り替えて比較することが可能です。
調整した設定は「Save As」ボタンで保存し、次回以降も同じ設定を使用できます。
①のプリセットセレクタには、現在選択されているプリセットが表示されており、クリックするとプリセットブラウザーが開きます。
保存した設定もプリセットとして表示され、フィルタリング機能を使って、特定のカテゴリからプリセットを検索することができます。
プリセットは、プリセットブラウザーの右隣にある「∧∨」ボタンでも切り替え可能です。
「Target」では、特定の音楽スタイルに最適化されたプリセットが用意されており、選択したジャンルに基づいて最適なマスタリング設定を自動で適用します。
再度、音響特性の解析を行いたい場合は、「Re-Analyze」をクリックします。
「Choose From List」ではTargetと同様のプリセットが表示されおり、特定のリファレンス楽曲がない場合は、プリセットを選択することで、リファレンスとして使用することが可能です。
その他の新しいモジュール
T-RackS 6には、Master Match Xに加えて、以下のようなクリエイティブなサウンドデザインを可能にする新しいモジュールが追加されています。
Channel Strip X
T-RackS史上最も先進的なチャンネル・ストリップモジュールです。
ヴィンテージ・プリアンプ、EQ、ディエッサー、マルチバンド・コンプレッサー、トランジェント・シェイパー、ステレオ・エンハンサーを一つに統合し、さまざまな楽器やアンサンブルに合わせたカスタマイズ可能なEQプリセットを搭載しています。
簡単な操作でプロフェッショナルな音質調整が可能で、ビンテージエミュレーション機能によりアナログの温かみと深みを加えます。
ダイナミックディエッシング、正確なトランジェントシェーピング、ステレオイメージングの強化を行い、視覚的なフィードバックとモニタリング機能でリアルタイムに音の調整を確認できます。
Bass ONE
ローエンドの処理に特化したオールインワン・モジュールです。
周波数の範囲を精密にコントロールし、エクスパンダーやコンプレッサー、ハーモニクス生成機能を活用して、低音をクリーンで力強く仕上げることができます。
低音域の音量や質感を自在に調整し、楽曲全体のバランスを最適化することが可能です。
Lo-Fi Punch
サウンドに独特のローファイ質感を加えるためのオールインワン・モジュールです。
2種類のユニークなローファイアルゴリズム、コンプレッサー、フィルター、ドライブ、ピッチシフト機能などを搭載し、微妙な彩度からビットクラッシャー風のざらついたテクスチャまで幅広く表現できます。
ノイズ、ワウ、フラッターなどのクリエイティブなエフェクトで、サウンドにビニールやテープの風合いを加えたり、ピッチやダイナミクスを自由にコントロールすることで、ジャンルを超えた音の風景を素早く形作ることが可能です。
Dual Spring
ボーカルや楽器に深みのあるリバーブ効果を加えるためのリバーブモジュールです。
2つのスプリングモジュールを使用して、素材やトーン、減衰、ステレオポジショニングなどを細かく調整し、ビンテージの温かみからモダンな輝きまで多彩なリバーブ効果を実現します。
素材の選択やトーン調整、リバーブの長さやステレオ設定を細かくカスタマイズでき、さらに、2つのスプリングのブレンド比率も自由に調整が可能です。
Delay Lab
創造性を引き出す多機能なデジタルディレイモジュールです。
テープディレイやデジタルディレイなど、多彩なディレイエフェクトを搭載し、ボーカルや楽器にエコーやリピート効果を加えることで、奥行きと広がりのあるサウンドを演出します。
パン機能でディレイ信号をステレオフィールド上で自由に配置し、BPM同期で遅延間隔を正確に設定できます。
モノ、ステレオ、ピンポンモードの選択に加え、フィルターやダブリング、ビットリダクションなどのエフェクトで、独自のリズムパターンや音響効果を生み出せます。
Pusher
5種類のサチュレーション・アルゴリズムを搭載した、4バンドのサチュレーション・モジュールです。
ドライブとカラーの調整により、柔らかな歪みから強烈なサチュレーションまで、自在にコントロールでき、音に厚みや存在感を加えます。
さらに、エンベロープフォロワーを使ってサウンドのダイナミクスを動的に制御し、ソロ機能やバンドのオン・オフ設定で各バンドの効果を正確に管理できます。
Pusherを使うことで、音楽的でクリエイティブなサウンドを作り出すことができます。
Filter Fusion
Moog®トランジスタ・ラダーにインスパイアされた5種類のフィルターを搭載したフィルターモジュールです。
ロー・パス、ハイ・パス、バンド・パス、ピーク、ノッチフィルターを備え、6dB/octから24dB/octまでのスロープ調整が可能です。
入力/出力レベルやドライ/ウェットバランスを調整しながら、フィルターのカットオフとレゾナンスをコントロールして、狙った音色を精密にデザインできます。
また、多機能LFOによって変調効果を追加し、波形の選択、レートやフェードイン時間の設定、DAWとの同期機能を使用することで、音楽制作における自由な表現を可能にします。
シングル・プラグインで新モジュールも利用可能に
T-RackSの各モジュールは、個別のプラグインとしてDAWで使用できます。
新しく追加されたモジュールも、VST、AU、AAX形式で利用でき、DAW内でシームレスに操作できます。
必要なモジュールだけをDAWにロードし、柔軟なサウンドデザインが可能です。
必要なモジュールを効率的に管理 モジュールマネージャー
T-RackS 6に新たにモジュールマネージャーが導入され、モジュールの表示・管理が容易になりました。
モジュールマネージャーはT-RackS 6ソフトウェアから開くか、もしくはDAWからも開くことができます。
DAWでT-RackS 6を起動し「Module List」をクリックすると、使用可能なモジュールが表示されます。
この画面では、各モジュールをドラッグ&ドロップでエフェクトチェーンに追加することができます。
右上の「Modules Manager」をクリックすると、T-RackS 6ソフトウェアと同じモジュールマネージャー画面が開きます。
モジュールマネージャーを開くと、モジュールの一覧が表示されます。
各モジュール名の横にあるチェックボックスを使用して、モジュールの有効化/無効化を設定します。
(無効にすると、T-RackSプラグインのモジュールリストに表示されなくなります)
変更を行った後に「Apply Changes」をクリックすると変更が適用され、「Discard Changes」をクリックすると変更前の状態に戻ります。
「Enable All」と「Disable All」は、一括でモジュールの有効化または無効化を行うボタンです。
また、試用版のモジュールもワンクリックで追加でき、必要に応じて購入や復元も簡単に行えます。
全体のバランスを一括調整 マスターバスパネル
マスターバスパネルは、T-RackS 6で新たに導入されたスタンドアローンモード専用の機能で、プロジェクト全体の音質やレベルを一括で調整し、高精度なマスタリングを行うことが可能です。
スタンドアローンモードとは、DAWと連携せずに単独で動作するソフトウェアのことです。
T-RackS 6では、直接オーディオファイルを読み込んで編集、処理を行うことができます。
マスターバスパネルは、下部にある「Master Bus」をクリックすると開きます。
「Clip List」にオーディオファイルをドラッグ&ドロップして、マスターバスパネルにインポートします。
パネルには4つのインサートポイントがあり、「Module List」からEQ、コンプレッサー、リバーブなどのエフェクトをドラッグして追加できます。
- 1. Mono/Stereo:モノラルとステレオの切り替え。再生環境に応じて音質やバランスを確認
- 2. Master Trim:全体の音量を調整するスライダー。音量バランスを最適化し、クリッピングを防止
- 3. Equal Gain:エフェクト適用前後の音量差を自動補正し、音量の不一致を解消
- 4. Master Bypass:すべてのエフェクトをバイパスして、元の未処理の音を再生
これらの機能を活用することで、マスターバスパネルを使ってプロジェクト全体の音質を詳細に管理し、最適化できます。
サイドチェイン機能の搭載
T-RackS 6では、すべてのコンプレッサー・モジュールにサイドチェイン機能が追加されました。
これにより、特定のトラックをトリガーにして、他のトラックのダイナミクスを制御することができます。
システム要件と互換性
- macOS 10.15以降
- Apple M1またはIntel Core i5以上
- 8GB以上のRAM
- 9GBのハードドライブ容量
Windows
- Windows 10以降(64ビット)
- Intel Core i5以上、または同等のプロセッサ
- 8GB以上のRAM
- 9GBのハードドライブ容量
製品ラインナップと価格
T-RackS 6は、4つのバージョンが用意されており、いずれもスタンドアローン(マスタリング・コンソール)、プラグイン(T-RackS 6プラグイン、シングル・プラグイン)として利用可能です。
ユーロではIKオンライン・ストア、日本円ではbeatcloud.jpで購入できます。
T-RackS 6 INTRO(無料版)
Match X Liteを含む3種類のモジュールを収録。
基本的なミキシングとマスタリング機能を無料で体験できます。
購入前のモジュールも、製品版と同じ機能を14日間試用できます。
IK アカウントに登録していれば、IK Product Managerからダウンロードとインストールが可能です。
アカウント登録やオーソライズについては、下記を参考にしてください。
※T-RackS 5など旧バージョンで購入したモジュールはアンロックされません。
T-RackS 6
19種類のモジュールを収録。
標準的なミキシングとマスタリング機能で、プロジェクトのニーズに応じた柔軟な音作りが可能です。
- IKオンライン・ストア 通常価格:€99.99
- beatcloud 通常価格:16,490円(税込)
T-RackS 6 PRO
40種類のモジュールを収録。
高度なオーディオ処理機能を搭載し、プロフェッショナルなミキシングとマスタリングに適しています。
- IKオンライン・ストア 通常価格:€199.99
- IKオンライン・ストア アップグレード価格:€149.99
- beatcloud 通常価格:32,990円(税込)
- beatcloud アップグレード価格:24,740円(税込)
※IKオンライン・ストアでのアップグレードは、Multimediaアカウントにログインし、「クロスグレード / アップグレード」で確認できます。
※beatcloudでのアップグレードの適用対象は、販売ページをご確認ください。
T-RackS 6 MAX
60種類のすべてのモジュールを収録。
最も包括的な機能セットを備え、プロフェッショナルなミキシングとマスタリングに最適です。
- IKオンライン・ストア 通常価格:€299.99
- IKオンライン・ストア アップグレード価格:€199.99
- beatcloud 通常価格:49,490円(税込)
- beatcloud アップグレード価格:32,990円(税込)
- beatcloud マックスグレード価格:16,490円(税込)
- 25種類以上のモジュールを所有する場合:€199.99→€149.99
- T-RackS 5 MAX v2または50種類以上のモジュールを所有する場合:€199.99→€99.99
※IKオンライン・ストアでのアップグレード / マックスグレードは、Multimediaアカウントにログインし、「クロスグレード / アップグレード」で確認できます。
※beatcloudでのアップグレード / マックスグレードの適用対象は、販売ページをご確認ください。
その他の割引
IKオンライン・ストアでの特典として、所有するモジュール数に応じた自動割引が適用されます。
チェックアウト時に割引Promo Codeが自動で適用されるため、「ADD」ボタンをクリックして割引価格を確認することができます。
いかがだったでしょうか。
初心者からプロフェッショナルまで、あらゆるユーザーに最適なバージョンが用意されているので、初めての方はぜひ無料版から試してみてください!
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- ミキシングプラグイン解説